難治性川崎病の治療ガイドライン作成

文献情報

文献番号
200936094A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性川崎病の治療ガイドライン作成
課題番号
H21-難治・一般-039
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 佐地 勉(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
  • 浜岡 建城(京都府立医科大学大学院医学研究科 小児循環器・腎臓学)
  • 中村 好一(自治医科大学 公衆衛生学)
  • 服部 成介(北里大学薬学部 生化学)
  • 阿部 淳(国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療センター研究所 成育社会医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
川崎病の治療の目標は、冠動脈合併症を起こさずに治癒させることである。冠動脈瘤・巨大冠動脈瘤は初回免疫グロブリン(IVIG)不応に多いが、それに対する治療法は確立していない。またインフリキシマブ(IFM)の川崎病へ投与され始めた。本研究の目的は、IVIG不応川崎病の定義、早期診断方法の確立、IFM治療の実態調査とその使用基準作成を目的とする。
研究方法
難治性川崎病の定義に関するアンケート調査、IFM使用実態に関するアンケート調査、IVIG不応の早期診断方法の可能性として、PRV-1、血小板マイクロパーティクル、酸化ストレス測定の有用性の検討、川崎病の特異抗体検索を行った。
結果と考察
IVIG不応川崎病の定義に関するアンケート調査結果はまだでていない。IFM使用実態アンケートの結果、1年間で38例の使用例があった。重大な副作用はなく、有効例は約76%であった。難治性川崎病の早期診断に重要な検査法として、PRV-1、血小板マイクロパーティクル、酸化ストレス測定の有用性が示唆された。特にPRV-1は川崎病の重症度判定、IVIG不応、冠動脈合併症の危険性の判断には有効である。また、川崎病特異抗体の同定を試み、同定の可能性を得た。IFMに関して、使用基準案を策定した。この基準は、班研究初年度の指針であり、今後、変更がありうる。その特徴は、BCG接種後6ヶ月以上経過していること、投与前の感染症スクリーニングとして、1)結核患者との接触歴の有無、2)胸部X線写真、3)胸部CT(造影なし)、4)血液細菌培養、尿細菌培養、5)B型肝炎ウイルス(HBs抗原、HBe抗原)を強調したことである。
 本研究の結果、難治性川崎病に対するIFM使用は、その実態が明らかになった。IFM1回静注の安全性、効果を示すことができた。初回IVIG不応例に対する治療選択枝が増えることになる。PRV-1は、治療によって左右されるリスク因子とは異なり、その時点での重症度判断にも役立つ。
結論
初回IVIG不応川崎病(難治性)へのIFM1回静注は、重症な副作用はなく、約7-8割に効果がある。PRV-1は川崎病の難治性、冠動脈障害合併の危険性の判断には有用であろう。班として、初回IVIG不応川崎病(難治性)におけるIFM使用基準案を策定した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936094C

成果

専門的・学術的観点からの成果
川崎病に対する免疫グロブリン(IVIG)不応例(難治性)では、好中球でのPRV-1(polycythemia rubera bera 1)、血清G-CSFの上昇が特異的にみられた。この2つはIVIG不応の予測に有用と思われる。国際的にも初めての報告である。
臨床的観点からの成果
1年間の国内調査ではインフリキシマブ(IFM)使用患者全員が、難治性川崎病(iKD)であり、2回目IVIG後使用であった。重症な副作用発生はなく、解熱効果は約73%だった。iKDに治療ガイドラインの重要な部分となるIFM使用ガイドラインを提案することができた。基礎的研究からもiKD予想因子の候補を提唱できつつある。IFMの川崎病への使用基準案は、国内、国外で初めてであり、安全な使用に向け社会的に意義が大きい。
ガイドライン等の開発
免疫グロブリン不応川崎病(難治性川崎病)に対するインフリキシマブの使用ガイドライン案を作成した。報告書に記載したが、今後、学会などで発表していく予定である。
その他行政的観点からの成果
インフリキシマブの川崎病への使用実態が明らかになったことは、重要である。今まで、使用ガイドラインはなかったが、本研究班の提案するガイドライン案は、インフリキシマブの安全な使用に貢献する。
その他のインパクト
巨大冠動脈瘤内血栓合併症の実態、その治療法の実態調査を行い、結果を得たので、全国での本合併症の標準治療を提唱できる可能性が出てきた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
荻野廣太郎、佐地勉、濱岡建城、他
特集 川崎病 -第33回禁忌川崎病研究会-我が国における難治性急性期川崎病に対するinfliximab療法の現状-3回の使用実態調査結果から-
Progress in Medicine , 29 (7) , 1722-1727  (2009)
原著論文2
Muro T, Maruyama Y, Saji T, et al.
Mimicking Kawasaki disease in bumed children: Report of four cases.
Burns , 35 , 549-599  (2009)
原著論文3
Kobayashi T, Saji T, Sonobe T,et al.
Risk stratification in the decision to include prednisolone with intranvenous immunoglobulin in primary therapy of Kawasaki disease.
Pediatr Infect Dis J. , 28 (6) , 498-502  (2009)
原著論文4
Hirono K, Kemmotsu Y, Saji T, et al.
Infliximab reduces cytokine-mediated inflammation but does not suppress cellular infiltration of the vessel wall in refractory Kawasaki disease.
Pediatr Res , 65 (6) , 696-701  (2009)
原著論文5
Takatsuki S, Ito Y, Saji T, et al.
IVIG Reduced Vascular Oxidative Stress in Patients With Kawasaki Disease.
Circ J , 73 (7) , 1315-1318  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-