文献情報
文献番号
202323044A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床検査技術を応用した自然毒成分の新たな検出・定量法の樹立
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA3007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 光貴(京都橘大学 健康科学部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 洋志(神戸常盤大学 保健科学部)
- 池田 哲也(京都橘大学 健康科学部臨床検査学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,917,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本では現代においても, 食材中に含まれる自然毒を原因とした食中毒が数多く発生している(登田美桜ほか, 食衛誌 2014, 55: 55-63)。現在, 自然毒に対する臨床検査法がほとんど実施されておらず, 多くの場合, 現場では患者やその家族の聴取と症状から推察し, 何が食中毒の原因であるか診断せざるを得ない。この事は誤診や対応の遅れに直結するため, 対策が急務である。以上の背景から 自然毒が原因である食中毒について, 毒成分の同定と患者の病期(初期, 重症期, 完治など)の判定に有用な検査法の樹立が必要と考えた。本研究を通じて樹立した手法は食品安全検査にも応用が可能であり, その関連業界への需要も見込まれる。そこで, 本研究では, 臨床検査技術を応用した, 食材に含まれる代表的な自然毒成分の検出・定量法の樹立を目的とした。令和5年度は主として, 馬鈴薯に含まれる自然毒, α-ソラニン(SO)とα-チャコニン(CHA)に対する酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)2種類の構築に尽力したので, その成果を中心に報告する。
研究方法
SOとCHAの粉末試薬をそれぞれ10 mg計量し,両方をまとめて10%ジメチルスルホキシド(DMSO) 10 mLに加え完全に溶解し,1.0 mg/mL SO+CHA混合試料を調製し原液とした。馬鈴薯食中毒患者の生体試料を入手することは困難であるため,3つの溶媒,① buffer(10 mM リン酸緩衝液 pH 7.4),② urineおよび③ serumにて原液を目的濃度に調製したものを生体試料と見做した。これら試料を用いて, 2種類のELISA(Direct ELISA, B-S direct ELISA)を構築した。
結果と考察
同一濃度試料の測定における両ELISAの吸光度差は, 希釈液がbufferの場合で最も大きい5倍であり, これがDirect ELISAからB-S direct ELISAに改良した場合の検出性能の差を的確に表していると思われた。一方で, serumやurine試料ではB-S direct ELISAへの改良による感度の向上が2.5倍と1.6倍に抑制されており, これは試料中の成分が測定結果に与える負の影響を示すものである。また, 各試料における検出限界濃度(LOD)で評価しても, Direct ELISAからB-S direct ELISAに変更したことで, buffer試料では5倍の感度向上を認めた一方, serum試料では2倍, urine試料では等倍となり, 生体試料に対してはELISAを改良することの大きな優位性は示されていない。加えて,Direct ELISAからB-S direct ELISAへ変更した場合でも,CVやRecoveryの向上を認めず,やはり検出感度が唯一の改善点である。検出可能なSOとCHAの濃度範囲内において,Direct ELISAとB-S direct ELISAにおける測定結果の相関性は良好であることから,測定時間や操作の簡便性を優先する際にはDirect ELISAでも問題ないと思われた。Serum試料ではブランク, すなわちSOやCHAを含まない通常のserumにも関わらず, B-S direct ELISAで発色反応を認めており, これが検出感度の低下と測定結果のばらつきの大きさに繋がっていると考えた。
結論
本研究を通じて構築したB-S direct ELISAは, 少なくとも試料がbufferとserumの場合において, 先に提案したDirect ELISAを超えるSOとCHAの検出性能を示した。一方で, 馬鈴薯中のソラニジンやソラソジン, 血清中のコレステロールやビタミンD3などと交差反応を示す点には注意すべきである。交差性や測定時間の長さなどの弱点から医療現場での活用には課題が残るが, 試料中のSOとCHAの濃度を推定できる手法として希少かつ有用である。
公開日・更新日
公開日
2024-10-31
更新日
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