食品中残留農薬等の試験法開発における課題の解決に向けた研究

文献情報

文献番号
202323019A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の試験法開発における課題の解決に向けた研究
課題番号
22KA1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田口 貴章(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 穐山 浩(星薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,117,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の残留農薬等検査において、我が国の公示試験法は精製度が高いため、夾雑成分の影響を受け難く測定装置への負担も少ないが、操作時間が長い、溶媒等の使用量が多い等の難点がある。残留農薬等検査では、分析結果の信頼性の向上が求められている一方、検査の効率化、迅速化、コスト削減も望まれている。本研究では、農薬等の検出を困難にする夾雑物を含む食品や、特定の食品に含まれると検出困難な農薬等について高感度かつ高精度な測定法等を確立すると共に、分析結果の信頼性向上及び検査の迅速化を目的とする。
研究方法
【課題1 残留農薬等分析における試料調製方法の検討】
 「農産物における試料調製方法及び試料の均質性が分析結果へ与える影響」では、試料の均質性の指標を得ることを目的に、管理された圃場で農薬を散布して栽培したほうれんそうを用いて、均質化の程度が不十分で固形物を多く含む粗粉砕試料と、十分に均質化した微粉砕試料を調製し、分析値やその変動に与える影響を調査した。「畜水産物における試料調製方法の検討」では、常温磨砕法では均質化が困難な水産物を対象に3種類の凍結粉砕法による試料調製を検討し、調製した試料の粉砕状況等を常温磨砕法と比較した。
【課題2 公示試験法の精製操作の簡便化・迅速化及び自動化に向けた検討】
 残留農薬等検査において使用頻度が高い公示試験法(通知一斉試験法等)の精製操作について、簡便化、迅速化、自動化を検討する。本年度は、通知一斉試験法「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)」に従って調製した抽出液を用いて、精製に使用するミニカラム及び溶出溶媒等を検討した後、精製操作を自動化した。玄米、大豆、キャベツ、ほうれんそう、ばれいしょ、りんご、オレンジ及び茶を用いて農薬151化合物を対象に添加濃度0.01 ppmで妥当性評価試験を行った。
【課題3 前処理と分析装置のオンライン化を目指した半自動分析法の確立】
 我が国からの食品輸出促進のための食品の衛生管理手法の国際調和及びその推進のため、本年度は、輸出検査で頻度の高い大豆に適用するためにグリホサート・グリホシネート類を固相抽出上で誘導体化して高感度に分析する方法を検討した。また、輸入大豆飼料への適用を検討した。
結果と考察
【課題1】農産物の検討では、均質化が不十分な試料での分析値は、微細な均質化試料と比較して相対的に低くなり、試料の不十分な均質化状態は残留農薬濃度を過小評価する可能性があることが示唆された。各均質化試料を目開き1 mmの篩に負荷し、通過率を求めた結果、十分均質な試料では通過率が90%以上となった。ほうれんそうにおける十分均質な試料の目安は「目開き1 mmの篩に負荷したときの通過率が90%以上」と考えられた。畜水産物の検討では、あゆやえびでは凍結粉砕法を適用できることが示されたが、うなぎ及びさけでは大きい皮や骨が認められ、均質性をさらに向上させる必要があると考えられた。
【課題2】①C18ミニカラムで低極性夾雑成分を除去後、②溶出液を食塩水で希釈して別のC18ミニカラムで高極性夾雑成分を除去し、③PSAミニカラムで酸性夾雑成分や色素を除去した後、GC-MS/MSで測定する方法を確立した。本法は、大豆では検討農薬の87%、その他の食品では93%以上で真度及び精度の目標値を満たした。ほとんどの食品/農薬においてマトリックスによる影響は見られなかった。
【課題3】固相カートリッジ中でのMTBSTFAによる簡便で迅速な誘導体化を行った。水抽出後にアセトニトリルで除タンパク後、AXs固相カートリッジを用いて精製した。基準値レベルの妥当性評価試験において、真度、精度ともにガイドラインの目標値を満たした。開発した分析法を各国の食用丸大豆、食用加工大豆および飼料用大豆に適用し、信頼性や適用性を示した。
結論
【課題1】農薬が残留したほうれんそうを用いた調査から、十分均質な試料の目安は「目開き1 mmの篩に負荷したときの通過率が90%以上」と考えられ、昨年度行ったトマトでの調査結果と合致した。昨年度確立した凍結粉砕法による試料調製方法は、あゆ及びえびには適用できるが、うなぎ及びさけでは均質化が不十分で、改良が必要と考えられた。
【課題2】「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)」の精製操作を改良し、簡便化・迅速化した。本分析法は、抽出方法を変更していないため、通知一斉試験法と同等と認められ、規格基準の適否判定に用いることができる方法である。
【課題3】簡便で迅速な固相誘導体化をを用いたLC-MS/MSによる大豆中のグリホサート等5成分の一斉分析法を確立した。また、本分析法が輸入大豆飼料等への適用性や信頼性を示した。

公開日・更新日

公開日
2024-09-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-09-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202323019Z