食品微生物試験法の国際標準化実装に向けた研究

文献情報

文献番号
202323027A
報告書区分
総括
研究課題名
食品微生物試験法の国際標準化実装に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1008
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 )
  • 百瀬 愛佳(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 五十君 静信(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 松岡 英明(東京農工大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
13,808,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中の病原菌及び衛生指標菌を検出・定量する試験法は、科学技術の進歩に伴って改良され、その性能が日々向上している。また、国際的な食品流通の活発化に伴い、各国で用いられる食品試験法の国際整合性が取れていることが、国際社会において大変重要視されている。本研究は、食品中微生物の試験法に精通した専門家から構成される「食品からの微生物標準試験法検討委員会」の活動により、国際整合性が取れた微生物試験法を確立し、食品の微生物規格基準等に関わる試験法整備のための研究を行うと共に、それらの活用に際し国際的に標準とされている妥当性評価及び検証に関する実装化のためのガイドライン作成をその目的とした。
研究方法
クロストリジウム試験法はST1案作成のため、ISO法、BAM法等の国際的な標準試験法と公定法の比較を行った。リステリア属菌試験法では、検討委員会で指摘された事項について作業部会内で検討すると共に、作業部会保有のリステリア属菌菌株を用い各種培地上の集落の性状について解析を行った。分子生物学的手法の導入に関する研究では、リアルタイムPCRに比較して絶対定量などの多くの利点をもつデジタルPCR技術を食品分野で活用するためのガイドライン策定に向けた検討として、国内外での利用実績のあるノロウイルス検出のためのリアルタイムPCR法の条件等を基本条件としてデジタルPCRの検証を実施した。国際動向に関する研究では、ISO/TC34/SC9(食品の微生物試験法)及びCEN/TC463総会に参加し、国際標準試験法の策定及び改訂の動向に関する情報収集とISO試験法の検討を行った。ISOのバリデーションガイドライン(ISO 16140シリーズ)及びAOAC Internationalが公表している妥当性確認ガイドを比較検討し、特に微生物試験を行う検査室で新たな試験法を導入する場合に必要となる導入検証ガイドライン案の作成を進めた。妥当性評価ガイドライン策定に向けた研究では、SC9の妥当性確認作業部会に参加し、妥当性確認関連文書の議論の動向を調査すると共に、検証ガイドライン及びISO 16140-2に基づくバリデーションの解説文書のひな型を作成した。
結果と考察
クロストリジウム試験法は、国際整合性の観点および嫌気培養が比較的容易となった現状を鑑みてISO 15213-1:2023を国内標準試験法として導入することとした。公定法であるパウチ法とISO 法の妥当性評価を実施し、妥当性が確認できた場合パウチ法をAnnexとして添付することとして、NIHSJ-42-ST1を作成した。リステリア属菌試験法は、二次増菌培養手順の記載の変更、血液寒天培地の動物種の指定等ST2案の変更を行うと共に、食品及び製造施設から分離された菌株の、各種選択分離培地上での集落形成性及び性状の比較を行って、今後本試験法の確認試験において検討すべき項目を抽出した。分子生物学的手法の導入に関する研究では、デジタルPCRの利用に向けては現時点でのリアルタイムPCRの条件に加えて、さまざまな条件を検討する必要があることが示された。国際動向の把握及び妥当性評価に関する研究では、ISO/TC34/SC9及びCEN/TC463総会に参加し、国際標準試験法であるISO法の策定及び改訂動向についての情報収集を行うと共に、日本からの情報発信を行った。本研究において試験法及びその運用・作成時の各種ガイドライン案を作成することで、国内標準試験法の作成方法とその活用等について国際的に標準となっている妥当性確認や検証が可能になると思われる。
結論
クロストリジウム属菌の標準試験法として、ISO 15213-1:2023を導入し、公定法であるパウチ法とISO 法について妥当性評価を実施し、その結果によりパウチ法をAnnexとする
NIHSJ-42-ST1を作成した。食品製造環境におけるリステリア・モノサイトゲネスの汚染指標菌として国際的に重要視されているリステリア属菌の定性法及び定量法について、選択分離培地上での集落性状及び性状を、作業部会保有株を用いて検討すると共に、更に検討すべき課題を抽出した。デジタルPCRのメリット及びデメリットを抽出したところ、標準検体を必要とせずに定量値が得られるメリットがある一方、既存のqPCRのプロトコルがそのまま適用できない可能性がある等導入に向けて検討すべき項目が多数見られた。微生物試験をとりまく国際情勢としては、ISO/TC34/SC9総会に参加すると共に、AOACインターナショナル年次大会参加者から新しい情報を数多く得た。各種ISO法の改訂が進んでいることから、今後も積極的に関与し、国際標準試験法及びガイドラインの策定に係わっていくことが重要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2024-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323027Z