食品中の動物用医薬品等の新たな評価管理手法の導入のための研究

文献情報

文献番号
202323007A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の動物用医薬品等の新たな評価管理手法の導入のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,656,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中に含まれる化学物質の規格基準設定には、国際整合性を踏まえた評価管理が重要である。残留農薬については、短期間暴露による健康影響が1997年頃より欧州で議論されてきた。その基準となる急性参照用量(ARfD)について、2005年にFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)よりガイダンスが公表された。今後、日本でも動物用医薬品の評価管理においても、ARfDを含めた評価方法の確立が必要であるが、海外でも動物用医薬品にARfDが設定された例は限定的であり、継続的な国際状況の情報収集が必要である。本研究では、国際機関及び諸外国等における評価手法及び評価実績の情報収集を実施してARfDの算出方法等を提案するとともに、日本の畜水産物の食品摂取量を調査し、国際整合性のとれたリスク評価・暴露評価に資する評価手法の提案を目指すことを目的とする。また日本の規格基準が決まっていない汚染物について海外情報を収集する。
研究方法
国際機関及び諸外国等における評価手法及び評価実績の情報収集として、JECFA及びFDAにおけるARfD設定及び水産動物の動物用医薬品の動向について情報収集を行った。さらに、豪州・ニュージーランド食品基準機関に加えて、オーストラリア、ノルウェー及びカナダの動向についても情報収集を行った。国際機関及び諸外国等における動物用医薬品等の短期摂取量推計に関わる手法及び評価実績の最新情報を収集し、国際整合性、時代に即した急性参照用量(Acute Reference Dose; ARfD)の算出方法等の検討を行った。また海外における有害元素の規制の動向を収集した。
結果と考察
CODEXでは、サケやマスを対象にした動物用医薬品に最大残留基準(MRL)が設定される品目が9件と限定的ながら、2015年以降増加していると考えられた。FDAでは、動物用医薬品へのARfD付与はほとんどないが、水産動物用医薬品も対象となる「マイナー用途およびマイナー種に対する新しい動物用医薬品の承認を支援するための特別な考慮点、インセンティブ、およびプログラム」の承認申請に関するガイダンスの改定が終了し、2023年12月に公表された。豪州、ノルウェー及びカナダにおいて、動物用医薬品のARfDに関する情報は乏しいが、水産動物を対象とする動物用医薬品に関しては、オーストラリアでは多様な対象に対する医薬品や化学物質の残留が調査されており、ノルウェーでは主にサケ類を対象に医薬品やワクチンが承認されているが残留基準の記載は不明であった。カナダでは、サケ9剤とロブスター1剤についてMRLが設定されていた。
結論
日本においては、ARfDが設定されている動物用医薬品は、農薬としての使用も認可されている9品目に限られている。そのうちの1品目は農薬として2003年にJMPRで評価されARfDが付与されている。他の8品目は、JECFAでは動物用医薬品としては評価されていない。一方、JECFA及びFDAにおいてARfDが設定されている動物用医薬品は、それぞれ11成分及び1品目であった。また、水産動物を対象とした動物用医薬品の使用に関しては、日本では食品安全委員会において約30品目について評価しており、対象もサケなどのニシン目に加えて、スズキ目のブリ、マダイ及びヒラメ、フグなど多岐にわたっている。一方、JECFAの議論を経てCODEXにおいてMRLが設定されている水産動物を対象とした動物用医薬品は9品目であり、対象もほとんどがsalmon及びtroutと限定的である。これらの畜水産物の動物用医薬品等の安全性評価の相違については、豪州、北欧、カナダなどの情報収集も継続し、わが国との整合性を確認していく必要があると考えられた。最新の全国食事調査データを用いて、養殖の「大西洋サケ」を原材料にした食品からの残留農薬等の経口暴露量を推計する方法を用いて推計した結果、国内で流通する養殖大西洋サケからの、2017年から2018年に検出された残留農薬等の経口暴露量は、人への急性影響を考慮して設定されたARfDと比較して、健康に影響を及ぼすレベルにないことが示唆された。ヒ素、カドミウム、水銀、鉛の基準値に関する海外情報の収集を行った。有害元素によって、基準値が設定されている食品は異なり、ヒ素は3~38食品、カドミウムは0~66食品、水銀は1~16食品、鉛は5~78食品に基準値が設定されていた。各国の基準値の内、最も基準値が設定されている食品項目数が少なかったのは米国の9食品であり、最も多かったのは中国の156食品であった。

公開日・更新日

公開日
2025-01-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202323007B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の動物用医薬品等の新たな評価管理手法の導入のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、国際機関及び諸外国等における評価手法及び評価実績の情報収集を実施して急性参照用量(ARfD)の算出方法等を提案するとともに、日本の畜水産物の食品摂取量を調査し、国際整合性のとれたリスク評価・暴露評価に資する評価手法の提案を目指すことを目的とする。また日本の規格基準が決まっていない汚染物について海外情報を収集する。
研究方法
国際機関及び諸外国等における評価手法及び評価実績の情報収集として、JECFA及びFDAにおけるARfD設定状況及び水産動物用医薬品の規制状況について、それぞれのホームページなどから昨年度からの更新情報を収集した。さらに、豪州・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)に加えて、オーストラリア、ノルウェー及びカナダの動向についても情報収集を行った。国際機関及び諸外国等における動物用医薬品等の短期摂取量推計に関わる手法及び評価実績の最新情報を収集し、国際整合性、時代に即した急性参照用量(Acute Reference Dose; ARfD)の算出方法等を提案することを検討した
結果と考察
JECFA では、2015 年以降2024 年までに、17品目18成分の動物用医薬品について議論され、Ivermectin等 の11成分にはARfD が設定され、Teflubenzuron等 の7 成分はARfD の設定は不要とされた。FDAにおいては、2024年3月時点の調査では、ARfDを明示している動物用医薬品は、Ceftiofurの1剤のみであった。オーストラリア農薬・動物用医薬品局(APVMA)から発出されている、農薬及び動物用医薬品のARfDの情報においては、検討された274品目中、123品目についてARfDが付与されていたが、大部分は農薬と考えられた。国際的な短期摂取量の推計モデルであるGEADEに基づいて、畜水産物の一日最大摂取量(97.5%タイル値)から推計される動物用医薬品等の短期摂取量への影響を解析した。短期摂取量の推計に供した畜水産物等の97.5%タイル値は、JECFAの評価書、欧州食品安全機関(EFSA)の公開データ、及び2005~2007年度に行われた日本の全国食事調査データを参照し、日本の食品の摂取量データは、JECFAの食品分類に基づいて、25種類の食品に分解して集計した。JECFAやEFSAで用いられる食品の摂取量データは、日本の食品の摂取量データと比較し鶏皮/皮下脂肪以外は過大な97.5%タイル値が用いられ、短期摂取量が推計されていることが示唆された。日本では食品にヒスタミンの基準値が設定されていないものの、Codex委員会、EU、米国、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドなど多くの国において魚類やその加工品においてヒスタミンの基準値が設定されていた。また、FAO/WHO合同専門家会議では、ヒスタミンの無毒性量と各国の魚・水産加工品の喫食量データを基にして、ヒスタミンの最大許容濃度として200 mg/kgが算出されていた。EUでは多くの動物性食品にDNXsとNDL-PCBsの最大許容濃度が定まっていた。台湾でもEUに準じたDXNsとNDL-PCBsの最大許容濃度が定まっていたが、最大許容濃度が定められている食品区分はEUほど細分化されていなかった。韓国でも食肉についてDXNsの最大許容濃度が設定されており、PCBsについては魚類に最大許容濃度が定まっていた。中国では水産動物食品についてPCBsの最大許容濃度が定まっていた。ヒ素、カドミウム、水銀、鉛の基準値に関する海外情報の収集を行った。
結論
JECFA、FDA、FSANZに加え、豪州、北欧、カナダの動物用医薬品へのARfD設定及び水産動物を対象とした動物用医薬品の動向についても情報収集を行い、日本の状況と比較した。全国食事調査に基づいた食品の消費量データ、加工食品を原材料に分解する逆算係数(Reverse-yield factor; RF)、ならびに加工過程での残留物濃度変化を表す加工係数(Processing factor; PF)を組み合わせて、加工食品を含む食品全体からの残留農薬等の経口暴露量を推計するツールを開発し、厚生労働省が公開している食品中の残留農薬等調査結果より報告された「養殖大西洋サケ」の動物用医薬品の残留濃度データをもとに短期暴露量を推計した。海外のヒスタミン、ダイオキシン類、有害元素に関しての規格基準情報に関して収集した。

公開日・更新日

公開日
2025-01-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202323007C

収支報告書

文献番号
202323007Z