核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究

文献情報

文献番号
202323046A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 慶介(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 達哉(広島大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,644,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の食品種の多様化、世界各国からの食品の輸入量及びその安全性確保需要増加に伴い、食品遺伝子検査の需要も増すものと考えらえる。現在の食品遺伝子検査はリアルタイムPCRがゴールドスタンダードになっているが、機械が高価かつ時間がかかることが問題視されていた。一方で、遺伝子検出技術として様々な等温核酸増幅反応の有用性が報告されている。Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法やRecombinase Polymerase Amplification(RPA)法は等温でかつ数十分で反応が完了することから、定性検査法として医療分野では普及してきている。しかし、国内の食品遺伝子検査としては検討が進んでいないのが実情である。そこで本研究は、LAMPやRPA等の核酸等温増幅反応の現状の情報収集及び国内の検査需要調査を行い、その結果を踏まえた実用的な方法を選択し、サンプリングから結果の解析までの流れを鑑みて食品行政に係る遺伝子試験としての適用性を評価し、試験法として開発することを目的とする。
研究方法
遺伝子組換え食品、アレルゲン、自然毒、微生物検査を実施ている地方衛生研究所、検疫所及び食肉衛生検査所に対し、核酸等温増幅反応に関する任意アンケートを行い、検査者視点における検査需要を調査した。
とうもろこし加工品をモデルに、リアルタイムPCR、LAMP、RPAにおけるDNA簡易抽出法の適用性を評価した。
RPAを用いたカンピロバクター及びサルモネラの検出の検討を行った。
結果と考察
(GM、アレルゲン、自然毒等)公的検査機関の遺伝子検査担当者を対象とした等温核酸増幅反応の需要調査を実施し、核酸等温増幅反応のメリット、オンサイト検査、現在の課題に関する情報収集を行った。その結果、通常の検査では迅速性が必要な半面、通知試験法と同等の感度・精度を有しなければ利用しにくいという意見が大多数であった。また、加工食品からの前処理時にカラムが詰まる等の現行通知試験法の問題点も多数意見があり、粗抽出DNAで適用可能な方法も需要が見込まれた。
 とうもろこし加工食品をモデルに、粗抽出DNAの適用性を評価したところ、リアルタイムPCR、LAMPと比較して、RPAが最も食品マトリクスの適用範囲が広かった。さらに、PCRが2時間かかるのに対し、同様の検査が30分未満でわかることから、DNA簡易抽出から実施は検査の大幅の迅速化が見込まれる。
(微生物分野)微生物分野の需要調査において、31.6%の検査員から、現行の検査法で困ることが有ると回答を得ると共に、37.9%の検査員からマルチプレックスを用いた検査法の必要性が有ると回答を得た。また、オンサイトでの検査需要に関しては、有ると回答した検査員は6.3%と低い結果であった。さらに、微生物検査法の改善を要するものとして、病原性大腸菌、ノロウイルス、カンピロバクターの順番で必要性が高いと感じている検査員が多いことが明らかとなった。
 需要の高いサルモネラ及びカンピロバクターのRPAによる検出を試みた。39℃、30分でRPA反応後、両菌共にDNA濃度0.5 pgから5 ngの間で、それぞれ遺伝子の増幅が確認された。さらに両菌が分離された鶏肉増菌液を用いて、簡易的DNA抽出後に両遺伝子の検出を行ったところ、緩衝ペプトン水増菌液からサルモネラ遺伝子は検出できなかったが、プレストン増菌液からカンピロバクター遺伝子は検出できた。サルモネラに関しては、更なる検討が必要であるが、カンピロバクターでは、選択増菌培地から標的遺伝子検出が可能であったことから、食品微生物分野に応用できる有用な手法であると考えられた。
結論
核酸等温増幅反応の需要調査では、公的機関を対象に行ったことから、通知試験法に対する問題点を確認することができた。核酸等温増幅反応の迅速性の観点から需要は高いことが伺えたが、従来法と同等であることを示すことができないと導入は難しいとも考えられた。オンサイト検査、マルチプレックス化はポイントによっては需要があるため、本研究で今後性能及びその有効性を示していくことが重要である。
粗抽出DNA溶液の適用性については、市販の簡易抽出試薬と核酸等温増幅反応を組み合わせてPCRと比べてRPA及びLAMPは迅速に結果が得られることが実証された。さらにRPAは食品マトリクスへの適用範囲が広いこと及び微生物検査での有用性が示唆された。
次年度はラテラルフロー法への適用性を評価する予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323046Z