日本人脆弱X症候群の実態調査研究

文献情報

文献番号
200936077A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人脆弱X症候群の実態調査研究
課題番号
H21-難治・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 生命機能研究支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 有波 忠雄(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 杉江 秀夫(自治医科大学 )
  • 後藤 雄一(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 佐々木 司(東京大学保健センター )
  • 大野 耕策(鳥取大学医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脆弱X症候群は、治療への期待が高まっている。日本では、遺伝子検査は十分でなく、患者さんの把握も不十分である。本研究班では、より効率的な遺伝子診断システムを構築し、全国レベルの調査を行い、遺伝子診断を積極的に推進し、家系サンプルの集積を目指す。そして、その医療情報を分析し日本人での特徴を明らかにする。さらに、遺伝子診断を含めた診断ガイドラインを策定し、全国に普及させ患者頻度を明らかにし、遺伝カウンセリング体制に貢献する。最終的には、患者情報データベースを作成し、情報提供や新たな治療への体制を整える。また、保因者の一部で発症するFragile X-associated Tremor Ataxia Syndrome (FXTAS)に関する情報を得る。
研究方法
FMR1遺伝子CGG繰り返し配列は、正常日本人946人(576人の男性、370人の女性)のDNAを用い我々が開発した方法で検討した。さらに、国立精神・神経センターで収集されている精神・神経疾患バイオリソース197家系、パーキンソン病の症状を呈する患者さんのDNAも解析した。小児神経学会の評議員224名を対象にアンケート調査した。独自の医療関係者向けパンフレットを作成し、小児神経学会評議員などへ配布を行った。医療関係者向けの講演会(平成21年11月14日:学術情報センター)も開催した。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に対応できる体制を整え、ホームページを作成した。
結果と考察
正常日本人946人を解析し、中間長を持つヒトが男性103人に1人、女性の324人に1人であった。これは、諸外国よりやや低く、日本人では男性10,000人に1人以上の頻度と推定された。結果、日本全国に5,000人以上の患者が存在することになる。精神・神経疾患バイオリソース197家系(男性219名、女性152名)には脆弱X症候群3家系が存在した。本年度、日本で初めてのFXTAS患者を発見した。本疾患を専門とする小児神経学会の評議員224名を対象にアンケート調査を行ったが、把握できた患者数はわずか19名であった。これは、1)本疾患は特徴が少なく検査が不十分、2)家系に患者が1人などX連鎖性遺伝と考えにくい、3)従来の染色体検査では十分に診断できない、などの原因が考えられた。
結論
1)日本人の脆弱X症候群の頻度は、男性1万人に1人程度と推測される。2)日本での患者の把握は不十分で、遺伝子検査を充実させる必要がある。3)日本人ではじめてのFXTAS患者を発見した。4)さらに研究を推進し、治療研究の体制を早急に作る必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936077C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脆弱X症候群は、民族ごとに頻度が異なっている。今回正常日本人の解析を行うことにより、保因者や中間長をもつヒトの頻度を明らかにした。その結果、日本人では本疾患は男性10,000人に1人以上の頻度と推定された。さらに、精神・神経センターで収集されている精神・神経疾患バイオリソースより3家系の脆弱X症候群を発見した。また、本疾患の保因者ではパーキンソン病様症状を呈することがあり、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)として知られているが、日本人で初めての患者を発見した。
臨床的観点からの成果
実態調査のため、本疾患を専門とする小児神経学会の評議員を中心にアンケート調査を行ったが、わずか19名の患者の把握となった。これは、1)本疾患は特徴が少なく検査が不十分、2)家系に患者が1人などX連鎖性遺伝と考えにくい、3)従来の染色体検査では十分に診断できない、などの原因が考えられた。このため、精神遅滞患者を対象に積極的に遺伝子検査を行ってゆくことが重要であると結論づけた。
ガイドライン等の開発
脆弱X症候群の診断基準と日本人の患者数の把握を行った(日本全国に5,000人以上の患者を推測)
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
平成21年11月14日 学術総合センター(東京)にて、遺伝性精神遅滞「脆弱X症候群」の現状と進歩として公開シンポジウムを開催した。さらに、本研究班の活動が、山陰中央新報2009年11月7日、8日に取り上げられた。ホームページを開設した(http://fragile-x.med.tottori-u.ac.jp/)。パンフレットも作成した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishii K, Hosaka Ai, Adachi K et al.
A Japanese case of Fragile-X-associated tremor/ataxia syndrome (FXTAS)
Internal Medicine  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-