文献情報
文献番号
202323037A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
- 鹿嶋 晃平(東京大学 医学部附属病院総合周産期母子医療センター(小児科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
43,812,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、リスク管理やその効果の検証に不可欠である食品(母乳含む)を介した有害物質の摂取量を適時かつ継続的に調査する。また、摂取量調査に必要となる有害物質の分析法を開発する。さらに、リスク管理の優先順位付けに必要となる各種有害物質の暴露マージン(MOE)についての情報を収集し整理する。
研究方法
2023年度に作製した全国約10地域のトータルダイエット(TD)試料を分析し、ダイオキシン類(DXN)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有害元素(ヒ素、カドミウム、水銀、鉛等)等について国民平均(一歳以上)の一日摂取量を推定するとともに、一部については摂取量の経年変化の情報を更新した。有機フッ素化合物(PFAS)については2022年度と2023年度に作製した2地域のTD試料を分析し摂取量を推定した。乳幼児用の一食分試料(昼食)のPCB分析を実施し、PCB摂取量を推定した。畜産物を対象にGC-MS/MSを用いたDXN分析法の性能を評価した。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BT)及びリン酸エステル系難燃剤(PR)の分析法を新たに開発するため、食品を対象とした前処理法を検討した。母乳のDXN濃度を測定し、その経年変化を調査した。各種有害物質のMOEの情報等を世界の食品安全担当機関等より収集した。
結果と考察
TD試料の分析結果から国民平均の摂取量はDXNが0.40 pg TEQ/kg bw/day、PCBが5.4 ng/kg bw/dayと推定された。DNXは耐容一日摂取量(TDI)の約10%、PCBは暫定一日摂取許容量の約0.1%であった。主な元素類の平均摂取量は、ヒ素が237(無機ヒ素は17.7)、カドミウムが15.9、水銀が5.41、メチル水銀が4.23、鉛が4.29(単位は全てμg/person/day)と推定された。摂取量推定値と健康影響に基づく指標値の比(ハザード比)を求めた結果、無機ヒ素のハザード比が最も高かった。また、過去の摂取量と比較し経年変化を解析した結果、DXN、PCB、カドミウム、水銀、鉛は減少傾向であったが、無機ヒ素についてはほぼ一定であった。一食分試料からのPCB摂取量の平均値は乳児で17 ng/食、幼児で99 ng/食であり、体重当たりに換算すると暫定一日摂取許容量に占める割合は0.2%以下であった。妥当性を確認したPFAS分析法を用いて2地域のTD試料を分析した結果、PFASの一日摂取量(Lower-bound~Upper-bound)は、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)では0.40~3.3、パーフルオロオクタン酸(PFOA)では0.049~1.3、パーフルオロヘキサンスルホン酸では0.025~0.38、パーフルオロノナン酸では0.097~1.4(単位は全てng/kg bw/day)の範囲と推定された。PFOS及びPFOAについては、食品安全委員会が示したTDIの2.0~16%及び0.24~6.6%に相当した。畜水産物におけるGC-MS/MS法のDXN分析値は従来法(高分解能GC/MS)と良く一致したが、マトリックスが強いと思われる食品試料を測定した後に大幅な感度低下が観察されることがあった。BT分析法については魚試料の前処理法を検討して添加回収試験を実施した結果、13種のうち9種のBTで良好な真度(77%~114%)と併行精度(<12%)が認められた。PR分析法についてはTD試料の前処理法を検討して添加回収試験を行った結果、10群(魚介類)における4種のPRをのぞき、18種のPRについて50%以上の回収率が得られた。初産婦の出産後1か月の母乳中のDXN濃度は5.95±2.05 pg TEQ/g fatであった。平均値の経緯をみると長期的に認められている漸減傾向が継続しているが、昨年度との比較では、ほぼ横ばいないし極わずかに上昇していたが、統計学的有意差は認めなかった。MOEを指標とした有害物質のリストを更新・発展させた。注目すべきは、EFSAが無機ヒ素の毒性の指標値を大幅に引き下げたことや、国内では食品安全委員会がPFASの食品健康影響評価案を作成したことがあげられた。
結論
食品からのDXN、PCB、カドミウム、水銀、鉛の摂取量及び母乳中のDXN濃度は、行政施策の効果等もあり経時的な減少傾向が示唆されている。一方で、無機ヒ素はハザード比が高く摂取量の減少傾向も認められないことから、継続調査の優先度が最も高いと考えられる。PFOSとPFOAの摂取量は食品安全委員会が示したTDIを下回っていたが、今後は対象地域を増やして調査を行う。検討中の分析法については、引き続き前処理法の検討を行い、食品試料やTD試料への適用を目指す。MOEの情報については、優先してリスク管理すべき有害物質を選定する際に有用であることから、継続的に収集する。
公開日・更新日
公開日
2024-09-19
更新日
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