医薬品等のインターネット販売に対する監視手法の研究

文献情報

文献番号
202324007A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等のインターネット販売に対する監視手法の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KC1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(滋賀県立大学 人間看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,493,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国外の医薬品等のインターネット販売に係る規制ならびに監視指導例を調査するとともに、日本国内のインターネット販売サイトにおける出品時確認事項と国内のインターネットを介した医薬品等個人間取引の実態解明により、医薬品等のインターネット販売に対するより効果的な監視手法の検討に資する。
研究方法
①アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、カナダ、オーストラリアを対象に、個人による医薬品販売等の規制について調査した。②国内外の個人間取引サイトにおける利用者が運営者に提供する個人情報と出品制限状況を調査するとともに、国内フリマサイト運営者に対し、医薬品、医療機器等の出品希望の実態についてアンケー調査を行った。③日本国内で利用されている主な SNSにおける禁止事項等について調査した。④Twitter上で医薬品取引が疑われた投稿に登場した医薬品を調査するとともに、向精神薬ではない医薬品2種について試買調査を実施した。⑤SNSのうち、YouTubeとTwitterを対象に、クローリングとテキストマイニングを活用し、医薬品個人間取引が疑われる投稿の検出法を検討した。
結果と考察
①消費者への医薬品販売は各国の法律に基づき規制されている。アメリカでは、OTC医薬品の販売についてFDAは規制しておらず、多くの州で、OTC医薬品の個人による販売等が行われている可能性がある。個人の消費者による医薬品の販売は、フランスでは禁止されており、カナダ(連邦規制、アルバータ州とブリティッシュコロンビア州の規制)では、いかなる場合も認められていない。イギリスとドイツでは、消費者自身による医薬品の販売は認められておらず、オーストラリアにおいても、医薬品の販売者は規定されており、一般の消費者による販売は認められていないと考えられた。②国内で主に利用されている個人間取引サイトでは医薬品の出品が禁止されていたが、医薬品と医療機器の出品希望はフリマサイト当たり月間350件から1,400件寄せられていることがわかった。代表的な国際プラットフォームeBAYでは、欧米8カ国について医薬品医療機器の制限について記載があったが、日本への不法な医薬品、医療機器の売買の防止が計られているのかは、サイト観察だけでは明確ではなかった。③本調査の対象とした7サイトのうち、6サイト(Twitter、YouTube、Facebook、Instagram、TikTok、LINE)は利用規約または各ポリシーにおいて、禁止事項に関する記載があった。さらにそのうちの 5 サイト(Twitter、YouTube、Facebook、Instagram、TikTok)は、医薬品に関するポリシーについて記載されており、それらの販売、購入、取引等を促す投稿は禁止されていた。LINE では、医薬品には触れていないが、薬物乱用を誘引または助長する表現を禁止していた。Telegram の利用規約において、医薬品や偽造品に係る禁止事項は記載されておらず、利用者がアカウントを乗っ取られた場合等を除いては、事業者は介入しないとしていた。④Twitter上の医薬品の個人間取引が疑われた投稿に登場した医薬品名の約65%が向精神薬を示すものであり、それ以外には、鎮痛薬、鎮咳薬、アレルギー疾患治療薬等濫用が懸念される医薬品が多くを占めた。試買調査によって、SNSを介して医薬品を取引する方法の一端が明らかになり、意図せず向精神薬等を入手する危険性やSNSを介して流通する医薬品の管理の不適切性が示された。⑤Twitterを対象に、クローリングプログラムによる投稿情報の収集とその際に使用する検索キーワードの選定方法が考案された。YouTubeにおいては、当該投稿がほとんど見つからず、検出法の提案には至らなかった。
結論
医薬品販売は各国の法律に基づき規制されるが、アメリカでは、OTC医薬品の消費者による販売を規制していない。フランス、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリアにおいては、消費者による医薬品の販売を認めていない。個人間取引サイトとして、海外のプラットフォームにおいて日本へ向けた不法な医薬品、医療機器等の輸出が防止できるのか、画面情報では明らかではなかった一方、国内の主な個人間取引サイトやSNSサイトでは、医薬品等の出品や取引が利用規約上禁止されているにも関わらず、医薬品が個人間取引され、期限切れや製品包装に破損の製品が届くことが明らかとなった。これらの取引を持ち掛ける投稿を的確に検出するための手法として、クローリングプログラムによる投稿情報の収集とその際に使用する検索キーワードの選定方法が考案された。定期的に投稿情報を収集し、直近の情報から抽出された検索キーワードを用いることで、より的確に監視・指導の対象となる投稿を検出することが可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202324007B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品等のインターネット販売に対する監視手法の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KC1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(滋賀県立大学 人間看護学部)
  • 木村 和子(一般社団法人医薬品セキュリティ研究会/金沢大学名誉教授)
  • Zhu Shu(シュ シュ)(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
  • 秋本 義雄(前 金沢大学 医薬保健学総合研究科)
  • Rahman Mohammad(ラーマン モハンマド)(前 金沢大学 医薬保健学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国外の医薬品等のインターネット販売に係る規制ならびに監視指導例を調査するとともに、日本国内のインターネット販売サイトにおける出品時確認事項と国内のインターネットを介した医薬品等個人間取引の実態解明により、医薬品等のインターネット販売に対するより効果的な監視手法の検討に資する。
研究方法
①アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、カナダ、オーストラリアを対象に、個人による医薬品販売等の規制について調査した。②国内外の個人間取引サイトにおける利用者が運営者に提供する個人情報と出品制限状況を調査するとともに、国内フリマサイト運営者に対し、医薬品、医療機器等の出品希望の実態についてアンケー調査を行った。③日本国内で利用されている主な SNSにおける禁止事項等について調査した。④Twitter上で医薬品取引が疑われた投稿に登場した医薬品を調査するとともに、向精神薬ではない医薬品2種について試買調査を実施した。⑤SNSのうち、YouTubeとTwitterを対象に、クローリングとテキストマイニングを活用し、医薬品個人間取引が疑われる投稿の検出法を検討した。
結果と考察
①消費者への医薬品販売は各国の法律に基づき規制されている。アメリカでは、OTC医薬品の販売についてFDAは規制しておらず、多くの州で、OTC医薬品の個人による販売等が行われている可能性がある。個人の消費者による医薬品の販売は、フランスでは禁止されており、カナダ(連邦規制、アルバータ州とブリティッシュコロンビア州の規制)では、いかなる場合も認められていない。イギリスとドイツでは、消費者自身による医薬品の販売は認められておらず、オーストラリアにおいても、医薬品の販売者は規定されており、一般の消費者による販売は認められていないと考えられた。②国内で主に利用されている個人間取引サイトでは医薬品の出品が禁止されていたが、医薬品と医療機器の出品希望はフリマサイト当たり月間350件から1,400件寄せられていることがわかった。代表的な国際プラットフォームeBAYでは、欧米8カ国について医薬品医療機器の制限について記載があったが、日本への不法な医薬品、医療機器の売買の防止が計られているのかは、サイト観察だけでは明確ではなかった。③本調査の対象とした7サイトのうち、6サイト(Twitter、YouTube、Facebook、Instagram、TikTok、LINE)は利用規約または各ポリシーにおいて、禁止事項に関する記載があった。さらにそのうちの 5 サイト(Twitter、YouTube、Facebook、Instagram、TikTok)は、医薬品に関するポリシーについて記載されており、それらの販売、購入、取引等を促す投稿は禁止されていた。LINE では、医薬品には触れていないが、薬物乱用を誘引または助長する表現を禁止していた。Telegram の利用規約において、医薬品や偽造品に係る禁止事項は記載されておらず、利用者がアカウントを乗っ取られた場合等を除いては、事業者は介入しないとしていた。④Twitter上の医薬品の個人間取引が疑われた投稿に登場した医薬品名の約65%が向精神薬を示すものであり、それ以外には、鎮痛薬、鎮咳薬、アレルギー疾患治療薬等濫用が懸念される医薬品が多くを占めた。試買調査によって、SNSを介して医薬品を取引する方法の一端が明らかになり、意図せず向精神薬等を入手する危険性やSNSを介して流通する医薬品の管理の不適切性が示された。⑤Twitterを対象に、クローリングプログラムによる投稿情報の収集とその際に使用する検索キーワードの選定方法が考案された。YouTubeにおいては、当該投稿がほとんど見つからず、検出法の提案には至らなかった。
結論
医薬品販売は各国の法律に基づき規制されるが、アメリカでは、OTC医薬品の消費者による販売を規制していない。フランス、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリアにおいては、消費者による医薬品の販売を認めていない。個人間取引サイトとして、海外のプラットフォームにおいて日本へ向けた不法な医薬品、医療機器等の輸出が防止できるのか、画面情報では明らかではなかった一方、国内の主な個人間取引サイトやSNSサイトでは、医薬品等の出品や取引が利用規約上禁止されているにも関わらず、医薬品が個人間取引され、期限切れや製品包装に破損の製品が届くことが明らかとなった。これらの取引を持ち掛ける投稿を的確に検出するための手法として、クローリングプログラムによる投稿情報の収集とその際に使用する検索キーワードの選定方法が考案された。定期的に投稿情報を収集し、直近の情報から抽出された検索キーワードを用いることで、より的確に監視・指導の対象となる投稿を検出することが可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202324007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
フリマサイトにおいて出品が禁止されている医薬品等の出品希望実態、SNSにおいて医薬品の販売、購入、取引等を促す投稿は禁止されているにも関わらず、向精神薬、濫用等のおそれのある医薬品等の取引が持ち掛けられている実態が明らかになり、実際に、SNSを介して処方箋薬を匿名で入手できることが確認された。これらの取引に関する投稿を的確に検出するための手法として、クローリングプログラムによる投稿情報の収集とその際に使用する検索キーワードの選定方法が考案され、システムアップにより監視強化への貢献が期待される。
臨床的観点からの成果
該当しない
ガイドライン等の開発
SNS やフリマサイトを利用した個人間における不適切な医薬品等の取引は、全国薬務関係主管課長会議(R2, R3, R4, R5年度)議題に挙がっており、本研究班は、関連知見を集積・提供することにより、対策強化・更新を支援する。
その他行政的観点からの成果
本研究で考案された検索キーワード選定アルゴリズムをもとにシステムアップすることで、直近の投稿情報から抽出された検索キーワードを用いたクローリングの実行により、より的確な監視・指導の対象となる投稿の検出に貢献する。
その他のインパクト
本研究成果について、地方衛生研究所全国協議会東海北陸支部衛生化学部会(2024.2.9)、医薬品セキュリティ研究会フォーラム(2023.8.25)、日本包装学会第86回シンポジウム(2022.11.28)における講演や、JICA講義、総説(Precision Medicine 7(12): 53-58, 2024)でも触れる等して、国内外に発信した。また、「#お薬もぐもぐ」投稿の解析による検出手法の提案について、医薬経済社 RISFAX(第8525号. 2023年7月8日発刊)に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
講演2件、マスコミ発表1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Zhang R, Yoshida N
Detection methods for individual transactions involving pharmaceutical products via X (formerly Twitter)
Biol Pharm Bull  (2025)

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
2025-06-17

収支報告書

文献番号
202324007Z