内臓錯位症候群の疫学と治療実態に関する研究

文献情報

文献番号
200936104A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓錯位症候群の疫学と治療実態に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-049
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(東京女子医科大学循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 松岡瑠美子(東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート)
  • 西澤 勉(東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート)
  • 白石 公(国立循環器病センター・小児循環器診療部)
  • 山岸敬幸(慶應義塾大学医学部小児科)
  • 小川俊一(日本医科大学・小児科学)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター・循環器科)
  • 松裏裕行(東邦大学医療センター大森病院)
  • 竹島 浩(京都大学大学院薬学研究科)
  • 石川 司朗(福岡市立こども病院・感染症センター循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無脾症と多脾症からなる内臓錯位症候群は、複雑心奇形に内臓異常や免疫低下を合併する症候群である。希な原因不明の疾患で、未だ効果的な治療方法は未確立、予後不良である。本研究は、我が国の内臓錯位症候群患者を診療している主要施設による多施設共同疫学研究を行い、内臓錯位症候群の病態把握、自然歴の把握、手術法と手術時期、感染予防や予後、疾患関連遺伝子の検索に関するデータ分析を行い内臓錯位症候群における治療、管理のための指針を作成することを目的とする。
研究方法
先天性心疾患を伴う内臓錯位症候群の小児の病歴簿を調べ、病態、診断方法、心奇形の組み合わせ、手術法、手術成績、予後、内臓奇形の頻度、重症細菌感染症の頻度、罹患歴、抗生剤投与、ワクチン接種の有無、重症感染からの死亡率等のデータを多施設共同で調べるため、142項目からなる調査票を作成した。これを各施設の研究分担者に配布し、本症候群の実態把握を行った。
結果と考察
無脾症588例、多脾症312例、合計900例のデータを収集した。1980から2010年に診察した無脾症は男性334名、女性254名、平均年齢9.1歳(日令1日―42歳)、人年法による観察人年は4558人年であった。多脾症は男性159名、女性153名、平均年齢14.0歳(日令2日―57歳)、観察人年は3358人年であった。重症感染症は無脾症で118名、多脾症で25名に認めた。また、重症感染症の年齢分布において無脾症、多脾症共に10歳未満が最も多かった。重症感染症の年間罹患率(患者1万人対)は、無脾症で259、多脾症で74であった。無脾症患者における重症感染症の罹患率は、内臓錯位症候群を伴わない先天性心疾患患者に比べて、高率であった。特に、肺炎球菌感染症が、無脾症の重症感染症患者の25%を占めた。また、無脾症患者において、細菌ワクチン接種や予防的抗生物質内服投与を行なった患者群と行わなかった患者群では、重症感染症の頻度に有意差を認め、細菌ワクチン接種や予防的抗生物質内服投与の有効性が認められた。
結論
得られたデータにより、予想以上に無脾症患者における重症感染症の罹患率が高いことが解った。このデータは、世界でも初めて得られたデータである。重症感染症の治療、予防が重要であるが、感染症治療予防の改善法については、さらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936104C

成果

専門的・学術的観点からの成果
無脾症588例、多脾症312例、合計900例のデータを収集した。1980から2010年に診察した無脾症は男性334名、女性254名、平均年齢9.1歳(日令1日―42歳)、人年法による観察人年は4558人年であった。多脾症は男性159名、女性153名、平均年齢14.0歳(日令2日―57歳)、観察人年は3358人年であった。重症感染症は無脾症で118名、多脾症で25名に認めた。また、重症感染症の年齢分布において無脾症、多脾症共に10歳未満が最も多かった。
臨床的観点からの成果
重症感染症の年間罹患率(患者1万人対)は、無脾症で259、多脾症で74であった。無脾症患者における重症感染症の罹患率は、内臓錯位症候群を伴わない先天性心疾患患者に比べて、高率であった。特に、肺炎球菌感染症が、無脾症の重症感染症患者の25%を占めた。また、無脾症患者において、細菌ワクチン接種や予防的抗生物質内服投与を行なった患者群と行わなかった患者群では、重症感染症の頻度に有意差を認め、細菌ワクチン接種や予防的抗生物質内服投与の有効性が認められた。
ガイドライン等の開発
感染性心内膜炎の予防が推奨される大動脈弁狭窄症よりも、無脾症では感染症が多い。このことは、無脾症患者においては、抜歯や手術時における感染性心内膜炎の予防を強く勧告すべきであることを示している。重症感染症に対する肺炎球菌ワクチンと予防的抗生剤内服の効果の検討を更に進める必要がある。また本症候群の発症に関わる遺伝子異常は未だ不明である。本症候群の患者の遺伝子の解析を行い、発症に関わる遺伝子異常を検索する必要がある。最終的に、内臓錯位症候群の最適な治療、管理指針を作成する予定である。
その他行政的観点からの成果
予想以上に無脾症患者における重症感染症の罹患率が高いことが解った。このデータは、世界でも初めて得られたデータである。重症感染症の治療、予防が重要であるが、感染症治療予防の改善法については、さらなる検討が必要である。
その他のインパクト
  

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-