表皮水疱症の根治的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200936055A
報告書区分
総括
研究課題名
表皮水疱症の根治的治療法確立に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-047
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(大阪大学 医学系研究科遺伝子治療学)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉譲(大阪大学 医学系研究科 血液・腫瘍内科)
  • 江副幸子(大阪大学 医学部附属病院 未来医療センター)
  • 片山一朗(大阪大学 医学系研究科 皮膚科学)
  • 橋本公二(愛媛大学 医学系研究科 皮膚科学)
  • 中神啓徳(大阪大学 医学系研究科 遺伝子治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間葉系幹細胞移植臨床試験実施のために必要な基礎的、臨床的研究を進めた。
研究方法
1)PDGFR-alpha/H2B-GFPノックインマウスから骨髄細胞を採取し、フローサイトメトリーによりPDGFR-alpha陽性細胞の表面マーカーの検討を進めた。次いで、PDGFR-alpha陽性細胞中で表皮細胞への分化能を持つ骨髄内分画の詳細を検討した。
2)実施計画書(案)の改訂作業を進め、臨床試験ワーキンググループの組織化を進めた。また江副は未来医療センター内のCell Processing Isolatorの試運転を行った。
3)脂肪由来間葉系幹細胞について、その性質の詳細を検討した。
4)重症栄養障害型表皮水疱症女性患者における妊娠・出産について、遺伝子変異の種類による経膣分娩の可能性評価について検討した。
5)骨髄内間葉系幹細胞や造血幹細胞の高効率採取法確立に向けて研究を進めた。
結果と考察
結果
1)PDGFR-alpha陽性骨髄細胞は、Lin-/PDGFR-alpha+/c-kit-/Sca-1+であること、これらの細胞は表皮細胞特異的ケラチン5陽性細胞へと分化することが明らかとなった。
2)骨髄間葉系幹細胞移植臨床試験実施計画書を作成した。
 Cell Processing Isolatorの試運転を開始し、安全性と共に骨髄間葉系幹細胞培養の妥当性を検証した。
3)脂肪組織由来間葉系幹細胞はFGF刺激によりHGF産生が誘導されること、一方TGFbeta刺激ではHGF産生は抑制され、VEGF産生が誘導されることが明らかとなった。
4)劣性栄養障害型表皮水疱症女性患者の妊娠・出産が可能であることを、遺伝子変異との関係から明らかにした。
5)骨髄造血幹細胞の未分化性を指示する新たな表面マーカーとしてESAMを同定した。

考察
 近年PDGFR-alphaは外胚葉由来間葉系幹細胞のマーカーとなり得る可能性が指摘されている。表皮細胞は外胚葉由来であることから、PDGFR-alpha陽性骨髄間葉系幹細胞を栄養障害型表皮水疱症患者皮膚に移植することにより、移植細胞由来表皮細胞がVII型コラーゲンを産生することにより、病態が改善することが期待される。

 
結論
 骨髄間葉系細胞移植が皮膚に線維芽細胞のみならず表皮細胞を供給し、表皮水疱症治療効果を発揮し得ることが示されるとともに、平成22年度の臨床試験実施のための環境が整いつつある。

公開日・更新日

公開日
2010-04-15
更新日
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