ウエルナー症候群の病態把握と治療指針作成を目的とした全国研究

文献情報

文献番号
200936088A
報告書区分
総括
研究課題名
ウエルナー症候群の病態把握と治療指針作成を目的とした全国研究
課題番号
H21-難治・一般-033
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 雅彦(医療法人社団みゆき会病院)
  • 森 聖二郎(東京都老人医療センター)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院 医学研究科)
  • 吉本 信也(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 田中 康仁(奈良県立医科大学整形外科)
  • 嶋本 顕(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 竹本 稔(千葉大学附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウエルナー症候群(Werner syndrome:以下、WS)は我が国に多い代表的遺伝的早期老化症である。1984年に厚生省特定疾患ホルモン受容体機構調査研究班(尾形悦郎班長)による本疾患の診断の手引きが作成されたが、それ以降は、我が国におけるWSの現状は把握されておらず、さらに近年の基礎的、臨床的な進歩が必ずしもWSの診断、治療に反映されていない。こういった状況を受け、我々は、厚生省難治性疾患研究事業の一環として、WS病態把握、診療指針作成と新規治療法の開発を本研究の目的とした。
研究方法
全国の200床以上の病院を対象に郵送による一次アンケート調査を行った。WS患者は、若年性両側白内障、四肢の難治性皮膚潰瘍、糖脂質代謝異常の合併が多いため、眼科、皮膚科、内科(糖尿病内分泌内科、リューマチ科)、整形外科、形成外科、血管外科を主たる調査対象とした。アンケートでは、現在通院中のWS確定症例、疑い症例、過去5年間に通院していたWS確定症例の例数および性別の記載を依頼した。さらに、より多くのWS患者情報を収集するため日本眼科学会のホームページ、日本医事新報、学会機関誌等に本研究に関する記事を記載した。
結果と考察
6921通のアンケート調査に対して、3164通(45.7%)の回答を得た。その結果、遺伝的にWSと確定し現在通院中の患者124名(男性62名、女性82名)、疑い症例45名(男性23名、女性22名)、過去に通院していたWS確定例167例(男性112、女性79 一部に重複あり)の計336名のWS患者の存在を今回新たに把握することができた。診療科別患者数では皮膚科が最も多く(32.1%)、次いで整形外科(16.7%)、形成外科(14.6%)、内科(11.9%)、眼科(10.1%)であった。この結果より、WS患者の多くは皮膚の硬化や潰瘍を契機に医療機関を受診し、診断に至っているものと推察された。
結論
今年度の研究によって新たに336名のWS患者の存在を確認することができ、今回のアンケート調査は非常に有用であった。また報告書作成中にも、問い合わせや患者情報が相次いでおり、社会的インパクトの大きさが伺われた。今後より詳細な臨床所見の収集(二次調査)とその分析を行うことによりWSの包括的な診療指針を作成し、国内外へと広く情報を発信できることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936088C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ウェルナー症候群(WS)は日本人に多い代表的な遺伝的早老症群である。
過去20年間でWSの原因遺伝子が発見され、確定診断の手法は確立したものの、この遺伝子変異がなぜ老化や種々の代謝異常をもたらすかは明らかとなっていない。そこでWSの病態解明の病態の解明および治療応用の第一歩として、本研究ではWS患者由来iPS細胞の樹立に着手している。患者由来iPS細胞の確立を通じて、老化メカニズムの解明、新規薬剤の薬効・毒性解析、細胞移植に基づく皮膚潰瘍の新しい治療法を実現できるものと考えている。
臨床的観点からの成果
平成21年度の班研究によって336症例のWS患者を新たに把握することができた。現在は詳細な二次調査を行っており、この調査を通して、より感度、特異度が高い新しい診断基準の作成を目指している。また、平成21年度はWS患者のこれまでの臨床的経験、知識をある程度まとめることできたが、今後はさらにこれらの知識を集約することにより、世界初のWSの診療指針を作成し、医師の経験に関わらず、最善かつ最も効率のよい治療を全てのWS患者が受けられることを目指したい。
ガイドライン等の開発
平成21年度の班研究によって新しい診断基準案やこれまでになかった治療指針案を作成した。現在は二次調査やWS患者を直接診療した医師の臨床的経験を集約しており、平成21年度に作成した案をより実用的かる確実なものにするよう研究を進めている。さらに今後の発展には国際協力体制の構築も重要と考えられる。世界的には、米国ワシントン大学でWS登録組織を開設し、独自の診断基準を提案しているため、これら海外の研究者とも連携し、ユニバーサルなガイドライン作成にも貢献していく。
その他行政的観点からの成果
WS患者の病態の解明や診断、治療法の開発を通して、WS患者のQOLの向上を目指すことに加えて、加齢に付随する疾患(老年病)全般の克服へと繋がるよう研究を進めている。
その他のインパクト
今回の班研究を契機に「早老症」に対する認知度があがり、マスコミからの取材の申し込みを現在受けている。また、今回の班研究の発足を契機にWS患者会も平成21年6月19日に発足しており、医療、医学のみならず患者会を通してのWS患者のバックアップが始まっている。さらに、今後 日本、海外(ワシントン大学 等)の臨床家、研究者を集めてウェルナー症候群に関する国際公開シンポジウムの開催を目指し現在、準備に取りかかってる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
ウェルナー症候群の病態把握、診療指針作成と新規治療法の開発を目的とした全国研究、石川崇広、竹本稔、藤本昌紀、葛谷雅文、森聖二郎、横手幸太郎 第52回 日本老年医学会学術集会・総会 2010年6月25日
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
患者会の発足

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohnishi S, Takemoto M, Yokote Y, et al.
Primary lung cancer associated with Werner syndrome.
Geriatrics & Gerontology International  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-