文献情報
文献番号
202323049A
報告書区分
総括
研究課題名
高機能なヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞を用いたポリフェノール類吸収評価系の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
植山 由希子(鳥羽 由希子)(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
1,878,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ポリフェノール類は生体内で抗酸化作用を発現し、老化やがんを予防することが示唆されている。しかし、ポリフェノール類を含む製品の摂取による健康被害も報告されている。そこで、ポリフェノール類を含む食品の摂取基準をより正確に制定する必要がある。食品やサプリメントなどの経口摂取成分は、消化管から生体内に取り込まれて生理機能を発揮する。したがって、ポリフェノール類の消化管における吸収機序を明らかにすることは、それらを含む健康食品等の安全性を担保するために必須である。
そこで、本研究ではポリフェノール類の正確な吸収評価を可能とする技術の開発を試みる。具体的には、ヒト人工多能性幹(induced pluripotent stem; iPS)細胞から分化誘導した小腸上皮細胞を用いて、ポリフェノール類の吸収評価系を構築する。高機能なヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞を作製可能な分化誘導法を開発し、より生体を模したin vitro評価系の構築とその社会実装を目指す。
そこで、本研究ではポリフェノール類の正確な吸収評価を可能とする技術の開発を試みる。具体的には、ヒト人工多能性幹(induced pluripotent stem; iPS)細胞から分化誘導した小腸上皮細胞を用いて、ポリフェノール類の吸収評価系を構築する。高機能なヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞を作製可能な分化誘導法を開発し、より生体を模したin vitro評価系の構築とその社会実装を目指す。
研究方法
ヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞のトランスポーター活性や酵素活性などの詳細な解析を進めたが、一部の機能が十分でないことが明らかとなった。そこで、近年注目されているオルガノイド培養に着手し、機能と汎用性を兼ね備えた培養系の構築に成功した。評価に用いるポリフェノール類の選定を行い、カテキン類の測定系の立ち上げと評価方法を検討した。
結果と考察
本年度の計画では、R4年度に作製したヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞の機能評価とその応用系の構築に着手することであった。ヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞の機能評価を行った結果、期待する成果が得られなかったため、オルガノイド培養に着手し、機能と汎用性を兼ね備えた培養系の構築に成功した。ヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞をオルガノイド培養用の培地で三次元培養を行うと、風船状の構造を持った細胞塊が観察された。この細胞塊は50回以上の継代培養が可能であり、オルガノイドに発現する幹細胞マーカーであるLGR5の発現が認められたことから、オルガノイドの樹立に成功したと考えたれた。さらに、より生体に模した培養系とするために単層膜の形成を試みた。セルカルチャーインサー上に細胞を播種し独自に開発した培地で培養を行った結果、経上皮電気抵抗値の継時的な増加が認められた。この結果から、上皮バリア機能を有した単層膜の形成に成功したことが示唆された。その他にもヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞オルガノイドとその単層膜の機能評価は終えており、細胞系の確立に関する計画に遅れは生じていない。また、カテキン類の作用による腸管毒性が示唆されているが、我々が確立した培養系では腸管毒性は現状認められておらず、引き続き吸収評価と合わせて精査する予定である。
結論
R5年度は、ヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞からオルガノイドを樹立し、これの表現型の評価を行なった。本研究で作製したヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞オルガノイドとその単層膜における機能は、オルガノイド培養していないヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞よりも有意に高いことが明らかとなった。本培養系を導入することにより、これまで実施困難であった食品由来成分の安全性評価等ができるようになると期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-12-06
更新日
-