文献情報
文献番号
202323026A
報告書区分
総括
研究課題名
動物性食品輸出の規制対策の強化に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 吉冨 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
28,231,000円
研究者交替、所属機関変更
令和5年の9月に分担研究者の山口大学の豊福肇先生がご逝去されたことから、豊福先生が行う予定の研究内容は研究代表者の穐山と分担研究者の吉冨真理の方で行った。
研究報告書(概要版)
研究目的
動物性食品の輸出促進のため国外の規制対策の強化に資する研究を目的とする。課題1の動物性食品中の残留物質及び汚染物質の分析法の確立と妥当性評価、課題2の牛肉のSTECおよびサルモネラ属菌汚染リスク低減に関する研究、課題3のと畜場HACCPの科学的支援の資料の作成に関する研究、課題4の国内の食肉輸出施設の監視指導検査員の研修プログラムの充実することを目的とする。
研究方法
課題1ではEUでの輸入時検査においてA物質が検出された場合に原因調査を行うための分析法の確立及び妥当性評価に関する研究を行った。課題2は対米輸出食肉を試験する複数の食検のSOPを書面調査および現地調査を組み合わせて情報を収集した。また各食検での試験に伴い派生する培養液残液を供試し、食検とは異なる方法にて腸管出血性大腸菌の試験対象であるベロ毒素およびインチミン(接着因子)遺伝子、並びにサルモネラ属菌特異的遺伝子の検出を実施した。課題3はFSISの食肉HCガイドを確認し翻訳した。スチームバキューム(SV)の腸管出血性大腸菌の制御効果を確認する試験の条件を検討した。課題4は、検査員の各食検における研修状況について聞き取り調査を行った。FSIS、EUの研修資料を確認し、FSISの資料を翻訳した。
結果と考察
課題1では、牛尿中のタレラノール、ゼアララノン、ゼアラレノン及びゼラノール分析法、及び牛尿中の2-チオウラシル、4-チオウラシル及び6-メチルチオウラシル分析法を確立した。課題2では、収集した情報を精査した結果、一部の食検について微生物試験の問題点について改善方法を指導した。また、各食検から分与された現状での51試験分の培養液残液からベロ毒素遺伝子、インチミン遺伝子およびサルモネラ属菌特異的遺伝子は検出されなかった。課題3では、アメリカのFDAの食肉HCガイドを翻訳し確認するとともに、バリデーションの根拠となる国内外の文献を収集、精査し、整理した。また、SVの腸管出血性大腸菌の制御効果を確認する本試験を実施した。米国農務省(FSIS)の公衆衛生獣医師のトレーニング資料の調査及び連邦規則集9CFR、FSIS Directiveの翻訳及びアメリカ合衆国農務省食品検査局の食肉ハザードコントロールガイドを翻訳を行った。課題4では、各検査所の研修と教材、仕組みの要望についてアンケート及びインタビュー調査の結果、検査業務に必要な知識をひとりで学習し、習得度の評価が可能な、共通の動画教材が求められていた。次年度に研修教材の作成に着手するため、食検の研修状況の実態調査の結果及びFSIS等の研修資料を基に、検査員が必要とする知識及び技術を効率的に学習できる教材の構成、内容を検討した。さらに、と畜場のHACCPシステムの検証の科学的評価資料として、スチームバキューム処理による牛肉表面の微生物削減効果の妥当性確認試験を行った。
結論
課題1では牛尿中の2-チオウラシル、4-チオウラシルおよび6-メチル-2-チオウラシル分析法を確立した。また、牛尿中のレゾルシル酸ラクトン類(ゼラノール、タレラノール、ゼアララノンおよびゼアラレノン)分析法を確立した。課題2では日本の対米輸出認定食肉取扱施設の牛枝肉処理工程におけるSTECおよびサルモネラ汚染の適切な防除および各食肉検査所でのSTECおよびサルモネラ検査法の信頼性が改めて示された。また、STEC検査およびサルモネラ検査において、クオリバックスQ7システムおよびRapidFinderでの判定時のトラブルが複数の施設で認められた。課題3ではSV処理による牛肉表面のE. coli削減効果の妥当性確認試験の結果、SVは、枝肉表面に2~3回以上処理することによりE. coli低減の効果があり、JEMRAの報告と同様の結果が得られた。輸出食肉施設の外部検証の微生物試験結果とSVの導入との関係を比較した結果、SV使用にかかわらず多くの枝肉は良好な衛生度を確保していることが判明した。課題4では指名検査員の輸出食肉施設の検証の支援資料の参考とするために、FSISの食肉HCGを翻訳した。今回検討した結果に加え、今後、国内外の文献を検索、精査し、指名検査員の検証の支援資料を作成する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2024-09-10
更新日
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