献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究

文献情報

文献番号
202321048A
報告書区分
総括
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA2011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
波多野 悦朗(一般社団法人日本外科学会 )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,187,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度で安全な医療を提供には効果的なトレーニングが必要である。献体を使用した手術手技研修(CST: Cadaver Surgical Training)は、従来のOJTを補完する教育手法であり、その有効性が期待されている。国内のCSTは2012年に日本外科学会と日本解剖学会により『臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン』(以下ガイドライン)が制定され、当該ガイドラインを遵守してCSTを遵守することで実施可能となった。この実施に当たっては、日本外科学会CST推進委員会はガイドラインの規定に沿って各大学が執行したCSTの実施報告書を受理し、実施内容の妥当性、予算運営の公正性、企業関連のCOI等に関する透明性を審査し、必要に応じて指導を行い承認してきている。ガイドライン公表後の10年間の取りまとめでは、38の医科大学から1,173件の教育のCST実施や遺体を使用した研究開発の報告があった。総計で2,677回の実施に対して、26,123人 (うち学外:13,351人)が参加している。コロナ禍でCSTの実施件数が一時減少したものの、2022年度には再度報告件数は上昇に転じ、年間548件の報告があった。
2012年から2021年の診療科別のCSTの実施件数を集計すると、日本外科学会以外のCSTの実施も数多く報告され、特に整形外科が最も多くなっている。
CSTの普及により、これまで日本外科学会が行ってきた各大学のCST報告の審査、ガイドライン改訂などのルール策定、並びに将来構想の策定等の業務は、日本医学会連合等の各領域と献体を扱う日本解剖学会を統括する組織が行う必要性が生じてきた。さらに歯科領域もそれに応じる必要がある。そこで、本研究では、これまでの「献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究」の成果を踏まえ、日本外科学会CST推進委員会、日本解剖学会、臨床系各領域の専門学会、ならびに日本医学会連合の協力を得て、4つの課題を掲げた活動を実践することを目標とした。
研究方法
本年度は、新たなCSTを統括する組織である“一般社団法人CST(仮称)”の確立のための準備作業を日本外科学会CST推進委員会、並びに日本外科学会事務局と合同で行うこととした。また、CST実施に関与する画像の取り扱いに関する問題点の洗い出しを行うこととした。
結果と考察
“一般社団法人CST(仮称)”の設置に向けた作業を本研究班と日本外科学会CST推進委員会、日本外科学会事務局が連携して実施した。日本外科学会CST推進委員会の3回の会議において、新法人の趣旨説明と今後の具体的な手順が検討・確認された。これを受けて日本外科学会、日本解剖学会に加えて、日本外科学会CST推進委員会に委員を推薦し、日本脳神経外科学会、日本整形外科学会、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、日本産科婦人科学会、日本口腔外科学会、日本形成外科学会、日本救急医学会、日本泌尿器科学会において、順次各学会の理事会等で新法人への参加について検討されることとなった。さらに日本医学会連合、日本歯科医学会連合、全国医学部長病院長会議、歯科大学学長・学部長会議、日本解剖学会、篤志解剖全国連合会に対しも別途法人設立の趣旨説明を行い、今後の協力についての確約を得た。倫理面の重要課題のCST実施時の画像の扱いでは「CST画像適正管理ワーキンググループ」では画像の取扱いについて問題点を洗い出し、提言案をまとめるための活動を行った。本年度は1回の会合を行い、その結果は論文として公表した。ガイドラインの公表から10年が経過し、これまでCSTは順調に普及してきたが、今後わが国のCSTをさらに健全に発展させるためには、外科系学会全体にCSTガイドラインを周知させ、各学会のプロフェッショナル・オートノミーを高める必要がある。上記の目的のために本研究では、これまで日本外科学会CST推進委員会が行ってきたCSTの普及啓発活動について、今後は医学・歯学に関連する各団体を社員とする新組織である“一般社団法人CST(仮称)”を設置して実施することに関してステークホルダーと議論を重ねた結果、新法人設置に関するコンセンサス得られ具体的な工程が示された。新法人は2024年度内に設置される予定であり、今後のCSTの健全な普及が期待できる。
結論
今後わが国のCSTをさらに健全に発展させるためには、外科系学会全体でCSTガイドラインを周知させ、各学会のプロフェッショナル・オートノミーを高める必要がある。最終年度には、日本外科学会に代わる新団体の設立について具体化する道筋を示した。この成果をもとに“一般社団法人CST(仮称)”が2024年度に設立予定であり、本研究で検討した諸課題については、新法人からガイドライン等で公表される予定である

公開日・更新日

公開日
2024-06-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321048B
報告書区分
総合
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA2011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
波多野 悦朗(一般社団法人日本外科学会 )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度な医療を安全に提供するためには、効果的なトレーニングが必要である。献体を使用した手術手技研修(CST: Cadaver Surgical Training)は、OJTを補完する有用な教育手法である。国内では、2012年に日本外科学会と日本解剖学会によって公表された『臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン』(以下ガイドライン)の遵守により、CSTが実施可能となった。また、日本外科学会CST推進委員会はガイドラインの規定に沿って各大学のCSTの実施報告書を受理し、実施内容の妥当性、予算運営の公正性、企業関連のCOI等に関する透明性を審査し、必要に応じて指導を行い承認している。ガイドライン公表後の10年間で、38の医科大学から1,173件のCSTや遺体を使用した研究開発の報告があり、総計で2,677回の実施に対して26,123人(うち学外13,351人)が参加しました。コロナ禍で報告件数が一時減少しましたが、2023年度には再び増加し、548件の報告があった。2012年から2021年までの診療科別のCST実施件数を集計すると、整形外科が最も多く、日本外科学会が担当する外科領域のCSTは約1/5に過ぎない。CSTの各領域での普及により、日本外科学会が行ってきた各大学のCSTの審査、ガイドライン改訂、将来構想の策定などの業務は、外科系の各領域と解剖学を統括する組織が行う必要が出てきた。そこで、本研究では、「献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究」の成果を踏まえ、日本外科学会CST推進委員会、日本解剖学会、臨床系各領域の専門学会、日本医学会連合の協力を得て、下記の4つの課題を解決することを目指した。
研究方法
① 現在の評価システムはCST推進委員会が実施し、日本外科学会、日本解剖学会に加えて臨床系学会が評価に参加。
② プロフェッショナル・オートノミー強化のために新組織「一般社団法人CST(仮称)」の設立を検討。日本外科学会や臨床系学会、日本解剖学会との協議と、関連上位団体への説明を予定。
③ 新ガイドライン作成のため「CST画像の適正管理ワーキンググループ」を設置し、専門的見地からガイドライン改定を検討。
④ 啓発活動の前に生命倫理や社会学の観点からCSTの在り方を検討し、メディアを通じた周知方法を模索。
結果と考察
① 現行の報告システムの改善
多領域からの報告書の審査・承認体制を改善。2022年度より各学会の評価委員による領域別審査と全体会議での承認体制を整備。
② プロフェッショナル・オートノミーの強化
ガイドラインの周知不足を改善するため、新組織「一般社団法人CST(仮称)」の設立準備を実施。各学会や関連団体から賛同を得て、2024年度内の設立予定。
③ 新ガイドラインの作成
CSTに関する新ガイドラインを作成するためにワーキンググループを設置。個人特定可能な遺体写真の使用問題に対処するため、問題点を洗い出し新ガイドラインに反映予定。
④ 一般市民への啓発活動
専門家の協力を得て、CSTの社会的合意と歴史的背景を踏まえた推進方向を検討。新組織が普及啓発活動を引き継ぎ、CSTの健全な発展を図るため、2024年度内に新法人設立予定。

ガイドラインの公表後CSTは順調に普及してきたが、一度不適切な実施が社会問題になると、これまで普及のために行ってきた活動全てが水泡に帰す可能性がある。今後わが国のCSTをさらに健全に発展させるためには、外科系学会全体にCSTガイドラインを周知させ、各学会のプロフェッショナル・オートノミーを高める必要がある。  
本研究では、上記の目的のためにこれまで日本外科学会CST推進委員会が行ってきたCSTの普及啓発活動について、今後は新組織の“一般社団法人CST(仮称)”が実施すべくステークホルダーと議論を重ねた。その結果、新法人設置に関するコンセンサス得られ具体的な工程が示された。
新法人は2024年度内に設置される予定であり、本研究で検討した諸課題は新法人に引き継ぎ解決される予定である。
結論
今後わが国のCSTをさらに健全に発展させるために、“一般社団法人CST(仮称)”が2024年度に設立予定である。これにより医学会全体でCSTガイドラインを周知させ、各学会のプロフェッショナル・オートノミーを高めることが可能となり、今後のCSTの健全な普及が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2024-06-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321048C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現行の報告システムを改善し、日本外科学会や関連学会の協力を得て、専門領域ごとの評価体制を整えた。また、プロフェッショナル・オートノミーの強化を目指し、CSTを統括する新組織「一般社団法人CST(仮称)」の設立を決定した。さらに、新ガイドライン作成のための専門的な検討と、生命倫理や社会学の観点からCSTの社会的役割を見直し、啓発活動の計画を立てた。
臨床的観点からの成果
献体を使用した手術手技研修(CST)を通じて高度な手術技術の安全な普及を目指し、ガイドラインの改定や新組織「一般社団法人CST(仮称)」の設立準備を進めた。これにより、評価システムの改善やプロフェッショナル・オートノミーの強化が図られた。また、CST画像の適正管理に関するワーキンググループを立ち上げ、専門的な見地から新ガイドラインの作成に取り組んだ。
ガイドライン等の開発
CSTの新ガイドライン作成において、『CST画像の適正管理ワーキンググループ』を立ち上げ、顔面移植手術や美容外科のCSTに関する個人特定可能な画像の使用問題を検討した。日本形成外科学会のメンバーが参加し、問題点を洗い出し、これを新ガイドラインに取り入れる準備を進めている。また、倫理面や社会学の観点からCSTの在り方を検討し、一般市民向けの啓発活動も計画されている。
その他行政的観点からの成果
本研究において、日本外科学会CST推進委員会と連携し、多領域からの報告書の審査・承認体制を整え、2022年度から各領域の評価委員による領域別審査と全体会議での承認体制を確立した。また、プロフェッショナル・オートノミーの強化のため、新組織「一般社団法人CST(仮称)」の設立準備を行い、関係する学会や団体から賛同を得た。さらに、新ガイドライン作成のためのワーキンググループを設置し、適正な管理と運用に向けた検討を行いった。
その他のインパクト
本研究により、新たなCSTガイドラインの作成が進められ、特に『CST画像の適正管理ワーキンググループ』の設立によって、個人特定可能な画像の適切な取扱いが強化された。さらに、生命倫理や社会学の観点から、社会におけるCSTの意義を再評価し、一般市民向けの啓発活動が計画されている。これにより、CSTの社会的認知度が向上し、医学教育における倫理的な基盤が強化されることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,542,000円
(2)補助金確定額
1,542,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 100,923円
人件費・謝金 96,705円
旅費 709,248円
その他 94,098円
間接経費 355,000円
合計 1,355,974円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-06-24
更新日
-