コケイン症候群の実態把握および治療とケアの指針作成ための研究

文献情報

文献番号
200936099A
報告書区分
総括
研究課題名
コケイン症候群の実態把握および治療とケアの指針作成ための研究
課題番号
H21-難治・一般-044
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 雅也(国立成育医療研究センター 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉田克生(千葉大学教育学部養護教育学基礎医科学部門小児科学 )
  • 林 雅晴(財団法人東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所)
  • 田沼直之(都立府中療育センター小児科)
  • 熊田聡子(都立神経病院神経 小児科 )
  • 星野英紀(国立成育医療センター 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Cockayne症候群(CS)は常染色体劣性遺伝疾患であり、頻度は100万人に1人程度とまれな疾患である。近年、DNA修復機構の一つであるヌクレオチド除去修復異常、特に転写と共役したDNA修復の異常であることが明らかになっている。これまで世界で200例以上の報告があるが、日本における診療実体は不明である。本研究では日本におけるCSの発生頻度、各病型における多様な症状の出現の年齢依存性、診療の実態、また死亡例の検索から死因の解析を行い、治療およびケアのための指針の基礎データとし、患者家族のQOLの改善を目指すものである。
研究方法
全国の小児科臨床研修認定施設、小児病院、療育施設合計921病院にコケイン症候群生存例および過去の死亡例についての一次調査を行った。一次調査のハガキを別掲した通りである。二次調査は患者有りとの回答を得た病院・施設に別掲の二次調査票を送付した。二次調査は新生児、乳児期の発達から合併症、診断の詳細、診療の詳細、死亡していれば死因を尋ねるものである。
結果と考察
合計674病院から回答を得た(回収率は73.2%)。この結果コケイン症候群生存例34名、死亡例39名という結果が判明し、現在二次調査の回収および解析を行っている。現在までのところコケイン症候群生存例16名(CSI型13名、CSIII型3名)、死亡例15名(CSI型13名、CSII型2名)、合計31名の臨床経過が集積され、CSII型およびCSIII型の発症頻度はCSI型の約1割であることが判明した。死亡例15名の死亡時平均年齢は18.3才、平均体重は8.4kgと著明な成長障害を認め、8名は著明な腎不全が死因に関係し、4名は重症肺炎が死因であった。拡張型心筋症が2名にみられた。約8割の患者が小児科以外にてんかん発作のための小児神経科、抗縮予防や良姿位維持のためのリハビリ科、齲歯治療のための歯科口膣外科、腎不全のための腎臓内科、糖尿病などのための内分泌科、難聴フォローのための耳鼻咽喉科、視機能フォローのための眼科など多くの科でのフォローを受けていることが判明したが、その包括化、体系化の必要性が重要と思われた。
結論
今回の調査でCSI型26例、CSII型2例、CSIII型3例の詳細な臨床経過が明らかになり、その発生頻度は大凡CSII型およびCSIII型がCSI型の約1割という結果であった。約8割のCSの患者が小児科以外に小児神経科、リハビリ科、歯科口膣外科、腎臓内科、内分泌科、耳鼻咽喉科、眼科を併診していることが判明した。特に腎不全は死亡原因として最も多く綿密なフォローと治療体系が必要と思われた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936099C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の小児科臨床研修認定施設、小児病院、療育施設合計921病院にコケイン症候群(CS)生存例および過去の死亡例についての一次調査を行った。合計674病院から回答を得た(回収率は73.2%)。この結果コケイン症候群生存例34名、死亡例39名という結果が判明した。現在までのところコケイン症候群生存例16名(CSI型13名、CSIII型3名)、死亡例15名(CSI型13名、CSII型2名)、合計31名の臨床経過が集積され、CSII型およびCSIII型の発症頻度はCSI型の約1割であることが判明した。
臨床的観点からの成果
今回の調査でCSI型26例、CSII型2例、CSIII型3例の詳細な臨床経過が明らかになり、その発生頻度は大凡CSII型およびCSIII型がCSI型の約1割という結果であった。約8割のCSの患者が小児科以外に小児神経科、リハビリ科、歯科口膣外科、腎臓内科、内分泌科、耳鼻咽喉科、眼科を併診していることが判明した。特に腎不全は死亡原因として最も多く綿密なフォローと治療体系が必要と思われた。
ガイドライン等の開発
本研究のデータが治療およびケアのための指針作成の基礎データとなると考えられる。国際的にもCS患者のその時々のニーズがどこにあるかを全国規模で行った調査は今回が初めてであり、社会的意義も大きい。今後さらに各病型における多様な症状の出現の年齢依存性、診療の実態、また死亡例の検索から死因の詳細な解析を行い、治療およびケアのための指針を作成する。稀少難病故の患者家族の孤立や医療者側の情報不足も予想され、本研究による治療およびケアのための指針は患者家族、医療者双方に有用であると考えられる。
その他行政的観点からの成果
本研究の指針作成は早期老化を特徴とする疾患のトータルケアの範型ともなりうるものであり、本症候群のみでなく多臓器にわたる多彩な症状に苦しむ重症心身障害児・者のケアにも有益な情報を与えるものである。
その他のインパクト
酸化ストレスマーカーの測定と解析:CS 患者由来の細胞は紫外線以外に活性酸素による酸化的DNA 損傷に対して高感受性を示し、その修復能も低下している。今回の少数例の尿を用いた酸化ストレスマーカーおよび抗酸化能の解析で本疾患の病態と酸化ストレスの関連が示唆されたのでさらに症例数を増やして検討する。抗酸化剤による治療の基礎的データとなることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本小児神経学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
久保田雅也
小児科医の立場から
日本臨床 , 68 (1) , 145-150  (2010)
原著論文2
林雅晴
色素性乾皮症・コケイン症候群の神経変性機序と治療の試み
医学のあゆみ , 228 (2) , 143-146  (2009)
原著論文3
林雅晴
脳発達障害と酸化ストレス
日本小児科学会雑誌 , 113 (4) , 657-666  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-