網膜変性疾患の多施設遺伝子診断システムの構築

文献情報

文献番号
200936061A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜変性疾患の多施設遺伝子診断システムの構築
課題番号
H21-難治・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 政代(独立行政法人理化学研究所 網膜再生医療研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 分子細胞生物学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
網膜色素変性は未だ確立された治療法はないが、原因遺伝子変異の検出は将来の遺伝子治療また、各種治療薬の効果や光障害の影響を考えるためにも非常に重要である。現在、日本では網膜色素変性の網羅的遺伝子診断を行っているのは申請者の施設のみであり、当該施設と分担研究者、連携研究者の施設間で倫理委員会承認のもと遺伝子検索及び結果の通知など試行ずみであることから網膜色素変性およびその類縁疾患の遺伝子診断を集約的に行う前段階の準備は整ったと考えられ、当該施設がセンターとなり集約できるシステムを構築するものである。
研究方法
申請者は、過去に京都大学で網膜色素変性の原因遺伝子変異を網羅的に検索するシステムを作り、300例以上の網膜色素変性患者の遺伝子検査を行った。さらに理化学研究所移籍後は神戸市立医療センター中央市民病院において、東京医療センター臨床研究センターと共同で同様のシステムを構築し、既に100例以上の遺伝子診断を行い、検体の送付や登録、検査結果の報告システムを試行し、問題がないことを確認。先端医療センターにおける遺伝カウセリングを含めた遺伝子診断システムを運営し、プロトコール作成、症例の登録サイト、検体の保存法などを先端医療センター臨床情報研究センターと共同で作成した。
結果と考察
これまでの遺伝子診断研究では、計網膜色素変性102例中18例、クリスタリン網膜症6例中4例に変異が確認できた。また、網膜色素変性の診断でCYP4V2の変異を認めた症例、家族歴からは不明な遺伝形式が判明するなど研究だけでなく臨床においても予後の判断や遺伝カウンセリングに有用な情報が得られた。多施設の遺伝子検索を受託するための技術的、人的問題は解決し、多施設からの試料を集約するためのシステム構築は計画どおりの達成度を得られた。
結論
多施設遺伝子診断システムの構築においては、遺伝子及び遺伝子診断情報管理、検索システム、検体管理など、さらに大規模な情報や検体の集約に備える必要があり、このシステムの運用を長期的かつ安定的に継続していくためには、その費用について患者負担も含めて検討を重ねていく必要がある。現段階では統計を取るに値するデータの蓄積とその解析が最優先であり、世界的にも通用する総合遺伝子バンクに成長させることが重要であると考える。また、遺伝子の解析方法についても安全性と診断の精度を担保しつつ、効率化を図り進化させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936061C