適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究

文献情報

文献番号
202321061A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2012
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(学校法人北里研究所 北里大学 薬学部臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
  • 小林 江梨子(城西国際大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,093,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、我が国における医薬品の適切な開発環境、安定供給及び流通環境の維持・向上を図るため、医薬品の上市及びその後の安定供給の推進における障壁を調査・分析し、薬価制度を含めた対策を提言することを目的とした。
研究方法
1.医薬品の安定供給の強化に関する研究
後発品を中心とした医薬品の安定供給に関して、後発品企業の医薬品製造に関する実態調査を行った。主な調査事項は、製造販売承認を有する後発品の品目数、2022年度の自社製造所における医療用医薬品の製造数量(計画/実績)、過去5年間の自社製造所における医療用医薬品の製造数量(実績)、医療用医薬品の最大製造可能数量等である。(2023年6~7月)
次いで後発品の安定供給等に係る企業体制の評価指標を検討するための予備調査を行った。主な調査事項は、供給計画・実績等の策定・公表、製造所等に関する情報の公表、緊急事態に備えた対応、自社製品の出荷停止事例、他社の出荷停止製品等に対する増産対応等、医療関係者等への情報提供等である。(2023年8月)
2. 新薬の開発及び上市環境の改善に係る研究
新薬の開発及び上市環境に関しては、日本の製薬企業による臨床試験の実施状況、新薬の日米欧での開発・承認のタイミング、外資系企業による国際共同臨床試験への日本の参加状況等について調査・分析を行った。さらに、近年薬価基準に収載された新薬の薬価算定の状況について、市場性加算、小児加算、先駆加算の加算率に着目して分析するとともに、革新的新薬(医薬品医療機器等法の規定に基づく優先審査品目)について、日米欧での承認申請タイミング及び薬価収載後の外国価格の参照状況を調査した。

結果と考察
1. 医薬品の安定供給の強化に関する研究
後発品企業の医薬品製造に関する実態調査及び後発品の安定供給等に係る企業体制の評価指標を検討するための予備調査を実施し、これらの結果及び「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で指摘された後発医薬品業界の構造的課題等を踏まえ、企業指標として評価する指標を整理した。後発医薬品の安定供給等に係る企業体制の評価指標(案)を作成し、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」に報告した。
さらに、上述の企業体制の評価指標(案)をベースとして「令和6年度薬価制度改革骨子」(中央社会保険医療協議会)で示された「後発品の安定供給が確保できる企業の評価指標及び評価方法」のうち、後発品の安定供給に関連する情報の公表、予備対応力の確保、供給実績等について、公表内容や方法などを示したガイドライン案を作成した。
2. 新薬の開発及び上市環境の改善に係る研究
日本の製薬企業による臨床試験の実施状況、新薬の日米欧での開発・承認のタイミング、外資系企業による国際共同臨床試験への日本の参加状況等について調査・分析を行った。さらに、近年薬価基準に収載された新薬の薬価算定の状況について、市場性加算、小児加算、先駆加算の加算率に着目して分析するとともに、革新的新薬について、日米欧での承認申請タイミング及び薬価収載後の外国価格の参照状況を調査した。
日本の医薬品市場の魅力低下が指摘されている中、医療上の必要性が高い革新的新薬の日本への早期導入を積極的に評価する姿勢が求められ、適切な類似薬がなく、かつ参照できる外国価格が存在しない場合は、収載時薬価の予見可能性が特に低く、日本への早期導入の障害となっている。これらの背景及び上述の調査結果等を踏まえて、新薬の薬価算定ルールに関する検討事項の提案を作成し、中央社会保険医療協議会総会に報告した。

結論
我が国における医薬品の適切な開発環境及び安定供給の維持・向上を目的として、医薬品(特に後発医薬品)の安定供給、革新的な新薬の日本市場への早期導入の2つの視点から現在の状況を調査・分析し、対応の方策を提案した。後発品の安定供給の強化に向けては、令和6年度薬価制度改革において、後発品企業の安定供給体制等を評価し、その結果を薬価制度に活用することが開始された。今後、この政策導入の影響を継続的に評価していくとともに、次期薬価制度改革において追加の項目も評価対象に加えていくことの適切性を判断する上での各社の準備状況をフォローしていく必要がある。新薬の開発環境に関しては、同じく令和6年度薬価制度改革で導入又は見直された制度が、今後の新薬開発にどのような影響を与えるか、調査・分析を続けていく必要がある。さらに、将来に向けたいくつかの課題について、今後、具体的な検討を行っていくこととしたい。

公開日・更新日

公開日
2024-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202321061Z