食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に資する研究

文献情報

文献番号
202323025A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に資する研究
課題番号
23KA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
片岡 洋平(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
  • 鍋師 裕美(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,858,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって食品に移行した放射性物質の問題に対応するため、原子力災害対策本部は「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」(以下「ガイドライン」)を策定し、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を行っている。本研究課題では、現状に則したガイドライン改正のための科学的知見を得るための研究として、食品中放射性物質の検査システムの評価手法の検討、食品中放射性物質濃度データの解析、食品中放射性物質等の実態調査、緊急時の食品放射能測定法の検討、消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討を実施した。
研究方法
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の検討では、非破壊検査法による食品中の放射性セシウムスクリーニング法について、検査対象品目のさらなる適用拡大を検討した。食品中放射性物質濃度データの解析では、令和5年度に厚生労働省から公表された食品中の放射性セシウム検査データを集計し、放射性セシウム検出率、基準値超過率、検出濃度等を食品カテゴリ等のパラメータ別に解析した。食品中放射性物質等の実態調査では、魚介類からのポロニウム210の被ばく線量の推定を目的に、市場に流通する魚介類のポロニウム210の放射能濃度を実態調査した。緊急時の放射能測定法の検討では、「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」について、背景と主に放射性セシウムを想定したゲルマニウム半導体検出器を用いた測定法について改訂等が必要と思われる箇所を検討した。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行った。
結果と考察
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の検討では、野生キノコについては新たな適用可能な品目の追加には至らなかった。ただし、クリタケについては検査への適用性が高いことが見込まれた。山菜類はコシアブラについて、すでに非破壊式装置による検査の対象品目となっている他品目と同等の性能での検査が可能であることを示唆する結果が得られた。食品中放射性物質濃度データの解析では、基準値超過率は全体で0.37%、流通食品で0.30%、非流通品で0.38%であった。基準値超過試料は、収穫後に農機具から交差汚染した非流通品のソバを除くと、栽培/飼養管理が可能な品目からの基準値超過はなかった。食品中放射性物質等の実態調査では、魚介類のうち魚類の14魚種について調査した結果、主に筋肉部位からなる可食部ではシラス、カツオで最大100 Bq/kgを超える放射能濃度が見られた。また、平均放射能濃度は14魚種を通じて、0.5-60 Bq/kgの範囲にあった。一方、サンマの内臓では最大で可食部の最大値より約7倍高い700 Bq/kgを超える放射能濃度が見られた。緊急時の放射能測定法の検討では、原子力災害時に関する法令等は、震災後に体制も含めて改正等がなされていたが、震災前に防災指針に記載されていた「飲食物の摂取制限に関する指標」の内容は、震災後の災対指針の運用上の介入レベル(OIL:Operational Intervention Level)OIL 6にそのまま採用されており、測定核種、数量、測定対象飲食物等については震災前から変更は生じていないことを確認した。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、「食品の安全性」に関する一般的認識を調査した結果、食品中放射性セシウム基準や食の安全に関する回答はここ数年の傾向とほぼ変わりなく、アルプス処理水の放出に関連する報道の影響はほとんど観察できなかった。
結論
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の検討では、クリタケ、コシアブラについて、すでに非破壊式検査の適用種となっている品目と同等レベルのスクリーニングレベルが確保可能であることが分かった。食品中放射性物質濃度データの解析では、天然キノコ、天然山菜および天然キノコの乾燥加工品においては流通品における検出率が高いため、これらの品目に重きを置いた出荷前検査の実施が重要であると考えられた。食品中放射性物質等の実態調査では、一般的な食生活では、魚から過度にポロニウム210により内部被ばくをする可能性は低いと考えられた。引き続き筋肉部位だけの可食部だけでなく内臓を喫食する魚介類の調査が期待された。緊急時の放射能測定法の検討では、放射性セシウムについては、現行の食品衛生法の試験法が信頼性確保も含めて流用可能と考えられ、また、関連する放射能測定法シリーズの文書も参照情報として重要と考えられた。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、今は「平時のリスクコミュニケーション」をしっかり行うことが望ましいことが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323025Z