文献情報
文献番号
202323008A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模事業者等におけるHACCPの検証に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA1008
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
五十君 静信(東京農業大学 応用生物科学部)
研究分担者(所属機関)
- 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第二室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
12,757,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成30年公布された食品衛生法改正により、食品を取扱う事業者にHACCPの導入が制度化された。本研究班は小規模事業者等が制度の運用を継続できるよう、手引書の作成や見直しにおける必要な科学的知見の収集、提供等を行うとともに、活用可能な検証手法を提供すること、並びに制度化による効果を分析・評価するための検証手法を開発することを目的とした。
研究方法
食品業種毎(食品製造業等)における手引書作成の支援では、業界団体が手引書案を作成するに当たり、科学的な観点から、手引書案の実行性について検証を行い専門家としての助言や作業の支援を行った。具体的な研究として、(1) カット野菜の芽胞形成菌等の汚染実態調査と衛生指標の考察、(2) フローズンチルド管理におけるListeria monocytogenesの増殖挙動、(3) 耐塩性細菌によるヒスタミン合成の制御に関する研究を行った。また、(4)公共および民間データの比較に基づく食品への異物混入被害状況の把握、(5)海外における小規模事業者のHACCP制度の検証手法の活用方法を含む弾力的運用状況についてオーストラリアの小規模施設におけるHACCPや食品衛生管理に係る制度の運用状況について調査、分析・評価を行った。
結果と考察
(1) カット野菜の芽胞形成菌等の汚染実態調査と衛生指標の考察では、市販品の一般生菌数、腸内細菌科菌群、芽胞形成菌などの実態掌握を行い、何を対象として衛生管理するのが適切かを考察した。
(2) フローズンチルド管理におけるListeria monocytogenesの増殖挙動を検討し、スモークサーモンでは、培地を用いた増殖挙動から消費期限の推定は適当でなく、製品での増殖挙動を調べる必要があることを明らかにした。
(3) 耐塩性細菌によるヒスタミン合成の制御に関する研究では、魚のぬか漬け(へしこ等)における高濃度のヒスタミン産生は耐塩性乳酸菌Tetragenococcus halophilusの関与のほかにも関与する可能性のある菌を示した。
(4) 公共および民間データの比較に基づく食品への異物混入被害状況の把握を試みた。自治体および民間機関から提供された食品への異物混入事例の相互比較解析から、異物混入被害に関わる異なる集計システムの相違点・類似点が把握できた。また、全国における食品への異物混入被害実態を把握するためには、複数の集計システムが必要であること、および分類基準の統一もしくは再集計可能な分類基準の追加が必要であることが再確認された。
(5)オーストラリアの小規模施設におけるHACCPや食品衛生管理に係る制度の運用状況について調査、分析・評価を行った。NSW州では小規模事業者においてHACCPの考え方に基づくリスクベースの衛生管理で監視指導が実施されており、予告なしの定期的な監視指導の中で食品の中心温度等の測定数値等の科学的根拠に基づきリスクを適宜説明し、その対策方法を指導するという指導方法を取っていた。定期的な監視指導および違反時の追加監査等の継続的な指導は事業者の理解を深めるために有効であると考えられた。
(2) フローズンチルド管理におけるListeria monocytogenesの増殖挙動を検討し、スモークサーモンでは、培地を用いた増殖挙動から消費期限の推定は適当でなく、製品での増殖挙動を調べる必要があることを明らかにした。
(3) 耐塩性細菌によるヒスタミン合成の制御に関する研究では、魚のぬか漬け(へしこ等)における高濃度のヒスタミン産生は耐塩性乳酸菌Tetragenococcus halophilusの関与のほかにも関与する可能性のある菌を示した。
(4) 公共および民間データの比較に基づく食品への異物混入被害状況の把握を試みた。自治体および民間機関から提供された食品への異物混入事例の相互比較解析から、異物混入被害に関わる異なる集計システムの相違点・類似点が把握できた。また、全国における食品への異物混入被害実態を把握するためには、複数の集計システムが必要であること、および分類基準の統一もしくは再集計可能な分類基準の追加が必要であることが再確認された。
(5)オーストラリアの小規模施設におけるHACCPや食品衛生管理に係る制度の運用状況について調査、分析・評価を行った。NSW州では小規模事業者においてHACCPの考え方に基づくリスクベースの衛生管理で監視指導が実施されており、予告なしの定期的な監視指導の中で食品の中心温度等の測定数値等の科学的根拠に基づきリスクを適宜説明し、その対策方法を指導するという指導方法を取っていた。定期的な監視指導および違反時の追加監査等の継続的な指導は事業者の理解を深めるために有効であると考えられた。
結論
小規模事業者等がHACCP制度の導入・運用が可能で、事業を継続できるよう、事業者毎の手引書の作成や見直しにおける必要な科学的知見の収集、提供等を行うとともに、活用可能な検証手法を提供することを検討した。検討項目に加え、海外の実態調査結果の考察などから、HACCPを実施するうえで有用と思われる知見を提供することができた。
公開日・更新日
公開日
2025-01-17
更新日
2025-01-18