文献情報
文献番号
202323018A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の指定等手続きの国際整合に資する研究
課題番号
22KA1008
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
窪崎 敦隆(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,209,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では、要請資料(食品添加物の指定や使用基準改正の要請に際し、要請者が有効性、安全性等に関する資料を添えた要請書)を作成して厚生労働省へ提出することになっている。厚生労働省は、2014年に要請者が容易にかつ的確に要請資料を作成できるように、「食品添加物の指定及び使用基準改正要請資料作成に関する手引(以下「手引」という。)」を通知し、要請資料の作成等の支援に寄与する組織として、食品添加物指定等相談センター(FADCC)を設立した。現在、2014年の取組みにより食品添加物の指定手続きは円滑に行われているが、内閣府食品安全委員会の「添加物に関する食品健康影響評価指針」が改訂されたこと、国内外での手続きの差異等を踏まえた記載内容への手引の更新が必要との指摘があること、日EU経済連携協定等の貿易協定の締結により食品添加物の指定等の要望が増大していること、欧州において食品添加物等のリスク評価の透明性向上の取組が進められていることなどから、我が国の指定手続きの更なる最適化を進めることが急務となっている。そこで、本研究では、我が国における食品添加物の指定等に関する要請資料作成の実態及び国際的なリスクアナリシスの動向を踏まえ、手引及びその英語版の改正案を作成することで、更なる食品添加物指定等手続きの公平性と透明性を深化させ、国内外における信頼性を向上させることを目的としている。
研究方法
本年度(令和5年度)は、「FADCCにおける相談業務の透明化に資する資料作成」に加え、「国内外の申請手続きの比較整理」と「手引の改正草案の作成」を行った。
結果と考察
まず、我が国における食品添加物の指定等要請の手続きや要請資料作成過程の透明性を高めることを目的に、「食品添加物の指定及び使用基準改正要請資料作成に関する手引」の解説資料として、概要書作成に関する基本的な留意点や成分規格案作成の手順をまとめた「手引注解」の作成を試みた。食品安全委員会では4種類の評価指針を公表しているが、そのうち本年度は「添加物に関する食品健康影響評価指針」に着目し作業を進めた。手引注解の基本的な構成は、要請資料全体に関する注解である「全体的な注意」と、概要書作成に関する注解である「Ⅰ.添加物の概要」、「Ⅱ.有効性」、「Ⅲ.安全性」、「Ⅳ.一日摂取量」及び「Ⅴ.引用文献」とすることを目指しているが、本年度は「Ⅴ.引用文献」を「全体の注意」に含めて作成した。また、概要書の根拠資料のための資料作成及び英文化を行うとともに、FADCCのホームページの更新を行った。
次に、国内外の申請手続きの比較として摂取量推計に着目し、欧州の食品分類記述体系である「The food classification and description system (FoodEx2)」に基づいた欧州の公開解析ツール「DietEx」について、実際の使用方法について検証を行った。DietExは、包括的欧州食品消費データベースの個人消費データを用いて、食品添加物を含む食品中の様々な物質の摂取量を推定するためのツールであり、利用者が興味のある食品中の物質の推定濃度の入力値を変更することが出来ることから、使い勝手の良い仕様となっていた。取りまとめた使用方法が正しいことを確認するために、DietExを実際に用いたと言及している論文に記載されていた結果を用いることで再現の検証ができた。
さらに、手引の改正案の作成に向けて、要請資料に含まれる概要書が食品安全委員会の評価書や厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会の部会資料作成時の基礎資料となることを踏まえ、評価書及び部会資料の構成を整理した。手引の改正案に従って記載される概要書が、これまで以上に作成及び利活用が容易なものとなるように、その構成について検討を行い、その新しい構成案に合わせて手引の構成を変更することとした。継続性の観点から、現在の手引の文言を生かしながら、「実例」の記載を整理するなど時代に即した修文を加えることで「手引の改正草案」を完成させた。
次に、国内外の申請手続きの比較として摂取量推計に着目し、欧州の食品分類記述体系である「The food classification and description system (FoodEx2)」に基づいた欧州の公開解析ツール「DietEx」について、実際の使用方法について検証を行った。DietExは、包括的欧州食品消費データベースの個人消費データを用いて、食品添加物を含む食品中の様々な物質の摂取量を推定するためのツールであり、利用者が興味のある食品中の物質の推定濃度の入力値を変更することが出来ることから、使い勝手の良い仕様となっていた。取りまとめた使用方法が正しいことを確認するために、DietExを実際に用いたと言及している論文に記載されていた結果を用いることで再現の検証ができた。
さらに、手引の改正案の作成に向けて、要請資料に含まれる概要書が食品安全委員会の評価書や厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会の部会資料作成時の基礎資料となることを踏まえ、評価書及び部会資料の構成を整理した。手引の改正案に従って記載される概要書が、これまで以上に作成及び利活用が容易なものとなるように、その構成について検討を行い、その新しい構成案に合わせて手引の構成を変更することとした。継続性の観点から、現在の手引の文言を生かしながら、「実例」の記載を整理するなど時代に即した修文を加えることで「手引の改正草案」を完成させた。
結論
本研究は、協力研究者であるFADCCの相談員への聞き取り等を行うことや食品添加物の指定及び使用基準改正に関する要請資料作成に関連する諸外国の動向に関する調査を行うことで、国内外及び周辺環境の詳細な実態を把握する計画であり、本研究の成果物である手引の改正案は、食品衛生基準行政の施策に直接反映させることができる。また、FADCCにおける要請資料作成工程を可視化したり、手引の改正案の英語版を公表したりすることで、我が国の食品添加物の指定等手続きの透明性を高め、食品安全行政における取組みの整合性や公平性を確保し、国内外における信頼性を向上させることが期待できる。
公開日・更新日
公開日
2024-09-12
更新日
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