文献情報
文献番号
202323051A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中のブドウ球菌エンテロトキシンの検出および嘔吐活性の解明に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
廣瀬 昌平(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
黄色ブドウ球菌が産生するブドウ球菌エンテロトキシン(SEs/SEls)は、嘔吐型食中毒を引き起こす。SEsは、抗原性の違いによりSEAからSEl33までの計35種類が報告されている。日本のブドウ球菌食中毒は、SEAを原因とする事例が最も多い。食中毒事例の原因物質をSEsであると同定するためには、食品検体からSEsを検出する方法がもっとも有効であるが、食品自体がSEsの検出性および嘔吐活性に与える影響は明らかになっていない。そのため、本研究では、ブドウ球菌食中毒の主要な原因食品の中での市販キットでのSEAの検出性を明らかにすることを目的とした。また、SEAに対する加熱処理が市販の検出キットのSEA検出性に与える影響を解析した。加えて、食中毒を高頻度に発生し得る遺伝的背景を有する高食中毒原性菌株群を明らかにするため、ブドウ球菌食中毒事例由来株の遺伝的背景を解析し、由来ごとの傾向を明らかにすることを目的とした。
研究方法
食品中のブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)の検出性を確認するため、ブドウ球菌食中毒事例の主要な原因食品のうち、米飯、粒餡、求肥、鮭フレークおよび加熱牛肉を用いて市販のSEs検出キットのSEA検出性に対する食品の影響を評価した。また、加熱によるSEAの抗原性の失活が市販の検出キットの検出性に与える影響を解析した。さらに、ブドウ球菌食中毒事例株の特徴を明らかにするため、食中毒事例由来株のコアグラーゼ型別および全ゲノム解析を実施した。
結果と考察
0.125 ng/gおよび0.25 ng/gのSEAを添加した求肥、粒餡、鮭フレーク中では、米飯や加熱牛肉中よりもSEAの検出性が低く、求肥、粒餡および鮭フレークが低濃度のSEAの検出性に影響することが示唆された。100℃で加熱したSEAは、30分の加熱で約1/3、2時間の加熱で約1/800まで抗原性が低下した。これらの加熱後SEAはSDS-PAGEでははっきりとしたバンドが確認できたことから、SEAの全長構造の消失よりも市販キットでの検出性の低下が先に生じることが示唆された。食中毒事例由来株は、コアグラーゼ型別ではコアグラーゼIV型とVII型が約7割を占め、遺伝子型別ではsequence type 6(ST6)が約3割を占めていたことから、特定のコアグラーゼ型および遺伝子型の高食中毒原性菌株群の存在が示唆された。また、食中毒事例由来株の約7割がseaを保有しており、ブドウ球菌食中毒の原因物質としてのSEAの重要性が確認された。
結論
求肥、粒餡、鮭フレーク中の市販キットでのSEA検出性は、米飯や加熱牛肉中より低いことが示唆された。また、加熱したSEAは、全長構造の消失よりも検出性低下が先に生じると推察された。加えて、ブドウ球菌食中毒事例由来株は、コアグラーゼ型別ではIV型およびVII型の株が約7割を占め、遺伝子型別ではST6が約3割を占めており、高食中毒原性菌株群の存在が示唆された。また、食中毒事例由来株の7割がseaを保有しており、ブドウ球菌食中毒の原因物質としてのSEAの重要性が確認された。
公開日・更新日
公開日
2024-09-10
更新日
-