脊髄空洞症の発症素因に関する研究

文献情報

文献番号
200936068A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄空洞症の発症素因に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 秀直(北海道大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飛騨 一利(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 矢部 一郎(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 寺江 聡(北海道大学病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脊髄空洞症は症状も原因も不均一な疾患群からなる。そこで、血液、髄液、DNAなどの生体試料をもとにプロテオミクス解析やDNA多型解析を行い、脊髄空洞症の成因や病態変化の指標となるバイオマーカーや素因遺伝子を探索・同定することを目標とした。
研究方法
 初年度は、研究者の所属する施設に通院加療中の患者を対象として生体試料収集を開始した。提供依頼は口頭と文書で説明し、文書により同意を得た。研究は医の倫理委員会ならびに、自主臨床研究審査委員会の承認を得た。
 質の高い生体試料の収集を進めるには、症例を多数診療している施設に研究参加を依頼し、試料と連結した臨床情報も併せて蓄積する必要がある。そこで、神経変性疾患調査研究班と協同で、空洞症の全国疫学調査を行い、診断基準も再検討した。診断基準については、当研究班の班員で検討を重ねて、神経変性疾患調査研究班に試案を呈示して検討を行った。
結果と考察
 試料収集については、現時点まで空洞症患者26人より提供を受けた。病型別でキアリI型23人、特発性2人、その他1人であった。
 疫学調査については、全国の神経内科、脳神経外科、整形外科および小児科を標榜とする病院から全体の抽出率が20%になるように層化無作為抽出を行い、2,945診療科を対象に一次調査を行った。今回の調査では、画像検査で空洞を確認できたものを空洞症とした。一次調査の回収率は、72.8%、調査期間に脊髄空洞症患者を診療している診療科は418診療科、総患者数は1,192人であった。この数値に基づいた脊髄空洞症の推計患者数は2,511人となった。
結論
 脊髄空洞症は不均一な疾患群なので、生体試料と共に臨床情報も併せて収集・蓄積することが欠かせない。診断基準の改訂は、その基となる。今後は、協力施設を増やして試料収集を継続し、研究基盤を確立したい。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936068C

成果

専門的・学術的観点からの成果
発病素因解明を目的として血液とDNAの収集を開始した。全国疫学調査を行った。第一次調査による推定患者数は腫瘍続発例も含めると2506人、有病率は10万当たり1.96となった。二次調査で重複例を除いた708例の解析では男性42.7%、女性57.3%、調査時年齢38.5±23.5歳、診断時年齢32.7±23.4歳であった。症候性は77.3%、無症候性は22.7%、空洞の分布は延髄6.8%、脊髄93.2%であった。成因はキアリ奇形Ⅰ型48.3%、特発性15.8%、キアリ奇形Ⅱ8.1%の順であった。
臨床的観点からの成果
神経変性疾患調査研究班と共同して脊髄空洞症の診断基準を見直し、改訂した。改訂において考慮した要点は以下の7項目である:1)画像診断所見を重視して空洞の証明とキアリ奇形の判定基準を銘記したこと;2)無症候性例を分類に加えたこと;3)参考所見に分娩時外傷や家族歴などを列記したこと;7)空洞症と関連性の深い奇形の分類に最近の考え方を反映させたこと。改訂した診断基準は、研究班報告書に掲載し、難病情報センターホームページで公開、和文論文として発表した。
ガイドライン等の開発
特記事項無し
その他行政的観点からの成果
改訂した診断基準は空洞形成に至る病態と画像診断の進歩を考慮したものであり、今後の疫学調査研究に活用されることが期待される。
その他のインパクト
該当事項無し

発表件数

原著論文(和文)
1件
寺江 聡,飛騨一利,佐々木秀直:病態を考慮した脊髄空洞症の診断.BRAIN and NERVE 2011; 63(9): 969-977
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
佐久嶋研,他:脊髄空洞症の第一次全国調査.第51回日本神経学会総会,2010年5月19日,名古屋 佐久嶋研,他:脊髄空洞症の第二次全国調査.第52回日本神経学会総会,2011年5月19日,名古屋
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
難病情報センターホームページにおいて、病気の解説(一般利用者向け)、診断・治療指針(医療従事者向け)、FAQ(よく有る質問と回答)欄に、脊髄空洞症に関する事項を掲載した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
寺江 聡,飛騨一利,佐々木秀直
病態を考慮した脊髄空洞症の診断
BRAIN and NERVE , 63 (9) , 969-977  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-