医療用品等の適正処理システム及び再生・減量処理に関する研究

文献情報

文献番号
199700681A
報告書区分
総括
研究課題名
医療用品等の適正処理システム及び再生・減量処理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山村 勝美((財)廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
18,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療用品等の廃棄物処理について、現在規制の対象外となっている家庭等からの発生源から廃棄される医療廃棄物の管理状況、種類毎の廃棄量と処分方法の状況について調査を行い現状を把握するとともに、この結果を踏まえて、各地域の状況に応じた適正な在宅医療廃棄物の処理システムについて検討を行う事を目的とする。
研究方法
在宅医療廃棄物の国内外の状況について、文献調査等により実態を把握するとともに、発生源から廃棄される医療廃棄物の管理状況、種類毎の廃棄量と処分方法の状況等について調査を行い、これらの結果を踏まえて、適正な在宅医療廃棄物の処理のあり方について関係者による検討を行った。
結果と考察
(1)文献等調査概要
? 我が国においては、昭和56年に糖尿病患者等への自己注射指導管理料が新設されて以来、現在までに10種類以上の在宅医療技術が診療報酬上認められている。これに伴い、従来医療機関等から排出されていた様々な種類の医療廃棄物が一般家庭からも排出されるようになってきている。このような一般家庭から排出される医療廃棄物は、現行法下では一般廃棄物として扱われている。
? 在宅医療廃棄物については、欧米先進国においても、通常は一般廃棄物として家庭ごみとともに排出されているようであるが、注射針等の鋭利な廃棄物については、危険防止の観点から、廃棄時の注意事項に関するガイドラインの作成や医療機関等による回収の推進等の施策が行われている。
(2)アンケート調査概要
在宅医療廃棄物の廃棄の状況を把握するため、?通常非感染性の廃棄物と考えられるCAPD用ビニールバッグ、?感染等の恐れがあり廃棄に当たって特別な留意が必要と考えられる注射針等、および?その他の在宅医療に伴って排出される廃棄物の3群を対象としたアンケート調査を行った。
? CAPD(在宅自己腹膜透析)関連廃棄物の処理状況(全国調査)
CAPD使用済みバッグは1ヶ月で30kgにもなるものであるが、その廃棄方法としては、「燃えるごみに出している」が57%、「燃えないごみに出している」が26%、「混合ごみとして出している」の5%を加えると88%が家庭ごみとして市町村による収集に排出していた。一方、医療機関に持ち込んでいるのは3%であった。廃棄の方法について指導を受けている患者の内87%が家庭ごみとして廃棄するように指導を受けていた。また、家庭ごみの収集に出して拒否された事例は10%であった。
? 糖尿病用自己注射関連廃棄物の処理状況(全国調査)
糖尿病用自己注射の注射針の廃棄の方法としては、78%が病院・診療所等に持ち込んでいると答えており、家庭ごみとして廃棄しているものは17%であった。廃棄の方法について指導を受けている患者の92%が医療機関に持ち込むように指導を受けていた。また、家庭ごみの収集に出して拒否された割合は1%であった。
? 全ての在宅医療を対象とした廃棄物の処理状況(小規模調査)
全ての在宅医療を対象とした補完的な調査の結果、在宅医療廃棄物の種類としては、チューブ類、ビニールバッグ類、脱脂綿・ガーゼ等の廃棄割合が多いこと、廃棄の方
法としては、注射針等は医療機関に持ち込まれ、その他のごみは家庭ごみとして廃棄されている状況が把握できた。
(3) 関係者ヒアリング調査概要
在宅医療廃棄物に関わる関係者の内、?自治体、?薬局、?訪問看護ステーション、および?患者からヒアリングを実施した。
?自治体からのヒアリング概要
○在宅医療廃棄物の扱いについては、各自治体での扱いは異なっており、それぞれ独自の対応を行っている。
○近畿地方の代表的な都市においては、注射針等の廃棄について下記のような対策がとられていた。
・糖尿病用の自己注射に伴う注射針等については、耐貫通性のある容器に入れ定期的に医療機関まで持参するように指導する。
・リサイクルされる容器への混入防止の観点から、空き缶分別収集における注射針等による医療廃棄物の混入防止について、医療関係団体に依頼する。
・使用済み糖尿病用注射器回収袋を患者に渡し、病院に持参してもらうよう依頼する。
?薬局からのヒアリング概要
○ここ数年の間に院外処方箋の発行が増加し、平成10年2月末現在では、全国に39,265の保険薬局の内、30,885の薬局が院外処方箋を受け付けている。
○糖尿病用自己注射については、医療機関に注射針を持参する場合がほとんどだが、医療機関に比べ薬局が近くにあるような場合には薬局に持参することもあり得る。
○今後院外処方箋の数が増えてくれば、薬局に持ち込まれる在宅医療廃棄物をボランティア的なサービスとして処理することは困難である。
? 訪問看護ステーションからのヒアリング概要
○訪問看護ステーションは、全国に5000箇所設置することを目標としており平成10年3月末現在、全国で2559箇所、東京都では202箇所が稼働している。
○利用者としては創傷処置、膀胱留置カテーテル、経管栄養等の処置を受けている者が多く、排出される廃棄物としてはガーゼ、脱脂綿、カテーテル、ビニールバッグ等が多い。
○廃棄物の回収方法として、注射針については看護婦又は患者が医療機関に持ち込む、ガーゼ等は家庭ごみとして排出又は看護婦が持ち帰る等である。
○注射針を家庭ごみとして出す場合は、可燃ごみとして出すこと、さらに「取扱注意」のようなマークを添付することが望ましい。
? 患者からのヒアリング概要
○従来の使い捨て注射器がペン型注射器に改良されてから、針が二重にプロテクトされ、針が剥き出しの状態になることがないため事故が起きる可能性は少ないと考えていた。
○患者にとって糖尿病用自己注射を利用する際の最大の問題点は、社会の偏見であり、周囲の目を気にしなければならないことである。
○注射器メーカーへの要望としては、廃棄のための容器を添付すること、バイオハザードマークを付しておくこと等である。
○ 収集に当たる自治体からは、注射針の廃棄について厳しい意見がでているので、患者の側としても協会誌、セミナー等で啓発に努めたい。
結論
検討委員会の提言-在宅医療廃棄物処理のあり方について
?在宅医療廃棄物処理制度の明確化
在宅医療廃棄物は、現行法によれば一般廃棄物であり、市町村が収集責任を有している。しかしながら、一部の市町村において、患者の排出した廃棄物が収集されない等の混乱が生じている例が報告されている。今回実施したアンケート調査の中でもCAPDについて1割程度の患者が収集拒否を経験しているとの結果であった。こうした事例を防止するためには、廃棄物処理法の解釈を明確にし、在宅医療廃棄物の処理については市町村が中心的な役割を果たすべきことを再確認するとともに、在宅医療廃棄物の処理を通常のごみ収集以外の方法で行う場合には、予め医療関係者、患者等の理解を得て、各市町村が作成する一般廃棄物処理計画の中に位置づける等の所要の手続きをとることが必要である。
?特に留意すべき廃棄物の処理について
在宅医療廃棄物の収集に当たる市町村において、収集時におきる事故例は注射針による針刺し事故が中心となっているといわれている。このため、患者は、注射針等の鋭利な廃棄物を通常のごみ収集に出す場合、耐貫通性のある堅牢な容器に入れて排出する等、?に示す適正な排出を行う必要がある。また、医療機関は、患者が持参した注射針等を回収すること等により、患者・家族や在宅医療廃棄物の処理に従事する者に対する健康被害を未然に防止することに協力する必要がある。
また、感染性疾患を有する患者等から排出される廃棄物の処理に当たっては、医師等の助言に基づき、特に安全な管理、排出に努めることが必要である。
?注射針等の排出時の容器について
在宅医療廃棄物の種類が増加するに従い、注射針等を排出する際に、キャップをしない、ビニールバッグ等の破れやすい容器に入れる、リサイクルされる空き缶等に注射針等を混入させる等の不適正な排出の事例があることから、バイオハザードマークの付いた、耐貫通性のある堅牢な容器に入れて、一般ごみとして排出するか、又は医療機関に持参することが必要である。また、医療機関等は、注射針等をバイオハザードマークの付いた容器に入れて患者に渡し、使用後の注射針等は患者自らが当該容器に入れて排出、返却することが望ましく、そのような製品の開発を進めることが必要である。また、この際、バイオハザードマークの表示方法等患者のプライバシーに十分留意する必要がある。
?在宅医療に関わる新たな関係者の位置付けの明確化
従来、医療は患者と医療機関を中心に実施されてきたが、在宅医療の進展とともに訪問看護ステーション等関連するサービス提供主体が新たに加わってきた。こうした中で訪問看護ステーションについては、現在、訪問看護に伴い様々な医療廃棄物が発生していることから、訪問看護ステーションの在宅医療廃棄物の適正処理に果たす役割とこれに対応した制度の検討を行うことが必要である。
今後の課題
今回の検討は、在宅医療廃棄物の現在の処理状況や現行の廃棄物処理制度を踏まえて行った。しかし、今後、在宅医療の拡大や高度化に応じた廃棄物処理体制全般の見直し等を行う際、既存のシステムに加えて医薬品等の提供者等による回収の実施の可能性や廃棄に伴うコスト負担のあり方等について、適宜見直しを行うことが望ましい。

公開日・更新日

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