後天性血友病XIIIの実態調査、発症機序の解明と治療方法の開発

文献情報

文献番号
200936091A
報告書区分
総括
研究課題名
後天性血友病XIIIの実態調査、発症機序の解明と治療方法の開発
課題番号
H21-難治・一般-036
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 白帝(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 惣宇利 正善(山形大学 医学部)
  • 岩田 宏紀(山形大学 医学部)
  • 張 偉光(チョウ イコウ)(山形大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原因不明の後天性凝固XIII(13)因子(F13)欠損症(後天性血友病13と命名)の実態を明らかにし、検査、診断と治療の方法を確立することである。
研究方法
 1. 広報・調査活動:1)全国調査、2)文献調査、3)広報活動、4)研究発表と講演
 2. 止血血栓学的臨床研究:1)症例の選別、2)基本検査項目、3)止血管理とインヒビターに対する免疫抑制療法
 3. 病態の解析と診断に関する実験研究:1)F13活性とF13-A, F13-B抗原量と分子量の測定、2)インヒビターの検出、3)抗体のターゲットとなる各反応ステップの解析、4)F13欠損症の迅速診断、5)F13-AやF13-B KOマウスを用いた動物実験
結果と考察
 実態調査により、我が国では、過去に少なくとも47名以上の後天性血友病13疑いが存在すること、また、自己抗体産生によるF13インヒビター症例は20例であることが判明した。
 広報調査活動は予定した事項を完全に達成し、臨床研究でも症例は少数ではあるが良好な止血管理を実現している。病態の解析と診断に関する実験研究では、F13による架橋結合反応の解析や症例で発見されたインヒビターの解析を進めた。特に、実験研究面については、詳細な生化学的研究の結果、班研究期間中に精査した10症例中4例がインヒビターによる後天性血友病13であり、これらの全例はF13のAサブユニット(F13-A)に対する抗体で、3例はタイプIの完全阻害型(中和型)、また、残り1例はタイプIIの不完全阻害型(結合型)であることが判明した。F13-AとF13 Bサブユニット(F13-B)の結合を阻害する抗体も世界で初めて同定され、以前の症例が持っていたF13-A活性化反応を阻害する抗体やF13-Bに対する抗体などを含めると、インヒビターの標的部位は多岐にわたると思われる。
 更に、F13-Aノックアウト(KO)マウスにおいては出血時間が延長する傾向にあることから、血小板/フィブリンの血餅退縮を解析したところ、この反応が欠如することが判明した。従って、全く新しいF13の血小板機能が発見された訳である。この血小板機能異常が本疾患の止血異常の一因になっていると共にF13活性の指標となる可能性があるので、血餅退縮反応を後天性血友病13のスクリーニング検査として迅速診断に応用する研究を開始した。
結論
 広報調査活動は予定した事項を完全に達成し、臨床研究でも少数ではあるが良好な管理を実現している。研究面ではインヒビターの解析を進めた。来年度の調査活動結果を合わせれば、本疾患の本邦での実態を明らかにすることができると期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936091C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 実態調査により、少なくとも47名以上の後天性血友病13疑い症例が存在すること、また、自己抗体産生によるF13インヒビター症例は19例あることが判明した。インヒビターは、F13-A抗体が多いこと、不完全阻害型もあることなどが明らかになった。また、F13-AとF13-Bの結合を阻害する抗体が世界で初めて同定されたことは、F13の構造機能連関を解析する上で重要である。
 血小板/フィブリンの血餅退縮がF13活性の指標となるので、新しいスクリーニング検査として迅速診断に応用する研究を開始した。
臨床的観点からの成果
 α2-PI活性、FDP濃度、D-dimer濃度をスクリーニング項目に加えて生体内でのF13活性を推定することを試みたところ、血漿、血清のα2-PI活性の差が、F13活性の高度低下と相関するという傾向が分かった。また、Factor VIII活性、Factor IX活性を測定して、後天性血友病A、Bとの鑑別を可能にした。
 出血制御のためF13濃縮製剤を投与したところ、殆どの症例では永続的な止血に成功した。インヒビターが存在する場合は副腎皮質ステロイドを中心に免疫抑制療法を実施し、著効を得た。
ガイドライン等の開発
検査・診断・治療のプロトコールを作成中。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
チラシを1800カ所に配布。 日本血栓止血学会のホームページに掲載。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-