職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202322014A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 小田上 公法(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学)
  • 五十嵐 侑(産業医科大学 災害産業保健センター)
  • 原田 有理沙(産業医科大学 医学部 両立支援科学)
  • 大河原 眞(産業医科大学 産業生態科学研究所環境疫学研究室)
  • 金城 泰幸(産業医科大学 医学部産科婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
持続可能な開発目標では、ジェンダー平等の実現が謳われているが、世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダーギャップ指数では、教育や健康面での国際比較では高得点であるものの、経済参画のスコアは121位と就労上の不利益な状況が継続的に続いておりジェンダーギャップの解消が必要な状況である。また、我が国では急速な少子高齢化を受けて、生産年齢人口の減少の一途を続けており、女性を含めたより多くの国民が経済活動に参加する「一億総活躍」を体現する必要性がある。より多くの女性の社会参加を促すためには就労女性の活動基盤となる健康面において、女性特有の事情(ライフイベントである妊娠・出産および更年期症状・月経困難症、不妊など)と仕事との両立しやすい環境整備が求められる。
研究方法
5つの分担研究を実践した。
結果と考察
分担研究1:英国では、月経や更年期の健康に関する規格が発行されている。英国では職場調整の進め方や実施の在り方が、日本の治療と仕事の両立支援の進め方と類似している。英国の職場調整は本人と管理者との話し合いが重要視されFitnoteを用いる記載がなされていなかった。擁護者の位置づけがあり、自助努力や職場でのオープンな議論が重視される点が異なった
分担研究2:産業保健看護職を対象に事前ヒアリングを行いセミナー開催やがん検診の利便性向上がうまくいっている一方、経営層の興味欠如や軋轢の可能性、男性優位の職場構造、女性の非正規雇用などの課題が指摘された。他の部署の関与不足や上司への説得材料の不足も課題である。事業場の産業保健職は他部門との協力が求められる。
分担研究3:女性労働者モニターを対象とした質問紙調査を実施し、6,160名の女性労働者から回答を得た。不正回答者534名を除外し、5,626名を解析対象とした。月経困難症や更年期障害などの女性の健康に関する支援を検討する際には、病名や問診票の総得点のみに基づくのではなく、個別の症状と支障のある作業状況との組み合わせを考慮することが望ましいとされた。女性の健康や不妊治療に関する相談先として、医療機関やかかりつけ医、同性の同僚・上司が多く、相談経験がある者の満足度も高かったが、普段から仕事上の関係がある者には相談しにくい状況が推察された。医療機関への受診の啓発や、相談しやすい相談先の確保、相談先となりうる者への教育・研修が重要であると考えられた。本研究は女性の健康と就労に関する実態と課題に関する基礎的資料となる。
分担研究4:次年度の分担研究として労働者調査を行うための質問文2問について、先行的に収集している予備調査としてのコホートデータよりPOS; Perceived Organizational Supportの重要性に着目し4問の質問項目として、Q1. 女性特有の健康関連課題に対する職場の施策についてお伺いします。Q1-1. 現在の職場で実際に取り組まれている施策を、選択肢から全て選んでください。Q1-2.現在の職場で、今後も継続してまたは新規に取り組んでほしい施策を、希望する順位の高いものから3つ選んでください。Q2.「あなたには現在、次のような症状や状況がありますか」。Q3.「あなたがお仕事をする上で、次のようなことでどの程度困っていますか」。Q4.「医療機関への受診・治療の状況についてお伺いします(オンライン受診/処方を含む)」。を開発しコホートデータに追加した。次年度は収集されたデータをもとに分析を行う。
分担研究5:臨床現場で従事する産婦人科医9名を対象に、疾患の選択と当該疾患の患者から得られる主訴を抽出した。対象とする産婦人科疾患は、悪性腫瘍、子宮筋腫、子宮内膜症、月経前症候群・月経前不快気分障害、更年期障害とした。症状分類は、痛み、月経血量・不正出血、気分障害、体重や体の変化、家庭生活(食事、睡眠、性交渉)、職業生活(アブセンティーズム)とし、就労世代の女性がセルフチェックできる質問項目の原案を症状分類別に作成した。
結論
分担研究により、海外での女性健康管理の実践状況の整理、我が国の事業場担当者の実践状況の調査、労働者における健康影響の調査、セルフチェックツールの在り方について整理された。これらの情報を踏まえたうえで女性健康管理の職域でのガイド案として、セルフケア支援(病態理解・生活改善・受診推進・申出の推奨)と職場対応(スティグマや羞恥心の払拭・申出のプロセス・法令順守・管理職教育・アドボケート・配慮例の作成・保健職の教育・オープンな議論・女性参画)について整理された。

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202322014Z