文献情報
文献番号
202323014A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等の衛生的な製造管理等の推進に資する研究
課題番号
22KA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
- 村田 康允(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 藤原 恒司(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,567,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
器具・容器包装の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、昨今のSDGs(持続可能な開発目標)などの国際的な取組として、新規材質の開発、再生材料の利用など、多様な製品が製造されつつある。そこで本研究では、器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究、器具・容器包装の原材料の安全性に関する研究、市販製品に残存する化学物質に関する研究を実施した。
研究方法
器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究では、分析機器メーカーと協力して、LC/MS/MS分析を行うための情報を収集した。さらに、業界団体と協力して、ゴム、紙等の有機材質の自主的な製造管理の内容を検討した。器具・容器包装の原材料の安全性に関する研究では、業界団体と協力して、紙の原材料についてQSAR解析およびAmes試験により遺伝毒性の確認を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、民間の登録検査機関および公的な衛生研究所による試験室間共同実験、協力研究者による規格試験法の改良および代替試験法の開発、市販製品、文献等を用いた基礎的研究および実態調査を行った。
結果と考察
器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究では、ポジティブリスト(PL)収載物質の分析情報の収集等の3課題を行った。PL収載物質の分析情報の収集では、PL収載物質80種類を対象に、LC/MS/MS分析の情報を収集し、63物質についてマススペクトル、定量下限値等の情報を得た。ゴムおよびゴム製器具・容器包装の製造管理に関する検討では、ゴムの原材料として使用される物質の調査を実施した。その結果、情報が得られた基材は、「シロキサン結合を主とする重合体」、「フッ素置換エチレン類を主なモノマーとする重合体」、「アルケン類を主なモノマーとする重合体」、「共役ジエン炭化水素を主なモノマーとする重合体」および「天然ゴム」の5種であった。添加剤は合成樹脂と共通の物質が多く約3/4の物質は合成樹脂PLに収載されている物質であった。紙および紙製器具・容器包装の製造管理に関する検討では、原材料の整理を行った。紙の添加剤では、合成樹脂PLに収載されていない添加剤が131物質存在した。さらに、添加剤のばく露量を推定するための条件、並びに、水分や油分で浸される用途や電子レンジ等での加熱を伴う用途の紙製品に対する管理について検討した。
器具・容器包装の原材料の安全性評価に関する研究では、紙の添加剤として使用される313物質についてQSAR解析を実施した。その結果、陽性の懸念があったものが37物質存在した。これらについては情報収集や必要であれば追加の試験などを行い、さらに安全性の確認を行う必要があると考えられた。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質(NIAS)の探索等の6課題を実施した。合成樹脂製器具・容器包装に含有されるNIASの探索では、合成樹脂製器具・容器包装に含まれるNIASに関するレビュー41報の内容をまとめた。昨年度分と合わせると、調査論文は82報となり、収載した情報はのべ3345化合物となった。総溶出物試験とその乾燥操作の平準化に関する検討では、総溶出物試験は、蒸発残留物試験よりも広範の物質を残留させることが可能であること、試験所間の乾燥操作による物質の揮散の程度を平準化する効果を有することを確認した。総溶出物試験の性能評価では、20試験所による試験室間共同実験を行い、その性能を検証した。その結果、蒸発残留物試験と同等以上の性能を有することを確認した。総溶出物試験による市販製品の実態調査では、市販製品の大部分が0.10 mg/cm2を満たしており、合成樹脂製の器具・容器包装に総溶出物量の規格を導入しても大きな問題は生じないと考えられた。紙および竹製ストローからの金属類の溶出量の測定では、すべての紙製および竹製ストローからAl、P、Mn、FeおよびZnが移行することが確認され、一部のストローでは、Cr、Ni、Cu、AsおよびPbの移行も確認された。飲料へ移行する金属類についてリスクを検証したところ、AlおよびPbのばく露量は、やや高いと推察された。ポリ塩化ビニル製のおもちゃから検出された未知可塑剤に関する調査では、過去の可塑剤使用実態調査で検出された3種の未知可塑剤の同定を行った。その結果、3種のうち最も含量の多かった未知可塑剤はDPHPであると同定し、他の2種の未知可塑剤はフタル酸(4-メチル-2-プロピルヘキシル)(2-プロピルヘプチル)およびフタル酸ビス(4-メチル-2-プロピルヘキシル)であると推定した。
器具・容器包装の原材料の安全性評価に関する研究では、紙の添加剤として使用される313物質についてQSAR解析を実施した。その結果、陽性の懸念があったものが37物質存在した。これらについては情報収集や必要であれば追加の試験などを行い、さらに安全性の確認を行う必要があると考えられた。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質(NIAS)の探索等の6課題を実施した。合成樹脂製器具・容器包装に含有されるNIASの探索では、合成樹脂製器具・容器包装に含まれるNIASに関するレビュー41報の内容をまとめた。昨年度分と合わせると、調査論文は82報となり、収載した情報はのべ3345化合物となった。総溶出物試験とその乾燥操作の平準化に関する検討では、総溶出物試験は、蒸発残留物試験よりも広範の物質を残留させることが可能であること、試験所間の乾燥操作による物質の揮散の程度を平準化する効果を有することを確認した。総溶出物試験の性能評価では、20試験所による試験室間共同実験を行い、その性能を検証した。その結果、蒸発残留物試験と同等以上の性能を有することを確認した。総溶出物試験による市販製品の実態調査では、市販製品の大部分が0.10 mg/cm2を満たしており、合成樹脂製の器具・容器包装に総溶出物量の規格を導入しても大きな問題は生じないと考えられた。紙および竹製ストローからの金属類の溶出量の測定では、すべての紙製および竹製ストローからAl、P、Mn、FeおよびZnが移行することが確認され、一部のストローでは、Cr、Ni、Cu、AsおよびPbの移行も確認された。飲料へ移行する金属類についてリスクを検証したところ、AlおよびPbのばく露量は、やや高いと推察された。ポリ塩化ビニル製のおもちゃから検出された未知可塑剤に関する調査では、過去の可塑剤使用実態調査で検出された3種の未知可塑剤の同定を行った。その結果、3種のうち最も含量の多かった未知可塑剤はDPHPであると同定し、他の2種の未知可塑剤はフタル酸(4-メチル-2-プロピルヘキシル)(2-プロピルヘプチル)およびフタル酸ビス(4-メチル-2-プロピルヘキシル)であると推定した。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。
公開日・更新日
公開日
2024-11-12
更新日
-