透析情報の標準規格開発並びに透析診療施設間の連携を支援する標準化に関する研究

文献情報

文献番号
202321062A
報告書区分
総括
研究課題名
透析情報の標準規格開発並びに透析診療施設間の連携を支援する標準化に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(一般社団法人医療データ活用基盤整備機構 )
研究分担者(所属機関)
  • 山川 智之(公益社団法人 日本透析医会)
  • 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
  • 宮崎 真理子(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 峰島 三千男(順天堂大学 医療科学部)
  • 長沼 俊秀(大阪公立大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国においては特定分野・疾患ごとに必要な情報の整理・標準化が急務となっている中で、災害時等に緊急性の高い医療として透析がある。透析医療は繰り返しを特徴とし、患者は合併症が多いため日常診療において転院先施設への透析情報の提供が求められる。しかしながら、標準データ項目や交換規格は存在せず、標準化は進んでいない。そこで、本研究では透析情報標準規格(HL7 FHIR記述仕様)を策定することを目的とした。
研究方法
令和5年度は透析に特化した情報と、透析受け入れ施設にて医師が必要とする診療情報を統合化した「透析情報標準データ項目案」について、関係学会、工業会等の意見を得て精査し最終化をはかった。またHL7 FHIR記述仕様を精査し「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」の最終化をはかるとともに、研究分担者の医療施設にてデータ取得の実際について検討した。
結果と考察
(1)「透析に特化した標準項目」に「医師等が必要とする診療情報」を統合した「透析情報標準項目定義」並びに「HL7 FHIR記述仕様」の最終化を図った。両文書ともに日本透析医学会のホームページに掲載されている。https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2096.html
(2)国内ではFHIRの導入は、まだ一部の施設(電子カルテベンダー)に限られていることから、FHIR変換プログラムを開発した。施設内のシステムから標準項目データを抽出してCSV形式で格納し、これをFHIR変換プログラムに入力して出力するというフローで、研究分担者の施設にて実データによる検討を行った。施設内の閉じた環境で実施し、外部接続、外部へのデータ持ち出しは一切行わない。本試行の目的は、透析診療施設での標準データ項目抽出の実際を確認することに主眼がある。研究分担者の施設1では、透析業務に特化した機能を有するシステムが導入されており、院内職員がCSV形式でデータ抽出を行い、これをFHIR変換プログラムに入力してFHIR形式で出力できることが確認できた。施設2では、透析診療に汎用電子カルテシステムが用いられており、データ抽出の試行では、電子カルテのDWHのデータと透析診療で作成されているデータで一部違いがみられ、本運用に向けて対応を検討することとした。施設3では標準項目データを試行的に電子カルテ端末に出力し、電子カルテの画面上で医師が確認することができた。実運用に向けてFHIRでの出力の院内プロセスを検討する。
(3)日本透析医学会より令和5年12月27日、「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」を医療情報標準化推進協議会(HELICS協議会)のHELICS指針に申請した。令和6年3月末現在、審議中である。
(4)日本透析医学会でのワークショップ、日本医療情報学会でのシンポジウム、研究論文、口頭発表、関係工業会への協力要請・報告等により透析情報標準規格について、アウトリーチ活動に努めた。
本研究開発では、透析診療、透析装置、電子カルテシステム、部門システム、標準化団体のHL7 FHIRエキスパートが一同に会して標準項目策定、記述仕様策定を行うことで、効率的に各ステークホルダーの専門性・観点を踏まえた規格を開発することができた。「透析条件」については、国内外でFHIR実装ガイド(FHIR IG)は見当たらなかったが、開発チームの専門知識・知見・意見を集約することで本研究の目的を達成することができた。また、前年度の調査より、透析診療における情報システムの形態は多様であり、システムベンダーも多岐に渡ることが判明している。標準規格の実運用においては個々の施設におけるデータ抽出方法について、システムベンダーへの協力要請、施設への説明が必要と考えられる。透析診療に係る情報システムが導入されていない施設対しては支援の方法を検討する必要がある。また、FHIRに対応していない場合でも、院内でデータを集約してFHIRに変換するツールを開発した。本ツールは、さらなる検証を行う必要があるが、無償提供可能であり、開発した仕様に準じたデータ出力が可能になると考える。令和6年3月末現在、「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」はHELICS協議会にて審議中である。今後パブリックコメントが実施されることが予想され、その結果によってはデータ項目、FHIR記述仕様について一部、改訂が生じる可能性があるが、広く普及させていく上で重要なプロセスであると考える。
結論
透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様を策定した。本規格が透析診療施設に採用されることで災害時でも平時でも、いつでも診療機関で確認でき、患者さんが透析を受けることが可能となる。このような環境が一刻も早く我が国に構築されるよう、透析情報標準規格の実装・普及に努めていく。

公開日・更新日

公開日
2024-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321062B
報告書区分
総合
研究課題名
透析情報の標準規格開発並びに透析診療施設間の連携を支援する標準化に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(一般社団法人医療データ活用基盤整備機構 )
研究分担者(所属機関)
  • 山川 智之(公益社団法人 日本透析医会)
  • 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
  • 宮崎 真理子(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 峰島 三千男(順天堂大学 医療科学部)
  • 長沼 俊秀(大阪公立大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では医療情報の標準化に向けた取り組みが進められており、特定分野・疾患ごとに必要な情報の整理・標準化が急務となっている。その中で、災害時等に緊急性の高い医療として透析がある。透析医療は繰り返しを特徴とし、患者は合併症が多いため日常診療において転院先施設への透析情報の提供が求められる。しかしながら、標準データ項目や交換規格は存在せず、標準化は進んでいない。そこで、以下の目的のもと2年計画で研究を行う。
【目的1】透析情報標準規格の策定
【目的2】日常透析診療のための透析情報標準化
研究方法
【目的1】透析情報標準規格の策定
令和4年度: 日本透析医学会、日本透析医会と連携し、また関係工業会、標準化団体等の協力を得て「透析情報標準項目」、「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」案を策定する。プロトタイプシステムによりFHIR記述仕様案を検証する。
令和5年度:「透析情報標準項目」、「透析情報標準規格FHIR記述仕様」の最終化をはかり、HELICS協議会に申請する。研究分担者の医療施設にて実証的に検討する。
【目的2】日常透析診療のための透析情報標準化
令和4年度:透析診療に係る各種情報システム、透析装置、通信共通プロトコル等を調査し整理する。透析受け入れ施設に必須となる情報を整理する。
令和5年度:「透析情報標準項目」の情報との統合を検討する。日常透析診療支援に必要な標準項目案を纏める。
結果と考察
【結果】
(1)「透析情報標準項目定義」、「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」を策定した。これらは日本透析医学会のホームページに公開されている。https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2096.html
(2)全国透析施設におけるシステム導入実態調査
日本透析医学会会員、日本透析医会の会員を対象にアンケート調査を実施した。郵送件数4,324件、回答数1,744件、回答率40.7%であった。電子カルテ、透析部門システムのどちらも導入している施設の割合は50%、どちらも導入していない施設の割合は約20%である。詳細については令和4年度総括報告書に示している。
(3)HL7 FHIRによる出力の実現可能性
令和4年度はプロトタイプシステムを構築し模擬データによるテストを行い、問題なく一連のプロセスを実施できた。令和5年度はFHIR変換プログラムを開発し、研究分担者の施設にて実データによる抽出、FHIR変換、データ確認の手順を確認した。研究分担者の施設1では透析診療に特化した機能を有するシステムが導入されており透析標準項目をFHIR形式で出力できることが確認できた。施設2では透析診療に用いている電子カルテシステムのDWHより得られるデータと透析診療で別途作成されているデータで一部違いがみられ、今後対応を検討する。施設3では標準項目のデータ抽出は迅速に実施でき、電子カルテ端末にて医師が確認することができた。FHIR変換については今後の院内プロセスを検討する。
(4)HELICS申請
日本透析医学会より令和5年12月27日に「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」をHELICS協議会に申請した。令和6年3月末現在、審議中である。
【考察】
透析診療、透析装置、電子カルテシステム、部門システムそれぞれの専門家、標準化団体のHL7 FHIRエキスパートが一同に会して研究開発・仕様策定を行うことで、効率的に規格を開発することができた。透析診療施設を対象に実施した調査では、情報システムの形態は多様であり、システムベンダーも多岐に渡っている。標準規格の実運用にあたっては各施設におけるデータ抽出にあたり、システムベンダーへの協力要請と、施設に対する丁寧な説明が必要と考えられた。また透析診療に係る情報システムが導入されていない施設に対する支援の方法を検討する必要がある。さらに、本研究ではFHIRに変換するツールを開発した。本ツールは無償提供可能であり、十分な検証の後、必要な施設には利用いただくことが考えられる。FHIR記述仕様はHELICS協議会にて審議中であり、今後パブリックコメントが予想される。その結果によっては、一部、改訂が生じる可能性もあるが、広く普及させていく上で重要なプロセスであると考える。
結論
透析診療施設でのシステム導入に係る実態調査と、様々な背景を有する多くの専門家の熱意ある協力を得て、「透析に特化した標準項目」に「医師等が必要とする診療情報」を統合した透析情報標準項目定義とHL7 FHIR記述仕様の策定に至った。本規格が透析診療施設に採用されることで災害時でも平時でも、いつでも診療機関で確認でき、患者さんが透析を受けることが可能となる。このような環境が一刻も早く我が国に構築されるよう、透析情報標準規格の実装・普及に努めていく。

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
2024-08-08

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321062C

成果

専門的・学術的観点からの成果
災害時等に緊急性の高い透析医療を対象として、「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」を策定した。HL7 FHIRによる透析情報の実装ガイドは国内外を調査して見当たらず、我が国で先駆的に開発されたものと考えられる。開発にあたっては、全国透析診療施設におけるシステム導入の実態を調査した。本調査の郵送先は国内の、ほとんどすべての透析診療施設を網羅しており(回答率40.7%)、不明であった、我が国における電子カルテ、透析部門システム等の実際がシステム製品も含めて明らかになった。
臨床的観点からの成果
災害時等に緊急性の高い医療として透析がある。透析医療は繰り返しを特徴とし、患者は合併症が多いため日常診療において転院先施設への透析情報の提供が求められる。しかしながら、標準データ項目や交換規格は存在せず、標準化は進んでいない。本研究では「透析情報標準項目定義」と「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」を策定した。これらは日本透析医学会のホームページに公開されている。本規格が透析診療施設に採用されることで災害時でも平時でも、いつでも診療機関で確認でき、患者さんが透析を受けることが可能となる。
ガイドライン等の開発
本研究においては、「透析情報標準項目定義」、「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」を策定した。日本透析医学会より令和5年12月27日に「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」をHELICS協議会に申請した。令和6年3月末現在、審議中である。HELICS指針として承認された標準の大半は厚生労働省標準規格として採択されている。「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」は、厚生労働省標準規格として、全国の透析診療施設に普及することが期待される。
その他行政的観点からの成果
我が国では厚生労働省により電子的データ交換の規格としてHL7 FHIRが採用され、医療DXの一環として平成7年度には電子カルテ情報共有サービスに各医療施設からHL7 FHIRに準じた3文書6情報の登録が計画されている。本研究で開発した「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」は、厚生労働省のHL7 FHIRによる医療施設間での診療情報共有、またマイナーポータルを通じた患者への情報提供の政策に則ったものであり、医療DXの推進に貢献するものと考える。
その他のインパクト
「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」については、日本透析医学会でのワークショップ、日本医療情報学会でのシンポジウムを開催し、講演とフロアとの対話を通じて普及活動に努めた。また、研究開発には、透析装置メーカが参画する一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会、電子カルテベンダー、透析部門システムベンダーが会員である一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会に正式に協力要請し、規格開発に協力を得るとともに「透析情報標準規格HL7 FHIR記述仕様」の広報に努めた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
ワークショップ1件、シンポジウム1件開催、研究成果物の学会ホームページでの公開

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,280,000円
(2)補助金確定額
7,280,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,756円
人件費・謝金 2,285,313円
旅費 32,620円
その他 3,262,311円
間接経費 1,680,000円
合計 7,280,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
-