「ナッジ」等の行動経済学的アプローチによる労働災害防止の取組促進に資する研究

文献情報

文献番号
202322012A
報告書区分
総括
研究課題名
「ナッジ」等の行動経済学的アプローチによる労働災害防止の取組促進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
財津 將嘉(産業医科大学 高年齢労働者産業保健研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 宮内 博幸(産業医科大学 産業保健学部 作業環境計測制御学講座)
  • 鎌田 真光(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 田淵 貴大(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,918,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者:田淵 貴大 変更前:地方独立行政法人 大阪府立病院機構     大阪国際がんセンター(~令和6年3月31日) 変更後:東北大学 大学院医学系研究科(令和6年4月1日~) 

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢労働者の増加に伴い、転倒や腰痛などの労働災害は増加傾向にある。特に、転倒は軽度な災害という認識があり、十分な対策が開発されているとは言えない。従来型の環境側面のみの対策だけでは効果が限定的なため、環境および個人要因の両方の側面から総合的予防対策が必要である。行動経済学のナッジ理論の利活用が注目すべき候補となる。本研究では、労働災害疫学ビッグデータ分析や介入実験を通じてナッジ手法の効果検証をすることを目的とし、最終的には、行動経済学的アプローチによる効果的な労働災害対策を提示することを目指す。
研究方法
本年度はナッジ対策の文献レビューを実施し、次に労働災害疫学研究としてビッグデータ分析、さらには実態調査・介入方法のデザインを実施した。疫学分析のデータソースは、厚生労働省へ2次利用申請をし取得できた、2014〜2022年の労働者死傷病報告データ、一般住民コホートおよびインターネットコホートとした。さらにデータ分析から得られた情報をもとに介入するターゲット職場を策定した。


結果と考察
現状把握として文献レビューを行ったが、行動経済学的な安全衛生対策効果の確立したエビデンスは得られなかった。そこで、探索的な疫学データ分析を行い、ナッジ理論の検証を行った。2014〜2022年の8年間における休業4日以上の労働者死傷病報告の転倒災害全数データを、性別、年齢、地域、業種別に転倒発生の分析を実施した。転倒災害は男女ともに増加傾向、特に65歳以上で顕著であった。地域別では関東が最多、季節別では1月に発生数がピークに達する地域が多く、業種別では商業が最多、2020年以降では社会福祉施設での増加が顕著であった。一般住民を対象としたコホート研究データやスマートフォンアプリデータを用いた疫学検証の準備も実施した。JACSIS研究の横断データでは、最近1年間の転倒経験あり割合は全体で6%であり、男性が7.2%、16〜19歳が11.4%、農業・林業・水産業・漁業が13.0%、建設・採掘職が14.1%であった。転倒災害が増加する職場として保健福祉分野がターゲットとして上がったため、社会福祉施設の管理者へヒアリングを行い、転倒リスクのある作業場や作業を調査し、従業員に対して転倒リスクの認知度と転倒の回避行動を評価するためのアンケ-ト作成を行った。
結論
労働災害疫学データの検証により、各属性別の転倒災害発生の推移や発生状況を明らかにした。年齢や業種、地域などで転倒パターンが異なるため、今後は、ターゲット集団を絞り行動経済学を取り入れたアプローチを検討し、介入戦略立案に資する知見を創出していく。

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202322012Z