文献情報
文献番号
202322016A
報告書区分
総括
研究課題名
フィットファクタの支配因子探索による呼吸用保護具の適切な選択と使用のための簡易的チェック手法の検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
東 秀憲(産業医科大学 産業生態科学研究所 労働衛生工学)
研究分担者(所属機関)
- 大藪 貴子(産業医科大学 産業生態科学研究所 労働衛生工学)
- 西田 千夏(産業医科大学 産業生態科学研究所 労働衛生工学)
- 榎原 毅(産業医科大学 産業生態科学研究所 人間工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,107,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、呼吸用保護具の選択および適正使用のための簡便で日常的なチェック手法の確立を目的とし、①フィットファクタと保護具および顔サイズの相関、②フィットテストにおいて重要な操作等の検討および③簡便で日常的なチェック法の検討を実施する。
具体的には、以下の項目を実施する。
1)呼吸用保護具のサイズおよび着用者の顔の寸法の計測
2)既存のシールチェックおよびフィットテスト
3)フィットファクタと保護具および顔サイズの相関解析
4)簡便で日常的なチェック法と定量的評価法の検討
1~4)を総合的に検討することで、現場で日常的に持続可能な定量的チェックの方法及び評価基準等について提言するとともに、法改正により今後標準となると思われる凝縮核計数法(CNC)に光散乱粒子計数法を組み合わせた短縮定量的フィットテストを簡便化した手法等についての提言をめざす。
具体的には、以下の項目を実施する。
1)呼吸用保護具のサイズおよび着用者の顔の寸法の計測
2)既存のシールチェックおよびフィットテスト
3)フィットファクタと保護具および顔サイズの相関解析
4)簡便で日常的なチェック法と定量的評価法の検討
1~4)を総合的に検討することで、現場で日常的に持続可能な定量的チェックの方法及び評価基準等について提言するとともに、法改正により今後標準となると思われる凝縮核計数法(CNC)に光散乱粒子計数法を組み合わせた短縮定量的フィットテストを簡便化した手法等についての提言をめざす。
研究方法
初年度は、今後急速に普及されるであろう短縮定量的フィットテストを中心に、様々な呼吸用保護具の種類と作業者の顔の形状とフィットファクタとの関係を得ることにより、以下の手順で呼吸用保護具の選定の際の目安となる顔の形状に適した保護具の選定方法を検討した。
1)呼吸用保護具のサイズおよび着用者の顔の寸法の計測
使用する保護具を選定し、保護具のサイズとして面体の縦、横の幅と高さ(深さ)等を測定し、保護具のパラメータとした。
一方、着用者の顔の寸法として、唇の幅、鼻根からおとがいの長さ、顔の横幅(左右の耳の付け根)、鼻の高さ、顎下の長さ等を計測し、顔の形状因子とした。さらに、スケールとともに写真撮影を実施するとともに、3Dカメラでの撮影も同時に行った。
2)既存のシールチェックおよびフィットテスト
実験対象者に選定した保護具を適切な手順に従って着用してもらい、シールチェックにより簡易的に漏れのないことを確認してもらった。その後、凝縮核計数法に光散乱粒子計数法を組み合わせたフィットテスタ(AccuFIT9000PRO、MT-11D、PORTACOUNT)を用いてJIS T 8150:2021に示された手順に従い、短縮定量的フィットテストを実施し、フィットファクタを測定した。
フィットファクタはフィットテスタにより異なる条件下で計測される呼吸用保護具内外の粒子濃度の比で定義される。
3)フィットファクタと保護具および顔サイズの相関解析
各研究対象者に対して、装着した呼吸用保護具ごとに得られたフィットファクタを、各呼吸用保護具の粒子捕捉メカニズムやレベル、サイズのパラメータ(縦、横幅および高さなど)、研究対象者の顔の形状などの11個のパラメータとの関係を解析ソフトにより重回帰分析(多変量解析)することで、これらパラメータの関数として定式化した。一方、顔画像を用いた機械学習によるフィットファクタの推定も試みた。
1)呼吸用保護具のサイズおよび着用者の顔の寸法の計測
使用する保護具を選定し、保護具のサイズとして面体の縦、横の幅と高さ(深さ)等を測定し、保護具のパラメータとした。
一方、着用者の顔の寸法として、唇の幅、鼻根からおとがいの長さ、顔の横幅(左右の耳の付け根)、鼻の高さ、顎下の長さ等を計測し、顔の形状因子とした。さらに、スケールとともに写真撮影を実施するとともに、3Dカメラでの撮影も同時に行った。
2)既存のシールチェックおよびフィットテスト
実験対象者に選定した保護具を適切な手順に従って着用してもらい、シールチェックにより簡易的に漏れのないことを確認してもらった。その後、凝縮核計数法に光散乱粒子計数法を組み合わせたフィットテスタ(AccuFIT9000PRO、MT-11D、PORTACOUNT)を用いてJIS T 8150:2021に示された手順に従い、短縮定量的フィットテストを実施し、フィットファクタを測定した。
フィットファクタはフィットテスタにより異なる条件下で計測される呼吸用保護具内外の粒子濃度の比で定義される。
3)フィットファクタと保護具および顔サイズの相関解析
各研究対象者に対して、装着した呼吸用保護具ごとに得られたフィットファクタを、各呼吸用保護具の粒子捕捉メカニズムやレベル、サイズのパラメータ(縦、横幅および高さなど)、研究対象者の顔の形状などの11個のパラメータとの関係を解析ソフトにより重回帰分析(多変量解析)することで、これらパラメータの関数として定式化した。一方、顔画像を用いた機械学習によるフィットファクタの推定も試みた。
結果と考察
顔サイズパラメータのうちフィットファクタに大きな影響を与えるパラメータに関する情報を抽出した回帰式から呼吸用保護具のフィットテストの結果を推定し、実際のテスト結果と比較した。一方、正面画像による顔認証機械学習によるフィットファクタの推定についても検討し、作業者に適した呼吸用保護具の選定法について検討した。
回帰式によるフィットテストの合否正解率は学習データで75%以上、未学習データで45%以上であり、未学習データの不正解は概ね2種類の保護具に偏っていた。この原因として、この2種類の保護具はフィットテストの合格率自体が比較的低く、フィットファクタとパラメータの間の相関が弱いのに対し、他の保護具のフィットファクタとパラメータの間には主に比較的強い正の相関が示されていたことによる。一方、顔認証によるフィットテストの合否正解率は学習データで90%以上、未学習データで55%以上であり、未学習データの不正解はほぼすべての種類の保護具に渡っていたが、全体で8割程度を保っていた 。この理由としては、顔認証による機械学習で、比較的少なく偏った分布の学習データを用いたために、学習できていない範囲のデータのフィットファクタの推定精度が全体的に悪くなったためと考えられる。
回帰式によるフィットテストの合否正解率は学習データで75%以上、未学習データで45%以上であり、未学習データの不正解は概ね2種類の保護具に偏っていた。この原因として、この2種類の保護具はフィットテストの合格率自体が比較的低く、フィットファクタとパラメータの間の相関が弱いのに対し、他の保護具のフィットファクタとパラメータの間には主に比較的強い正の相関が示されていたことによる。一方、顔認証によるフィットテストの合否正解率は学習データで90%以上、未学習データで55%以上であり、未学習データの不正解はほぼすべての種類の保護具に渡っていたが、全体で8割程度を保っていた 。この理由としては、顔認証による機械学習で、比較的少なく偏った分布の学習データを用いたために、学習できていない範囲のデータのフィットファクタの推定精度が全体的に悪くなったためと考えられる。
結論
複数メーカーのフィットテスタおよび呼吸用保護具を用いて短縮定量的フィットテストを実施し、得られたフィットファクタと対象者の顔サイズパラメータとの相関関係について検討した。今後、対象者の増加に伴い、学習データの再検討を行い、分布等を考慮して学習データを選定することで、いずれのモデルにおいてもフィットファクタの推定精度の向上が見込まれ、作業者に適した呼吸用保護具の選定法としての可能性を検討できる。
公開日・更新日
公開日
2025-01-08
更新日
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