食品中のダイオキシン汚染実態調査研究

文献情報

文献番号
199700676A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中のダイオキシン汚染実態調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 正武(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 内部博泰((財)日本食品分析センタ-)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
32,375,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1昨年ダイオキシンについてTDIを当面10pgTCDD(TEQ)/kg bw/dayとすることが決定された。これを踏まえ、難分解性のダイオキシン類等(ダイオキシン類(PCDD、PCDF)及びCo-PCB)による人体暴露量の推移を明らかにするとともに、地域差を調査する。ダイオキシン類等による人への主な暴露源は食品であり、日本人の場合は特に魚介類であると考えられている。そこで魚介類、酪農食品中のコプラナーPCBを含むダイオキシン類等の含量調査を行う。またマーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料の3食品群について、7地区10機関の試料を分析し、魚介類、肉類、乳・乳製品由来のダイオキシン類等の摂取量を求める。
研究方法
個別食品試料は、7地区にて魚としてアジ、アナゴ、カレイ、ヒラメ、サバ、スズキ、タイ、ホッケ、及び肉として国内産及び輸入の牛肉、豚肉、鶏肉、また乳製品としてチーズ及び牛乳を入手し、従来の分析法に従い、ダイオキシン類のジベンゾダイオキシン(PCDD)12種とダイベンゾフラン(PCDF)15種、及びコプラナーPCB(Co-PCB)3種を定量した。即ち試料をけん化後ヘキサンで抽出し、硫酸洗浄、シリカゲル、アルミナ及び活性炭カラムクロマトグラフィーで精製し、定量には高分解能質量分析計を用い内標準法で定量した。定量値について、PCDDとPCDFはITEF( International Toxicity Equivalency Factor)を用いて、またCo-PCBはAhlborgら(WHO)の値を用いて、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)に換算して示した。ダイオキシン分析の定量下限値は 0.01~0.05pg/gとした。
結果と考察
(1)魚介類等の食品中のダイオキシン類濃度
本年度調査した8種の魚について湿重量当たりのダイオキシン類の2,3,7,8-TCDD当量濃度(pgTEQ/g)は、アナゴが平均値0.92pg/g、アジが平均0.60pg/g、サバ0.31pg/g、ヒラメ平均0.16pg/g、カレイ平均0.18pg/g、タイ平均0.27pg/gであり、その他ホッケが0.20pg/gである。これらデータは最近の文献値と類似している。牛肉では輸入と国産両者を含めた濃度は平均0.22pg/gで、豚肉が平均0.02pg/g、鶏肉が1検体のみ高濃度であり平均0.49pg/gである。牛乳中の濃度は平均0.03pg/gで、チーズが平均0.10pg/gであり、米国産チーズ数種の文献値の範囲内にある。
(2)魚介類等の食品中のコプラナーPCB濃度
Co-PCBについては、いずれの魚試料からも 3,3',4,4'-TCB、3,3',4,4',5-PCB、 3,3',4,4',5,5'-HCBが検出されている。その濃度は、スズキが最も高く7.76pg/g、アナゴが平均2.74pg/g、サバ 0.68pg/g、アジ平均0.67pg/g、ヒラメ平均0.45pg/g、タイ平均0.42pg/g、ホッケ0.23pg/g、カレイ平均0.22pg/gである。牛肉では輸入と国産両者を含めた濃度は、平均0.07pg/g、鶏肉が平均0.08pg/g、豚肉が平均0.02pg/gである。豚肉及び鶏肉でCo-PCB濃度が昨年度の結果より高い理由は、Co-PCBの検出下限値が昨年度よりほぼ2桁下がり、検出化合物の数が増加したことが原因と考えられる。牛乳中濃度については平均0.02pg/gであり、チーズが平均0.08pg/gである。
一方魚介類等におけるダイオキシン類と3種Co-PCBを合計した濃度は、0.12~10.40pg/g、平均1.60pg/gであり、肉類では0.01~2.96pg/g、平均0.30pg/gであり、乳・乳製品では0.01~0.15pg/g、平均0.11pg/gである。
(3)トータルダイエットの3食品群からのダイオキシン類等摂取量
トータルダイエットの第10群の魚介類、11群の肉・卵類、12群の乳・乳製品中のダイオキシン類については、各群からの摂取量は10群の魚介類が最も多く10機関の平均値は23.6pgで、11群の肉・卵類からが11.3pg、12群の乳・乳製品からが6.1pgであった。
(4)トータルダイットの3食品群からのCo-PCB摂取量
トータルダイエット試料からのCo-PCBについては、いずれの群からも3,3´,4,4´-TCB、3,3´,4,4´,5-PCB及び3,3',4,4',5,5'-HCBが検出され、その総摂取量は10機関の平均値が10群から51.7pg、11群から9.6pgで、12群からは3.3pgであった。
ダイオキシン類とCo-PCBとの 合計摂取量は第10群が75.3pg、第11群が20.9pg、第12群が9.4pgであり、摂取量としては第10群はCo-PCBの摂取量が多く、第11群と第12群ではPCDDとPCDFからの摂取量が多くなっている。
結論
我が国に於けるダイオキシン類等(ダイオキシン類(PCDD、PCDF)及びCo-PCB)の魚介類、酪農食品を介した人への曝露状況を把握するため、魚介類、肉類・卵類、乳・乳製品の汚染状況を調査するとともに、これら食品から摂取されるダイオキシン類等の量を調査した。ダイオキシン類等として、ジベンゾジオキシン(PCDD)12種とジベンゾフラン(PCDF)15種、及びコプラナーPCB(Co-PCB)3種を分析した。魚類8種、国産及び輸入肉類3種及びチーズ、牛乳の含量は、ほぼ文献値の範囲内にあった。また7地区で集めたマーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料(10機関)の3食品群からの摂取量は、ダイオキシン類とCo-PCBの合計摂取量が、魚介類の第10群から75.3pg、肉・卵類の第11群から20.9pg、乳・乳製品の第12群から9.4pgであった。

公開日・更新日

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更新日
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