ダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究

文献情報

文献番号
199700677A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 雄二(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤正典(国立衛研環境衛生化学部長)
  • 井上達(国立衛研毒性部長)
  • 大野泰雄(国立衛研薬理部長)
  • 川島邦夫(国立衛研大阪支所生物試験部長)
  • 澤田純一(国立衛研機能生化学部長)
  • 祖父尼俊雄(国立衛研変異遺伝部長)
  • 高橋道人(国立衛研病理部長)
  • 中舘正弘(国立衛研総合評価研究室長)
  • 山口直人(国立がんセンター研究所がん情報研究部長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン及びポリ塩化ジベンゾフラン)は、廃棄物の熱を伴う処理過程や有機塩素化合物の生産過程等で生成する非意図的な化学物質であるが、発生源が多岐にわたることから、その環境汚染が大きな問題となっている。また、ダイオキシンの毒性は、動物実験で、動物種によっては50%致死量(LD50)が1μg/kg未満であるという強い毒性を示し、その他、発がん性、生殖毒性、免疫毒性等広範囲にわたる毒性影響が報告されている他、環境中の生物や人体中では脂肪組織に蓄積することが報告されており、その汚染が先進国を中心として広範囲にわたっていることが知られている。また、ダイオキシン類に構造的に類似しているPCB(コプラナーPCB)についても同様の毒性が報告されている。このような状況下、諸外国における毒性等の情報を収集、整理し、ダイオキシン類、コプラナーPCBの各毒性項目のリスク評価を実施することを目的としている。
研究方法
平成7年度にあってはダイオキシン類について、平成8年度にあってはコプラナーPCBについて、各国政府又は国際機関等で既に評価がなされているレビュー等をもとに評価を実施してきたところであるが、平成9年度にあっては、これらの結果をとりまとめるとともに、更に平成7年度以降の報告をも参考にして毒性について評価をすることとし、その中で重要な文献については、適宜、1次資料にあたって調査研究を実施した。
結果と考察
(1) ダイオキシン類については、平成8年6月(中間報告)の後、新規に報告があったのは、内分泌かく乱影響化学物質の1つであるダイオキシン類としての報告であり、内分泌系、免疫系を中心にした毒性の報告であった。
生殖発生毒性試験の結果は、平成9年度厚生科学特別研究「子宮内膜症等に及ぼすダイオキシンの影響に関する研究」の成果を利用して判断することとした。
人の疫学については、中間報告では軟部組織肉腫をもとに判断をしたが、1997年2月に国際がん研究機関(IARC)が全がんの頻度に基づきダイオキシンをクラス1と判定したことから、その結果も評価の参考にした。
(2) コプラナーPCBについて、ダイオキシン類と同様に文献を収集し、毒性の程度を評価することとしたが、ダイオキシン類ほど、毒性データは十分になく、評価が可能という程度ではなかった。毒性の程度にあっては、2,3,7,8-TCDDの毒性を1とした相対比較(毒性等価係数;TEF)ことが多いが、コプラナーPCBの場合、これを示すデータは不足していた。
(3) これら毒性の評価の他、ダイオキシン類及びコプラナーPCBに関する規制値を調査した。
結論
 ダイオキシン類の毒性については、現時点では、アカゲザルを用いて子宮内膜症を発症したとする報告を採用することはできず、NOAELは生殖発生毒性試験、慢性毒性試験等の結果から総合的に判断して1ng/kg bw/dayとし、これに100の不確実係数を適用して、当面のTDIを、TCDDとして10pg/kg bw/dayとした中間報告は支持できる。しかし、TCDDを中心としたダイオキシン類についての既存の主要なデータをもとに行われたものであり、現在、ダイオキシン類に関する研究が進行中であることから、今後、必要に応じた改訂作業が実施されることが適切である。
コプラナーPCBの毒性については、ダイオキシン類と同様な毒性が発現されているものの、そのリスク評価を実施するには十分なデータがあるとはいえない。
更に、これらの化学物質は、毒性の程度を相対的にあらわすこととしているが、ダイオキシン類についてはTEFが開発され、その妥当性は、暫定的に国際的に認識されているが、コプラナーPCBには、各国が適切と判断するものもないことから、現段階で十分に評価に資するものとはいえない。
以上の結果より、ダイオキシン類については、現段階での評価は可能であるものの、コプラナーPCBについては今後更にデータを収集する必要があり、いずれにしても更なる調査研究を継続することが必要である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)