職場における化学物質のリスクの認知と対処方法の分析を踏まえた自律的な化学物質管理支援の研修・評価デバイスの開発

文献情報

文献番号
202322002A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における化学物質のリスクの認知と対処方法の分析を踏まえた自律的な化学物質管理支援の研修・評価デバイスの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
21JA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
原 邦夫(産業医科大学 産業保健学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,397,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的:
小規模事業場における化学物質による労働災害の低減に貢献することを目的に,4テーマの2023年度の目的は以下とした.
<1>「労災に影響する属人および職場環境などの要因の特定」では,2年間の結果を論文化すること.
<2>法規制の強弱によるリスク認知の実態調査では,2つの調査の結果を論文化すること、関連して改正法令が導入される直前における小規模事業場の改正法令理解等の実態を把握すること.
<3>職場における自律的な化学物質のリスクアセスメント研修方法のあり方検討では,2年間のインタビュー調査とアンケート調査・インタビュー調査を論文化すること,化学物質取扱い者と大学生を対象として,既存の6技術領域49項目からなる自律的化学物質管理アクションチェックリストの項目数を絞り込むこと.
<4>『自律的な化学物質管理の指導者養成コース』の設計では,3回目の大学院特別講義の支援.
研究方法
<1>化学物質関連の労働災害事故事例726件とGHS分類結果データを結び付けた結果について,化学物質の有害性面から労働災害事故の原因および措置について、重要な結果を図表化し、論文化した.
<2> 小規模事業場の化学物質取扱い作業者約2000人を対象に,法規制の化学物質の危険有害性認識への影響を調べた結果の重要な点を図表化し、論文化した.また,改正法令導入直前の時期に,小規模事業場の化学物質取扱い者約500名を対象としてWebアンケート調査で理解度等の実態を把握した.
<3> (1)リスクアセスメント実施上の有効な方法について12人のインタビュー結果をテキストマイニング方法等で解析し重要な結果を図表化し論文化した.(2)化学物質である塗料を危険性・有害性と認識させる要因について塗装作業者を対象としたアンケート・インタビュー結果を統計解析およびテキストマイニング法で解析し,重要な結果を図表化し論文化した.(3)スマホなどのデバイスで利用できる既存の6技術領域49項目からなる自律的化学物質管理アクションチェックリストをGoogle forms化し, 55名の化学物質取扱い者と大40名の大学生により,各項目の順位付けを行わせ,26項目に絞り込みを行った.
<4>大学院特別講義を3年連続で支援した.
結果と考察
<1> 労働災害事例のデータ解析から,化学物質の有害性よりむしろ安全面および化学物質の危険性の面から整理されていることが分かった.さらに,化学物質の有害性が起因となって労働災害が発生することは少ないが,化学物質取扱い等の安全面の問題および化学物質の危険性を起因とした労働災害の発生が多く,その後,被災者に化学物質の有害性による影響が現れることが多いことを明らかにした.

<2> Webアンケート調査で回答した2095名のうち,「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか」の問いに,約66%が“危険もしくは有害である”,と回答した.改正法令実施直前のWebアンケート調査では,実施に際して必要と考えている事項は,化学物質の危険性や有害性に関する講習が約64%などの結果が得られた.
<3>インタビュー調査から,リスクアセスメントの実施の際にはSDSおよび労働災害事例を用いることが重要であること,塗装業に従事する化学物質取扱い者133名のアンケート調査および11名のインタビュー調査の両調査から,とくに危険予知活動(KY活動)が塗料を危険だと認識させる要因であった.
また,既存の6技術領域49項目からなる自律的化学物質管理アクションチェックリストをGoogle forms化し,55名の化学物質取扱い者と40名の大学生に各項目の順位付けさせた結果,26項目に絞り込むことで職場の化学物質管理の支援・状態評価ツールとすることができた.
<4> 講義形式は,社会人を想定し夕方の90分,パワーポイントを用い,遠隔型のWeb会議サービスのZoomを用いて行い,講義中はChat機能と講義終了後に直接のやりとりができるコースができた.
結論
健康有害性から発生する労働災害のリスクを低減化するために必要な措置は,まずは安全性および化学物質の危険性のリスク低減措置を行ったうえで,許容濃度や管理濃度を指標とした健康有害性リスク低減措置を実施する必要がある.化学物質管理の専門家がいない中小零細事業では,職場でのOJT教育の有効性を確認することができ,良好事例を使用したアクションチェックリストをGoogle forms化することで職場の化学物質管理の支援・状態評価ツールとすることができた.化学物質管理の指導者養成コースとしては,化学物質管理の指導者養成コースとしては,Webを活用し,化学物質管理についての基本の理解と実際の職場で実施されているケースを用いる講義が有効であることが示唆された.

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202322002B
報告書区分
総合
研究課題名
職場における化学物質のリスクの認知と対処方法の分析を踏まえた自律的な化学物質管理支援の研修・評価デバイスの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
21JA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
原 邦夫(産業医科大学 産業保健学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小規模事業場における化学物質による労働災害の低減に貢献することを目的に,4テーマの目的を以下とした.
<1>「労災に影響する属人および職場環境などの要因の特定」では,「職場のあんぜんサイト」から化学物質関連の災害事例を収集し,化学物質ごとの措置を抽出することを目的とした.
<2>法規制の強弱によるリスク認知の実態調査では,国の規制の強制力が高い化学物質に対する作業者のリスク認知の違いと認知に影響する要因を明らかにすることを目的とした.
<3>職場における自律的な化学物質のリスクアセスメント研修方法のあり方検討では,リスクアセスメントの有効な方法および化学物質を危険性・有害性と認識させる方法を明らかにすること,既存の6技術領域49項目からなる自律的化学物質管理アクションチェックリストの項目数を絞り込むことを目的とした.
<4>『自律的な化学物質管理の指導者養成コース』の設計では,大学院レベルの4科目90時間程度で,職場の作業者のリスクの認知能力と適切なリスク対処能力を向上させる研修を実施できる指導者を養成するコースを設計することを目的とした.
研究方法
<1>化学物質関連の労働災害事故事例726件を使用し,GHS分類結果データを結び付け,化学物質の有害性面から労働災害事故の原因および措置について整理した.

<2> 小規模事業場の化学物質取扱い作業者約2000人を対象に,法規制の化学物質の危険有害性認識への影響を調べた.また,法改正法令導入直前の時期に,小規模事業場の化学物質取扱い者約500名を対象として実態調査をした.

<3> (1)リスクアセスメント実施上の有効な方法について12人のインタビュー調調査と, (2)化学物質である塗料を危険性・有害性と認識させる方法について塗装作業者を対象にアンケート調査・インタビュー調査を行った.(3)スマホなどのデバイスで利用できる自律的化学物質管理アクションチェックリストについて絞り込み調査をした.

<4>大学院特別講義を3年連続で実施した.
結果と考察
<1> 労働災害事例のデータ解析から,化学物質の有害性よりむしろ安全面および化学物質の危険性の面から整理されていることが分かった.さらに,化学物質の有害性が起因となって労働災害が発生することは少ないが,化学物質取扱い等の安全面の問題および化学物質の危険性を起因とした労働災害の発生が多く,その後,被災者に化学物質の有害性による影響が現れることが多いことを明らかにした.

<2> Webアンケート調査で回答した2095名のうち,「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか」の問いに,約66%が“危険もしくは有害である”,と回答した.改正法令実施直前のWebアンケート調査では,実施に際して必要と考えている事項は,化学物質の危険性や有害性に関する講習が約64%などの結果が得られた.

<3>インタビュー調査から,リスクアセスメントの実施の際にはSDSおよび労働災害事例を用いることが重要であること,塗装業に従事する化学物質取扱い者133名のアンケート調査および11名のインタビュー調査の両調査から,とくに危険予知活動(KY活動)が塗料を危険だと認識させる要因であった.
また,既存の6技術領域49項目からなる自律的化学物質管理アクションチェックリストをGoogle forms化し,55名の化学物質取扱い者と40名の大学生に各項目の順位付けさせた結果,26項目に絞り込むことで職場の化学物質管理の支援・状態評価ツールとすることができた.

<4> 講義形式は,社会人を想定し夕方の90分,パワーポイントを用い,遠隔型のWeb会議サービスのZoomを用いて行い,講義中はChat機能と講義終了後に直接のやりとりができるコースができた.
結論
以上の研究をまとめると,以下のようになる.健康有害性から発生する労働災害のリスクを低減化するためには,まずは安全性および化学物質の危険性のリスク低減措置を行ったうえで,許容濃度や管理濃度を指標とした健康有害性リスク低減措置を実施する必要がある.化学物質管理の専門家がいない中小零細事業では,職場でのOJT教育の有効性を確認することができたが,化学物質の危険性・有害性についての理解として国連GHS勧告の要点の個々人の理解が重要である.職場での自律的化学物質管理を支援し現場の状況を評価するツールとして,スマートフォン等のデバイス上で利用可能なGoogle forms化した26項目程度の自律的化学物質管理アクションチェックリストの活用が今後期待される.化学物質管理の指導者養成コースとしては,Webを活用し,化学物質管理についての基本の理解と実際の職場で実施されているケースを用いる講義が有効であることが示唆された.

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202322002C

収支報告書

文献番号
202322002Z