心身機能のエイジングに着目した高齢期の就労支援に関する研究

文献情報

文献番号
202322015A
報告書区分
総括
研究課題名
心身機能のエイジングに着目した高齢期の就労支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大塚 礼(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所 老化疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 八谷 寛(名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学)
  • 下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
  • 西田 裕紀子(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老化疫学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,545,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 少子高齢社会では高齢者が生きがいをもって安全に就労継続し、経済社会の担い手となることが期待されている。我が国の高齢者は欧米と比して就労意欲が高く、就労高齢者数は上昇し続けている。高齢者は就労上の経験や技術の成熟度の点で優れる一方、心身機能低下に伴いフレイル、サルコペニア、認知機能低下などの老年症候群が生じやすく、高齢者就労支援に対する新たな対策が求められている。
 本研究では就労状況、慢性疾患や心血管イベントを含む身体・精神機能、感覚機能などの老化関連指標を多角的な視点から捉えることが可能な縦断疫学調査(一般住民コホート・職域コホート)データを用い、高齢期の就労継続、就労意欲に関わる危険因子・保護因子を明らかにし、就労にあたって事業者が配慮すべき点や高齢期の就労継続を促進する労働衛生上の支援策を提案する。
研究方法
 初年度は一般住民コホートと職域コホートでの調査に加え、文献レビュー、Web調査、事業者・労働者へのインタビュー等を通し、高齢期の就労上の課題を抽出するとともに就労継続に影響する健康指標を明らかにする研究を進めた。
 一般住民コホート「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」は、国立長寿医療研究センター内の長期縦断調査センターにおいて週4日、2-5名/日の調査を実施し、年度内に約400名の調査を完了した。中高齢者の就労意向に関する調査を実施するとともに、既存データも活用し、就労継続に関する要因を解析した。
 職域コホートでは、退職後の就労状況に関する調査の集計を行い(2,280名)、就労の有無と現病歴、抑うつ傾向、高齢者のJST版活動能力指標、在職時の心理的ストレスや健診成績等との関連性の検討を行った。
 この他、高齢期の就労意向に関するWeb調査(就業中の中年232名、高年55名)の集計を行い、世代別に現在の働き方及び高齢期の就労意向と主観的健康感との関連を検討した。
結果と考察
 Web調査では、中高年就労者では、働けるうちはいつまでも働きたいと考える者が多いことや、現状の働き方が個人の希望に沿っていることが高齢期の就労継続には重要であることがあきらかとなった。
 職域コホートの調査では糖尿病の既往者では、高血圧症や脂質異常症と異なり、就労継続率が低いことが示された。一般住民コホートの調査では、疲労感が非就労と関連したが、フレイルの有無は就労率に影響を与えず、働きたいという意志が強い高齢者は、加齢に伴う軽度な身体機能障害と関係なく、就業していた。これらのことから、中年期の就労満足感を高めることや、糖尿病の予防・改善が就労継続の保護因子である可能性、高齢者の就労促進に際しては、身体・精神状況や認知機能、基礎疾患への対応についての配慮に加え、疲労感の改善や疲労感に対する配慮の重要性が示唆された。
 一方で、一般住民コホートの調査において、就労希望があっても、勤務条件(仕事内容、や勤務場所へのアクセスなど)や家族からの支援が受けにくいことにより就労が妨げられている事例も認められた。
結論
 就労継続の保護因子として、中年期の就労満足感を高めることや、糖尿病の予防・改善が重要であること、高齢者の就労促進に際しては、身体・精神状況や認知機能、基礎疾患への対応についての配慮に加え、疲労感の改善や疲労感に対する配慮の重要性が示唆された。高齢者の就労に対する様々なニーズの把握のみならず、事業者のニーズの把握、高齢期の就労に対する社会の理解の促進や、若中年期からの健康増進対策についても今後検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202322015Z