文献情報
文献番号
202322011A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢労働者の転倒災害防止に向けたOccupational Fall Risk Assessment Tool(OFRAT)短縮版の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 洋祐(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
研究分担者(所属機関)
- 畑中 翔(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 中田 由夫(筑波大学 体育系)
- 岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
- 笹井 浩行(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、OFRAT短縮版を開発し、その信頼性、予測妥当性、外部妥当性、ユーザビリティを検証することで、高齢労働者の就業転倒リスクを可視化できる受容性の高い評価ツールを提供することである。本年度は、Occupational Fall Risk Assessment Tool短縮版(OFRAT-5)を開発するため、既存データを用いて信頼性と予測妥当性の予備的解析をおこなった。また、OFRAT-5の外部妥当性を検証するための多施設コホートを新たに開始した。本報告書では、1)OFRAT-5の予備的解析の結果、および2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの集計結果を報告する。
研究方法
1)OFRAT-5の予備的解析
予備的解析では、過去に東京都健康長寿医療センターがシルバー人材センターを対象に実施した調査データを用いた。ベースライン調査から1年間に発生した就業転倒回数をアウトカムとした。OFRAT-5は次の5項目とした。1. 過去一年間の転倒歴の有無、2. 糖尿病の有無、3. 転倒リスクを高める薬の使用の有無、4. 主観的な聴力の低下の有無、5. 敏捷性の低下:ステップテスト≥10秒。
2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの収集
このコホートは、国立長寿医療研究センターと東京都健康長寿医療センターが実施するコホート研究に参加する者の内、月に4日以上の就労実績がある者で研究参加への同意を得られたものを研究対象者とした。
予備的解析では、過去に東京都健康長寿医療センターがシルバー人材センターを対象に実施した調査データを用いた。ベースライン調査から1年間に発生した就業転倒回数をアウトカムとした。OFRAT-5は次の5項目とした。1. 過去一年間の転倒歴の有無、2. 糖尿病の有無、3. 転倒リスクを高める薬の使用の有無、4. 主観的な聴力の低下の有無、5. 敏捷性の低下:ステップテスト≥10秒。
2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの収集
このコホートは、国立長寿医療研究センターと東京都健康長寿医療センターが実施するコホート研究に参加する者の内、月に4日以上の就労実績がある者で研究参加への同意を得られたものを研究対象者とした。
結果と考察
1)OFRAT-5の予備的解析
OFRAT-5の3段階評価の加重カッパ係数は0.74(95%信頼区間: 0.52-0.95)であった。OFRAT得点のグレードが上昇すると、就業転倒発生リスク比も連動して上昇した(0点(基準群)、1点: 1.83(95%信頼区間: 1.31–2.55)、2点以上: 3.19(95%信頼区間: 2.10–4.87)。
2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの収集
国立長寿医療研究センターでは28名、東京都健康長寿医療センターでは367名、合計395名の登録が完了した。対象者の平均年齢は75.8 ± 4.0歳で、51.1%が女性であった。
月に12日以上就業している者は289名(73.5%)、1日に6時間以上就業している者は195名(49.6%)であった。職務の内訳は、専門・技術職37名(9.4%)、管理職34名(8.7%)、事務職54名(13.8%)、保安職5名(1.3%)、技能・労務職29名(7.4%)、サービス業・販売職89名(22.7%)、農林漁業1名(0.3%)、農林漁業以外の自営職17名(4.3%)、その他の職業177名(45.2%)であった。17名/395名(4.3%)が、過去一年間に就業転倒を経験していた。OFRAT-5のリスクスコアは過去一年間の就業転倒と有意に関連していた(スコア1点上昇によるオッズ比[95%信頼区間]:3.14 [1.75, 5.63])。
OFRAT-5の3段階評価の加重カッパ係数は0.74(95%信頼区間: 0.52-0.95)であった。OFRAT得点のグレードが上昇すると、就業転倒発生リスク比も連動して上昇した(0点(基準群)、1点: 1.83(95%信頼区間: 1.31–2.55)、2点以上: 3.19(95%信頼区間: 2.10–4.87)。
2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの収集
国立長寿医療研究センターでは28名、東京都健康長寿医療センターでは367名、合計395名の登録が完了した。対象者の平均年齢は75.8 ± 4.0歳で、51.1%が女性であった。
月に12日以上就業している者は289名(73.5%)、1日に6時間以上就業している者は195名(49.6%)であった。職務の内訳は、専門・技術職37名(9.4%)、管理職34名(8.7%)、事務職54名(13.8%)、保安職5名(1.3%)、技能・労務職29名(7.4%)、サービス業・販売職89名(22.7%)、農林漁業1名(0.3%)、農林漁業以外の自営職17名(4.3%)、その他の職業177名(45.2%)であった。17名/395名(4.3%)が、過去一年間に就業転倒を経験していた。OFRAT-5のリスクスコアは過去一年間の就業転倒と有意に関連していた(スコア1点上昇によるオッズ比[95%信頼区間]:3.14 [1.75, 5.63])。
結論
1)OFRAT-5の予備的解析
OFRAT-5の信頼性と予測妥当性を、既存データを用いて検証した。その結果、OFRAT-5の信頼性は良好であり、就業転倒の5つのリスクを積算して評価することで就業転倒の危険度を予見できる。
2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの収集
OFRAT-5は、シルバー人材センター以外の集団においても就業転倒のリスク評価に有用である可能性がある。
OFRAT-5の信頼性と予測妥当性を、既存データを用いて検証した。その結果、OFRAT-5の信頼性は良好であり、就業転倒の5つのリスクを積算して評価することで就業転倒の危険度を予見できる。
2)外部妥当性検証集団におけるベースラインデータの収集
OFRAT-5は、シルバー人材センター以外の集団においても就業転倒のリスク評価に有用である可能性がある。
公開日・更新日
公開日
2025-01-08
更新日
-