自動制御システム等による車両系建設機械と協働する場合に新たに生じる労働安全衛生リスクのシステム思考に基づく分析フレーム

文献情報

文献番号
202322010A
報告書区分
総括
研究課題名
自動制御システム等による車両系建設機械と協働する場合に新たに生じる労働安全衛生リスクのシステム思考に基づく分析フレーム
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
澁谷 忠弘(横浜国立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 尚哉(国立大学法人横浜国立大学大学院環境情報研究院)
  • 酒井 信介(横浜国立大学総合学術高等研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,674,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、産業ロボット等多様な機械システムにおいて、自律化・自動化・遠隔化が進んでおり、制御システムによる労働災害の防止・軽減が期待されている。一方、制御システムに代表される高度な技術の追加は、別の新しいリスク源となるため適切なリスクアセスメントを実施して、新しいリスクが許容されることを確認する必要がある。
機械安全分野のRA技法としては、FMEAやFTAなどのシステム工学的な手法が用いられてきた。これらの手法はシステムの構成要素の故障に起因した事象に対しては有効な手法であるが、複雑システムなどで懸念されている要素間の相互作用や外部要因を考慮することが困難であった。一方、近年システムの安全性を構成要素間の相互作用から創発される点に着目したSTAMP(Systems-Theoretic Accident Mode and Process)のようなシステム思考に基づくモデル等も提案され、制御システムなどで生じる構成要素間の連携不具合に起因した事象を考慮することも可能となってきている。とくに、STAMPは車両分野の機能安全国際標準規格ISO26262の最新版において安全解析手法の一つとして採用されるなど、自動運転分野において注目されている。STAMPモデルを用いる場合、制御構造をモデル化してシステムレベルでのハザード同定を行う(STAMP based Process Analysis, STPA)が、要素間の相互作用に関するハザードはガイドワードを用いた同定が行われ、定性的な分析が行われる。
本研究は、自動制御システム等による車両系建設機械と協働する場合に新たに生じる労働安全衛生リスクを分析するためのフレームを構築することを目的とする。
研究方法
車両建設機械のハザード同定には、作業HAZOPとSTAMPを組み合わせることで、網羅的なハザード抽出を行う。STAMPモデルは、MITのN.G. Levesonにより提唱されたシステム思考に基づく事故モデルであり、従来の信頼性工学に基づく各要素の故障要因に起因したモデルでは考慮が難しい各要素間(主に制御系)のコミュニケーション不良に起因した事故を分析可能なモデルである。本研究では、自律化等の中核要素である制御システム(ソフトウェア)、構造物及び駆動部(ハードウェア)で構成されたSTAMPモデル(Control Structure)を構築し、ガイドワードを用いたプロセス分析(STAMP based Process Analysis, STPA)を用いてハザード同定を実施する。
STAMP/STPAモデルでは、制御構造を可視化する必要がある。制御不可能な要素や外部環境は考慮できないため、制御不可能な労働者の特性(ヒューマンファクター)は一般にワーストケースを考慮して検討される。本研究では、建設機械と労働者の相互作用を考慮するため、前述のSTAMP/STPAから得られた建設機械の特性を組み込んだ労働者の作業HAZOPを実施して、車両系建設機械と労働者のハザード同定を行う。
作業HAZOPでは、労働者が行う作業をプロセスフローとして構造化し、ガイドワードを適切に設定して危険事象を抽出する。HAZOPはJIS 61882に規定されている標準的な手順で行う。
結果と考察
最新版であるJIS C 61882を参考に,制御プロセスと建設機械の駆動プロセスのそれぞれについてガイドワードを設定した。現在の建設作業でも事故事例が多いショベルの自動運転システムを対象として,HAZOP分析を実施した。自動運転機械を含む施工手順については,国土交通省が発行している「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」を対象に,各作業手順についてHAZOP分析を行った。
STAMP/STPA実施に向けて必要な前提条件の整理、および対象システムの制御システムモデルを構築し、リスクシナリオ抽出を行った。前提条件としては、建設車両機械および労働者が共存し得る現場環境や、当該環境中にて想定されるハザードについて整理した。また、建設車両機械の遠隔および自律運転時に用いられる制御システム構造に関する規格(ISO 15143-1)などを参考に、盛土工事に伴うホイールローダーの遠隔および自律運転時を例として、その制御システム構造をモデル化した。これらの情報を用いて、一般的なSTPAの手順に基づきリスクシナリオ抽出を行った。
外部有識者として日本建設荷役車両安全技術協会,建設機械施工の自動化・自律化協議会のエキスパートに進捗会議体に参加いただき,成果のブラッシュアップを図った。
結論
初年度は、目標として設定されたSTAMPモデルを用いてハザード分析を行うとともに、労働者の作業HAZOPと組み合わせることで協働において懸念されるリスクを網羅的に抽出することができた。

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202322010Z