筋萎縮性側索硬化症の病態に基づく画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
200936053A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の病態に基づく画期的治療法の開発
課題番号
H20-難治・一般-045
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
研究分担者(所属機関)
  • 糸山 泰人(東北大学 大学院医学系研究科(神経内科学))
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部 (生理学))
  • 郭 伸(東京大学 医学部附属病院(神経内科学))
  • 高橋 良輔(京都大学 大学院医学系研究科(臨床神経学))
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所)
  • 中野 今治(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門(神経内科学))
  • 船越 洋(大阪大学 大学院医学系研究科・再生医学)
  • 山中 宏二(理化学研究所 脳科学総合研究センター)
  • 長谷川成人(東京都精神医学総合研究所)
  • 漆谷 真(滋賀医科大学 分子神経科学研究センター 分子難病治療学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
33,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ALSの病態に関連する新規標的分子の探索同定による病態解明、ALS新規治療法・治療手段の開発、孤発性ALS新規疾患モデルを開発することである。
研究方法
ALSを克服するため、基礎系、臨床系研究者を結集し集約的な研究の推進体制を構築した。主任および分担研究者の各テーマに沿った独自の研究を発展させつつ情報交換を密に行い、研究組織としての有機的協力態勢を強化した。
結果と考察
昨年度までに同定したALS疾患感受性遺伝子の発現、局在を明らかにした。グリアの役割解明の分野では、リンパ球とミクログリアの相互作用、自然免疫経路の関与の証明を行い、ミクログリアでの変異SOD1による遺伝子発現変化を明らかにした。TDP-43研究の分野では、TDP-43ノックダウンによる神経細胞障害でのRho familyの関与を明らかにし、FTLD患者脳に蓄積するTDP-43断片の同定、ADAR2 活性低下とTDP-43陽性封入体形成の分子連関の検討を行った。さらに、カニクイザルへのTDP-43の過剰発現により新規モデルを開発した。新規病態解明の分野では、SOD1がtransgultaminaseの基質となり多量体を形成すること、ALSモデルマウスの肝臓における一過性組織学的障害からの回復にHGF供給が関与すること、ミトコンドリアの品質管理においてPINK1がParkinの上流で機能することを明らかにした。また、神経細胞の突起伸長に係わるPRGsに結合する蛋白としてTRIMENを同定した。デリバリーシステム開発の分野では、血管内投与可能なAAVベクターの開発、TAT-FNK髄腔内投与治療の開発を推進した。低分子化合物治療・再生・免疫療法開発の分野では、SOD1の発現量を減少させる薬剤の同定、EGF/FGF-2、HGFの逐次投与による内在性再生機転の促進、患者からのiPS細胞樹立と運動ニューロンへの誘導に成功した。さらに、変異SOD1マウスに対するアポワクチン効果の作用機序解明、他動免疫療法の効果確認を行った。
結論
本研究によって、TDP-43やグリアの病態への役割が明らかになりつつある。また、新規治療法開発へ向けてのALSの病態解明がさらに進み、新たな分子標的が明らかになった。さらに、低分子化合物による治療、遺伝子治療、再生治療、免疫治療についても、より優れたデリバリーシステムを構築することができ、特にiPS細胞から運動ニューロンを導入できたことは大きな成果であった。サルにおいて新たなALSモデルの作成にも成功し、研究は順調に進捗した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
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