ヒトiPS細胞由来血管内皮細胞の分化誘導技術を用いた高度肺血管性肺高血圧症の病態生理解析と創薬に関する先端研究

文献情報

文献番号
200936057A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS細胞由来血管内皮細胞の分化誘導技術を用いた高度肺血管性肺高血圧症の病態生理解析と創薬に関する先端研究
課題番号
H21-難治・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山原 研一(国立循環器病センター研究所 再生医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉政 康直(国立循環器病センター 内科動脈硬化・代謝部門)
  • 中西 宣文(国立循環器病センター 内科心臓血管部門)
  • 曽根 正勝(京都大学大学院医学研究科 臨床病態医科学)
  • 本間 康一郎(慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来原発性肺高血圧症として知られていた肺動脈性肺高血圧症(PAH)と慢性肺血栓塞栓症(CTEPH)末梢型の発症において、肺血管内皮細胞の機能異常がその病態に重要な要因であると考えられているが、その詳細は不明である。そこで本研究では、PAH/CTEPH患者iPS由来血管内皮細胞を用い、PAH/CTEPHにおける肺血管内皮機能異常の病態生理メカニズムの同定を試みることをその目的とした。
研究方法
ヒト成人線維芽細胞にOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの4つの遺伝子を導入して作製された201B6, 201B7、およびc-Mycを除く3つの遺伝子を導入して作製された253G1, 253G4の4つのiPSセルラインを用いて、ヒトES細胞で我々がすでに確立している分化誘導法にて血管細胞の分化誘導を試みた。  また、本研究を遂行するに当たり、PAH/CTEPH患者からの血管内皮細胞、線維芽細胞の採取を目的に、国立循環器病センター倫理委員会において倫理審査申請を行った。
 更に、市販ヒト皮膚線維芽細胞からのiPS細胞誘導を試みた。
結果と考察
ヒトiPS細胞をOP9フィーダー細胞との共培養にて10日間分化誘導を行うと、Flk1陽性TRA1-60陰性細胞が出現した。Flk1陽性TRA1-60陰性VEcadherin陽性細胞は、CD34、CD31、eNOS陽性であり、血管内皮細胞であると考えられた。Flk1陽性TRA1-60陰性VEcadherin陰性細胞は、カルポニン、平滑筋ミオシン重鎖も陽性で、血管平滑筋細胞であると考えられた。それらヒトiPS細胞からの血管細胞の分化過程はヒトES細胞とほぼ同等であった。また、ヒトiPS細胞からの血管細胞の分化効率はBセルラインとGセルライン間で有意な差は認められなかった。
 PAH/CTEPH患者からの肺動脈血管内皮細胞、線維芽細胞の採取を目的に、国立循環器病センター倫理委員会において倫理審査申請を行い、承認を受けた(平成21年6月11日)。
 更に、市販ヒト線維芽細胞を用い、京都大学山中教授らが樹立した方法を用いて、ヒトiPS細胞樹立を試み、その樹立に成功した。
結論
平成21年度は、本研究計画の基盤となるヒト線維芽細胞からのiPS細胞の樹立、更にiPS細胞からの血管内皮細胞・壁細胞の分化誘導技術を確立した。今後、PAH/CTEPH患者iPS由来血管内皮細胞を樹立し、同患者の病態解明につながる研究を推し進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2010-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936057C