文献情報
研究代表者(所属機関)
小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部 大学院看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究報告書(概要版)
研究報告書(PDF)
研究報告書(紙媒体)
文献情報
研究代表者(所属機関)
小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 岡本 左和子(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 教育開発センター)
- 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、すでに基礎資料がある医師・薬剤師・看護師・理学療法士・作業療法士以外の医療職種について、働き方改革を推進する上で、医師からのタスク・シフト/シェアの推進に資する基礎資料としての実働人数の現在と将来の需給関係の推計とその推計式の構築である。この目的のために、医療機関における①実働人数などの把握、②医療機関での需給推計による今後の見通しを提示することである。
研究方法
本研究の対象は、診療放射線技師、臨床検 査技師、臨床工学技士、視能訓練士、言語聴 覚士の各医療専門職種である。
1. 将来の医療専門職の需要を予測する推 計式の構築
各医療職の将来の需要については、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報デ ータベース NDB オープンデータの入院・外 来検査件数の総数を用いて、本研究では将来の業務予測を行う推計式を構築して算定し、各医療職の推計を用いた。供給については、厚生労働省の国家試験 合格発表や過去の国家試験合格者数を基に免許取得者数を整理した男女別の新規免許 取得者数を使用するなどし、60 歳以降の就 業割合を 0 とすることで定年退職を反映させた就業者数の推計を実施した。
2. 医療専門職の将来の需給バランスの想定シナリオの作成
職能団体から提出された資料を基に、その意向を踏まえつつ調整を行い、幾つかの需給バラン スについて推計したものを職能団体に提示した。最終的には、各職能団体の代表または 理事会などとの協議を経て、合意の上で、需給バランスとなる交差点の想定シナリオを決定した。
3. 先駆的なタスクシフト/シェアの事例
地域医療の中核を担っている中規模施設において、汎用性のある方法でタスクシフ ト/シェア実現している施設を各職能団体より推薦を受け、ヒアリングによる状況調査を実施した。
結果と考察
需給バランスの作成において、昨年度の診療放射線技師についてモダリティ別の重み付けあり・なしの分析結果をもとに、各職能団体との協議の上でモダリティ別の重み付けは需要推計には考慮しないことを決定した。その上で、需給バランスについて、職能団体との協議の結果、いくつかのシナリオを想定した。その結果、 社会情勢や働き方改革の進捗にも依るが、各職種ともにおよそ15年から20年後は労働力不足という事態というよりは供給過多の時代を迎えていると推察された。本研究の手法は、現状に対する現場の評価を反映した上で将来の需給バランスを考察できる利点がある。本研究の結果から、医療需要への迅速な対応、人材活用の方法や選択肢を拡げるなど様々な状況を検討するには、基本となる情報となり得る。さらに、妥当性のある需給推計にするためには継続的に医療現場の職能団体のタスク・シフト/シェアの進捗状況も把握しながら研究する必要がある。
なお、本研究は、一定の仮定のもと、医療施設に限定した入院・外来検査件数から医療関係職種(診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、視能訓練士、言語聴覚士)の需給推計を算出しており、他の分野における需要や検査以外の業務は一切考慮されていないことから、後述する本研究結果をこれら職種の本質的な需給推計として扱うことには限界があることに十分留意が必要である。
結論
医療需要(検査件数)については、各医療職ともに現在より2030年頃までは増加し、それ以降は減少に転ずると推察された。医療供給については、各医療職ともに増加傾向と推察された。およそ15年は労働力不足という事態というよりは供給過多の時代を迎えている可能性も示唆された。よって、医師の働き方改革におけるタスクシフトの業務拡大は可能と考える。
研究報告書(PDF)
研究報告書(紙媒体)
行政効果報告
成果
専門的・学術的観点からの成果
近い将来、医療専門職の需給バランスがある一定の条件で推定すると医療施設においては、供給過多になるという予測は臨床現場における医師の働き方改革のタスクシフト/シェアの推進に繋がった可能性がある。
臨床的観点からの成果
2029年までは病院における検査数は増加し、臨床現場は多忙な労働環境にある。そのため医師の働き改革の取り組みのひとつであるタスクシフト/シェアの推進はなかなか進まないと思われていた。しかし、本邦の将来の人口減少が予想される中、病院の検査数も減少し、医療専門職の需給バランスが供給過多になると予想されたことを踏まえて、それぞれの医療専門職は将来の職のあり方について前向きに業務拡大について考えるきっかけになった。
その他行政的観点からの成果
厚労行政は医師の働き方改革を推進しており、この数年は様々な取り組みを実施して きた医療機関や検討を重ね実施開始しようとしている医療機関があると推察される。医師の働き方改革の取り組みの1つであるタスクシフト/シェアの実施について、各職能団体からの推薦や本研究班の調査で、実施に向けた調整方法や内容に汎用性があり、多くの医療機関が参考にできる 取り組みをしている医療施設を視察したことから、タスクシフトの効果的な推進に貢献した。
その他のインパクト
1. 人口減少の要因による病院の検査数の減少について じほう THE MEDICAL&TEST JOURNAL(2022.7.21)の1面に掲載された。
2. タスク・シフト/シェアの現状課題と期待について、NTT経営研究所の経営研レポートNTT DATAホームページにて紹介(2024.2.2)。
3. シンポジウム・研修会等で研究代表者の小野孝二は、2022年度は1回、2023年度は7回の招待講演を実施、2024年は2回の招待講演を予定。研究協力者の森田雅士は2022年に指定パネリストで参加。
発表件数
その他成果(普及・啓発活動)
10件
講演8件、マスコミ発表1件
特許
主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)
収支報告書
支出
研究費 (内訳) |
直接研究費 |
物品費 |
953,630円 |
人件費・謝金 |
28,000円 |
旅費 |
340,640円 |
その他 |
108,730円 |
間接経費 |
270,000円 |
合計 |
1,701,000円 |