多施設共同研究:劇症1型糖尿病の診断マーカー同定と診断基準確立

文献情報

文献番号
200936082A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設共同研究:劇症1型糖尿病の診断マーカー同定と診断基準確立
課題番号
H21-難治・一般-027
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
花房 俊昭(大阪医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 哲郎(山梨大学医学工学研究部 (第三内科))
  • 池上 博司(近畿大学医学部 (内分泌・代謝・糖尿病内科))
  • 今川 彰久(大阪大学大学院医学系研究科 (内分泌・代謝内科学))
  • 徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科 (人類遺伝学))
  • 西田 奈央(東京大学大学院医学系研究科 (人類遺伝学))
  • 安田 和基(国立国際医療センター研究所 (代謝疾患研究部))
  • 大澤 春彦(愛媛大学大学院医学系研究科 (分子遺伝制御内科学))
  • 粟田 卓也(埼玉医科大学 (内分泌・糖尿病内科))
  • 川崎 英二(長崎大学医学部・歯学部附属病院 (生活習慣病予防診療部))
  • 島田 朗(慶應義塾大学 (内科))
  • 永田 正男(加古川市民病院 (糖尿病内科) 旧所属:神戸大学大学院老年内科学)
  • 西村 保一郎(大阪医科大学医学部 (数学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、我が国における劇症1型糖尿病の患者数を把握し、ゲノムワイド関連解析を行うことにより劇症1型糖尿病の原因・病態の鍵となる分子を同定し、特異的な診断マーカーの確立とそれを用いた診断基準の作成を目指す。
研究方法
研究分担施設および研究協力施設に通院中の劇症1型糖尿病患者数およびインスリン自己注射施行患者数から、ならびに地域糖尿病患者登録レジストリである「愛媛スタディ」から、全糖尿病患者における劇症1型糖尿病患者割合を明らかにし、劇症1型糖尿病患者数を推計する。
全ゲノム関連解析(GWAS)による鍵分子候補の同定は、Affymetrix社製SNP Array 6.0アレイを用いて全ゲノム領域のSNP関連解析を行う。劇症1糖尿病患者群100名、健常対照群100名、自己免疫性1型糖尿病200名(うち、急性発症100名、緩徐発症100名)の3群を1セットとし、異なる3セットを準備する。
結果と考察
研究分担施設および研究協力施設に通院中の劇症1型糖尿病患者数とインスリン施行患者を調査した結果、インスリン自己注射施行患者における劇症1型糖尿病患者の割合は0.39-1.75 %(平均0.61 %)であった。日本におけるインスリン自己注射施行患者数110-120万人から、劇症1型糖尿病患者数は4290-21000 (7015)人と推計できる。「愛媛スタディ」において全糖尿病患者における劇症1型糖尿病患者の割合が0.2%であること、継続的な治療を受けていると推測される患者数が246万9000人であること、等から、日本における劇症1型糖尿病患者数は4938人と推計できる。研究分担者の施設は劇症1型糖尿病患者数が比較的多いことを考慮し、劇症1型糖尿病患者数は5000-7000人であると推測するのが妥当と思われる。
全ゲノム領域のSNP関連解析においては、第1セットで90万SNPの相関解析を行った。自己免疫性1型糖尿病において、class II HLA遺伝子領域のSNPが最もP値の低い候補遺伝子としてあげられている。また、class II HLA以外の領域の候補SNPは劇症1型糖尿病と自己免疫性1型糖尿病で異なるものを多数含んでいた。
結論
暫定診断基準を用いた日本における劇症1型糖尿病患者数は5000-7000名と推計された。ゲノムワイド関連解析により、劇症1型糖尿病診断の鍵となる分子の候補を抽出することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936082C

成果

専門的・学術的観点からの成果
学術的には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病ゲノムの第1セットにおいて、全ゲノム関連解析(GWAS)による鍵分子候補の同定を、Affymetrix社製SNP Array 6.0アレイを用いて行ったところ、自己免疫性1型糖尿病において、class II HLA遺伝子領域のSNPが最もP値の低い候補遺伝子としてあげられた。また、class II HLA以外の領域の候補SNPは劇症1型糖尿病と自己免疫性1型糖尿病で異なるものを多数含んでいた。
臨床的観点からの成果
研究分担施設および研究協力施設に通院中の劇症1型糖尿病患者数とインスリン施行患者の調査、および、「愛媛スタディ」において全糖尿病患者における劇症1型糖尿病患者の割合と継続的な治療を受けていると推測される患者数が246万9000人であること、等から、日本における劇症1型糖尿病患者数は4938人と推計された。研究分担者の施設は劇症1型糖尿病患者数が比較的多いことを考慮し、劇症1型糖尿病患者数は5000-7000人であると推測された。
ガイドライン等の開発
現在、日本糖尿病学会が2004年に策定した劇症1型糖尿病の暫定診断基準を用いて診断を行っている。本研究においては、劇症1型糖尿病の発症に関与する新たな鍵分子の同定を、血清マーカーの探索、ゲノム解析、等を通じて目指しており、新たな鍵分子の同定により新たな診断基準の策定が可能になるものと期待される。発症に関与する新たな鍵分子が明らかになれば、早期診断、早期治療が可能になるものと期待され、診療ガイドラインの作成につながる。
その他行政的観点からの成果
劇症1型糖尿病は、数日の間にきわめて急激に進行するケトアシドーシスを特徴とする1型糖尿病の最重症型であり、早期診断、早期治療を行わなければ患者の死に直結するため、医療行政上きわめて重要な疾患といえる。しかし、糖尿病専門医以外の医療者における本疾患の認知度は必ずしも高くなく、見落としや診断の遅れによる死亡事例の報告が散見されていた。本研究事業の成果として、劇症1型糖尿病に対する医療従事者の認知度が高まることにより、本疾患の見落としや診断の遅れにより死亡する患者を少なくできると期待される。
その他のインパクト
劇症1型糖尿病については、本研究事業の主任研究者らが2000年に初めて報告して以来、何度となくマスコミに取り上げられ、その重要性が一般社会に対しても徐々にではあるが認識されつつある。今後もホームページをはじめとして広報活動を積極的に行い、一般社会における劇症1型糖尿病の認知度を上げることにより、本疾患で死亡する患者が少しでも減少することが期待されるとともに、本研究事業の遂行に協力してくれる患者数が増えることも期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-