新規拡張型心筋症モデルマウスを用いた拡張型心筋症発症機序の解明

文献情報

文献番号
200936052A
報告書区分
総括
研究課題名
新規拡張型心筋症モデルマウスを用いた拡張型心筋症発症機序の解明
課題番号
H20-難治・一般-044
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
研究分担者(所属機関)
  • 塩島一朗(大阪大学大学院医学系研究科先進心血管治療学寄附講座)
  • 赤澤宏(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
  • 東口治弘(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
拡張型心筋症の予後は非常に不良であり、現在拡張型心筋症の最終的な治療法は心臓移植しかなく、新たな治療法の確立が切望されている。拡張型心筋症の原因の約30%が遺伝子変異であることが明らかとなってきたが、それらの遺伝子変異により収縮機能不全をきたす機序は未だ不明である。この発症機序の解明が新規の治療法の開発に必要であると考え、拡張型心筋症の発症機序を明らかにすることを本研究の目的とする。
研究方法
我々はヒトで報告されている変異型心筋αアクチン遺伝子を心臓特異的に過剰発現させた遺伝子改変マウスを作成し、拡張型心筋症モデルを確立した。この拡張型心筋症モデルマウスを用い実験を行った。
結果と考察
これまでの研究で,拡張型心筋症モデルマウスの心機能低下にカルシウム依存性リン酸化酵素CaMKIIδ活性の亢進と癌抑制遺伝子p53発現量の増加が重要であることを明らかにした。しかし、p53の増加により心機能が低下する機序に関して不明であり、今年度はその機序を検討した。p53は多くのアポトーシス関連蛋白の発現を制御していることが知られていおり、実際に拡張型心筋症モデルマウスでは心筋細胞アポトーシスの数が増加し、その増加はp53ヘテロノックアウトマウスとの交配により減少した。p53による心筋細胞アポトーシスの増加が、この拡張型心筋症モデルマウスの心機能低下に重要かを次に検討した。まず、アポトーシス関連蛋白の蛋白発現を検討した。結果、抗アポトーシス因子であるBcl-2が減少し、逆にアポトーシス誘導因子であるBaxの発現が増加した。次にBcl-2過剰発現マウスと拡張型心筋症モデルマウスを交配させた。結果、拡張型心筋症モデルマウスにおいて心筋細胞アポトーシスの数は減少し、さらに心機能も改善した。以上の結果より、拡張型心筋症モデルマウスの心機能低下には心筋細胞アポトーシスが重要であり、p53の増加がこの心筋細胞アポトーシスの増加に関与している可能性が示唆された。
結論
p53が心筋細胞アポトーシスの数を増加させることが、拡張型心筋症発症にいたる分子機構に非常に重要であることが示唆された。今後、p53を標的とした治療が拡張型心筋症の治療となり得る可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
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