文献情報
文献番号
200936069A
報告書区分
総括
研究課題名
有棘赤血球舞踏病の疫学調査と診断法の確立および分子病態の解明
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐野 輝(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 上野 修一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
- 中村 雅之(鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
有棘赤血球舞踏病(ChAc)は舞踏運動様不随運動、多彩な精神症状および有棘赤血球症を呈する稀な遺伝性神経変性疾患である。責任遺伝子であるVPS13Aの変異の種類や分布などの詳細は明らかでなく、遺伝子診断のついた症例の神経病理の報告は殆どない。ChAc分子診断確立とともに変異の頻度などを明らかにし、ChAcの遺伝子診断確定した症例の神経病理所見を明らかにする。さらに、有棘赤血球を伴う舞踏病について疫学調査を行い本邦における疾患頻度を調査する
研究方法
多施設におけるChAc疑い症例についてコピー数バリアント(CNV)解析を含めた遺伝子解析を行い、ウエスタンブロット法により遺伝子産物choreinの検出解析を行った。ChAcの分子診断が確定した上位運動ニューロン障害を呈した症例の剖検脳について神経病理学的解析を行った。また、全国の大学病院精神科、精神科病院協会に所属する日本精神神経学会研修指定病院、自治体立精神科病院、日本神経学会専門医認定施設の計1375施設に対しアンケート調査を行った。
結果と考察
遺伝子解析の結果2種類のCNVを含めた23種類の新規疾患変異を見出した。ホモ接合性に変異を有したものが55.9%、複合へテロ接合性に変異を有したものが38.2%であった。ヘテロ接合性に一つしか変異が見出せなかったものが5.8%であったがchoreinは検出されなかったので分子診断的には常染色体劣性遺伝性のChAcであると考えられchoreinの検出解析は分子的診断の補助として有用であると考えられた。脳病理ではグリオーシスを伴う神経脱落変性を尾状核、被殻や黒質などに強く認め、運動皮質や錐体路にも変性を来していたが他の運動ニューロン疾患でみられる封入体などは認めず、新規の運動ニューロンの変性機構の存在が示唆された。疫学調査では回収率は37%であった。一年間に「有棘赤血球を伴う舞踏病の診断基準」の臨床所見を有するが確定診断には至っていないものは7症例あり、遺伝子診断によりChAcの確定診断を受けたものが8症例存在することが明らかとなった。
結論
ChAcのVPS13遺伝子変異分布は多彩でありCNVも含まれていた。またChorein検出解析は遺伝子診断の補助として有用であった。上位運動ニューロン変性を伴うChAcの剖検では新規運動ニューロン変性機構が示唆された。疫学調査に関してはさらなる解析が必要である。
公開日・更新日
公開日
2010-06-04
更新日
-