加工食品中の残留農薬等による暴露量を評価するための研究

文献情報

文献番号
202323032A
報告書区分
総括
研究課題名
加工食品中の残留農薬等による暴露量を評価するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 村上 健太郎(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 篠崎 奈々(東京大学 医学系研究科 公共健康医学専攻 社会予防疫学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,134,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、2016年~2020年に実施された食品摂取頻度・摂取量調査の結果から、農薬の最大残留基準値 (MRL) 設定時に行われる暴露量推定に使用可能な生鮮農産品 (RAC) 消費量を算出することを最大の目的とし、さらに算出した消費量を用いて暴露量を推定するため、4つの分担課題を実施した。
研究方法
分担課題① 2016年~2020年にかけて行われた食事記録調査のデータを集計し、1歳以上79歳以下の4,692人における食品および食品群の摂取量の分布を明らかにした。
分担課題② 国内外の文献を参照し、食品変換係数と配合割合を算出するための基本的な方法論を、果実を例として構築した。食品変換係数は、農薬の最大残留基準値の設定対象となる小分類に含まれる個々の生鮮農産品に対し割り当てられた日本食品標準成分表2015年版(七訂)の各食品について算出した。一方、複数の食材からなる食品における各食材の配合割合は、七訂食品成分表などの各種参考文献や、複合食品とそこに含まれる各食材の栄養素含有量などを基に決定した。これらの全ての工程において、参考文献や算出方法を明確に記録した。
分担課題③ 食品摂取頻度・摂取量調査の結果から、農薬のMRL設定時に行われる暴露量推定に使用可能なRAC消費量を算出する方法として、現行の暴露評価書の情報を基に、優先的に消費量を算出するRACを選択するトップダウン型のアプローチについて検討した。
分担課題④ 加工食品に含まれる可能性のある農薬残留物のリスク管理の国際標準に関する情報を得ることを目的として、諸外国の規制動向や暴露評価の実際を調査した。また、本研究班の主題である生鮮農産品消費量の算出に関連する課題として、仕様書作成及び技術的特記事項を検討した。
結果と考察
分担課題① 計8日間の食事記録に1日以上参加し、食事記録記入状況が電子データ化された対象者の人数は4692人であった。1~6歳児909人において1人・日以上登場した食品は1631食品であった。7~64歳の男女3090人において1人・日以上登場した食品は1965食品であった。65歳以上の男女693人において1人・日以上登場した食品は1812食品であった。全国食事調査の実施とデータ集計を行い、日本人の食品摂取状況を明らかにした。
分担課題② 果実類のうち149種類の食品の食品変換係数を決定した。また、複数の原材料からなる50種類の食品の食材の配合割合を決定した。
分担課題③ 幼児において対ADI比が70%以上の農薬を抽出したところ、長期暴露量推定の対象となっている食品数は195であり、現行の暴露量推定の対象となっている全219食品の89%に相当した。したがって、分担課題②および④で検討しているように、全ての食事記録調査の対象食品からRAC消費量を算出するボトムアップ型のアプローチを採用することが望ましいと考えられた。厚生労働省が行った「食品中の残留農薬等検査結果」の公表データを解析した結果、2013~2018年の食品中の残留農薬等検査において検出率と国産と海外産の違いはほとんど関連していなかった。
分担課題④ EUを対象とした調査の結果、茶やスパイス類を除き、加工食品を対象としてMRLを設定する積極的な法的根拠はなかった。一方で、加工食品が検査の対象となっており、当該検査における加工係数の利用が明らかとなった。ただし、加工係数が設定されている加工食品に検査は限定されるものと考えられる。さらに、RAC消費量の明確な理解に必要な目的や用語の説明、及び仕様書を作成した。また、RAC消費量を算出するための具体的な方法とプロセスを構築し、その実施において留意すべき技術的特記事項を、全workable packageに共通する事項及び「7 果実類」特有の事項としてまとめた。さらに、食品成分表の「7 果実類」のworkable packageに含まれる食品を対象として、RAC消費量算出のための食品のマッピング案を作成した。
結論
食品摂取頻度・摂取量調査の結果から、農薬のMRL 設定時に行われる暴露量推定に使用可能なRAC消費量を算出するため、食品変換係数と配合割合から構成されるプロセスを構築した。日本食品標準成分表2015年版(七訂)を基に18のworkable packageに分け、全workable packageに共通する事項及び「7 果実類」特有の技術的特記事項をまとめた。以上の検討は暴露評価の側から検討しても妥当性のあるアプローチであった。また、EUを対象とした調査結果から、加工に伴う濃度変化を考慮するよりも、加工食品としての消費量からRACとしての消費量を算出することで暴露評価を行うアプローチを確立することが優先であることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2024-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,134,000円
(2)補助金確定額
8,134,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,552,338円
人件費・謝金 4,303,828円
旅費 0円
その他 2,277,834円
間接経費 0円
合計 8,134,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-08-27
更新日
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