特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究

文献情報

文献番号
200936043A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-035
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 朝長 啓造(大阪大学微生物病研究所 ウイルス免疫分野)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学医学部 ウイルス学講座)
  • 山谷 睦雄(東北大学大学院医学系研究科 先進感染症予防学講座)
  • 荒川 宜親(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 和田 昭仁(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 渋谷 和俊(東邦大学医学部 病院病理学講座)
  • 竹末 芳生(兵庫医科大学 感染制御学講座)
  • 河野  茂(長崎大学大学院 感染免疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難病の原因となる病原性微生物の関与、または感染が契機となる自己免疫異常を明らかにし、難病の発症予防や効果的な治療法の開発に寄与することを目的とした。
研究方法
 難治性血管炎及び原発性肺高血圧症と真菌感染、神経変性疾患と遅延性ウイルス感染、神経疾患の起因ウイルス、慢性肺気腫とウイルス感染、関節リウマチとマイコプラズマ感染、炎症性腸疾患と硫化水素産生菌の影響、潰瘍性大腸炎術後感染の予防、拡張型心筋症とレトロトランスポゾン及び内在性レトロウイルスの関与、IgA腎症と感染症に関する研究を行った。
結果と考察
 深在性真菌症の起炎菌として最も頻度が高いカンジダの細胞壁の糖鎖構造が炎症誘導および血管炎の発症に関連すること、居住環境から分離される真菌のマウス投与によりヒト肺高血圧に類似した病変が形成され、その病態に好酸球やTh2免疫応答が関与することを示した。神経変性疾患と遅延性ウイルス感染に関して、ヒトや他の哺乳動物のゲノム内にボルナウイルス遺伝子と相同性を持つ遺伝子配列の存在を示した。ボルナウイルス持続感染に伴うウイルス遺伝子の組込みにより宿主遺伝子の改変が起こり、細胞の機能を低下する可能性が示唆された。神経疾患の起因ウイルスに関して、うつ症状を呈する患者においてヒトヘルペスウイルス潜伏感染蛋白に対する抗体が検出され、この蛋白をマウスの脳内細胞で発現させると行動異常と関連することを示した。肺気腫とウイルス感染に関して、RSウイルス感染が気道炎症を惹起し肺気腫を増悪させ呼吸不全をもたらすことを示した。関節リウマチとマイコプラズマの関連について、関節腔内生菌投与ウサギにおいて関節炎を認め、その所見はマイコプラズマ脂質の前投与により軽減した。炎症性腸疾患と感染症について、炎症性腸炎、外科手術後の回腸嚢炎の炎症の程度と硫化水素産生菌数の関連を調べる検出系を開発した。潰瘍性大腸炎患者のpouch作成手術症例では、術前抗菌薬投与が手術巣感染予防に有用であることを示した。拡張型心筋症におけるレトロトランスポゾン・内在性レトロウイルスの関与について、患者心筋における疾患関連遺伝子を定量する検査法を樹立した。IgA腎症モデルマウスの腎組織を質量顕微鏡により解析し、対照群と差を認めた腎皮質周囲に分布する物質を同定した。
結論
 いくつかの特定疾患に関して病原微生物との関連性が示され、一部の疾患では治療に直結する知見がえられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-