食用動物等のプリオン病の病態機序およびヒトへの感染リスクの解明に関する研究

文献情報

文献番号
202323023A
報告書区分
総括
研究課題名
食用動物等のプリオン病の病態機序およびヒトへの感染リスクの解明に関する研究
課題番号
23KA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 豊孝(北海道大学 大学院獣医学研究院 獣医衛生学教室)
  • 青島 圭佑(北海道大学 大学院獣医学研究院)
  • 岩丸 祥史(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 )
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部 第一室)
  • 今村 守一(宮崎大学 医学部医学科感染症学講座微生物学分野)
  • 小野 文子(岡山理科大学 獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
24,006,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C-BSEの発生は、飼料規制等の管理措置により収束したが、2021年に英国で感染牛が摘発されたように、感染源は完全には排除されていない。また、非定型BSE(H-BSEとL-BSE)は高齢牛で自然発生し、L-BSEはヒトに感染するリスクがある。ヒツジのスクレイピーの病原体、鹿科動物の慢性消耗病(CWD)の病原体にも多様性があり、異種間伝播によりC-BSE様の病原体が出現することが報告されている。このようにC-BSE収束後も、動物プリオン病によるヒトの健康危害の懸念は存在する。プリオン病は致死性の疾患で治療法がないため、食品を介した動物プリオン病のヒトへの伝播リスクの低減に継続的に取り組む必要がある。これまでの本事業の成果として、Protein Misfolding Cyclic Amplification(PMCA)およびReal-time quaking-induced conversion(RT-QuIC)等、試験管内解析技術が高度化している。これらは、高精度な検査法、感染動物の病態の解析、ヒトへの感染リスクを含めた異種間伝播能の推定に応用可能である。本研究では、これまでの成果を基盤として、1)RT-QuIC等の各種動物プリオン病の検査への適用と確定検査法の見直し、2)異種間伝播によるプリオンの性状変化を解析する試験管内試験系の構築、3)BSE感染ウシおよびサルの病態解析、食を介して動物プリオン病の病原体がヒトへ感染するリスクの低減に資する。
研究方法
1)RT-QuIC等の各種動物プリオン病の検査・診断法への適用と確定検査法の見直し
・RT-QuICを阻害する脂質の除去法として、既報のエタノールによる除去と、Bu/Meによる脂質除去の操作性、効率を比較検討した。C-BSEプリオンを安定に満足できる感度で検出可能なRT-QuICの構築を行った。
2)異種間伝播によるプリオンの性状変化を解析する試験管内試験系の構築
・H-BSEプリオンがヒトに感染することを想定した試験管内異種間伝播系を構築した。H-BSE感染ウシ脳乳剤をシード、ヒトPrPCを発現する形質転換マウス(HuTg)脳乳剤を基質として連続PMCAを行った。
3)BSE感染ウシおよびサルの病態解析
・C-, H-, L-BSEを経口投与し、解剖後に脳幹部からWB法でPrPScが検出されなかったウシの脳幹部からPMCA法を用いてPrPScを検出した。
・L-BSEプリオンを経口投与したサルでの感染成立を確認するため、投与サルのリンパ系組織、神経系組織、体液からPMCA法によりPrPScを検出した
結果と考察
1)RT-QuIC等の各種動物プリオン病の検査・診断法への適用と確定検査法の見直し
・ブタノール/メタノール混合液(Bu/Me)による脂質抽出法は、エタノールによる抽出と比較して効率が良く実用的な被検試料の前処理法として利用可能である。
・C-BSEプリオンを安定に満足できる感度で検出可能なRT-QuICはPBSの単純希釈では条件を見いだすことができた。
2)異種間伝播によるプリオンの性状変化を解析する試験管内試験系の構築
・H-BSEプリオンをPMCAによりヒトPrPCに試験内順化させた場合、生じた3種類の株のうち、一つの株がC-BSE様の性状を示した。
3)BSE感染ウシおよびサルの病態解析
・WB法で陰性と判断されたBSE経口投与ウシの脳幹からPMCA法によりPrPScが検出されたことから、投与牛は発症していなかったが感染が成立していたことが確かめられた。
・L-BSEを経口投与したカニクイザルのリンパ組織(腸間膜リンパ節、扁桃、鼠径リンパ節)および脊髄、末梢神経(正中神経)からPMCA法でPrPScが検出されたことから、L-BSEプリオンは経口ルートで霊長類に感染が成立することが結論できた。
結論
・Bu/MeはエタノールによるものよりもRT-QuICの試料前処理法として優れていた。
・C-BSEプリオンを安定して検出可能なRT-QuICの基礎的反応条件を見いだした。
・H-BSEプリオンも経口ルートで牛に感染することが示唆された。
・L-BSEプリオンが経口ルートで霊長類に感染することを最終的に結論した。
・試験管内反応系を用いる異種間伝播試験は、病原体と宿主の様々な組み合わせでの解析が可能であり、概念実証の実験系として有用である。

公開日・更新日

公開日
2024-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323023Z