海外の制度等の状況を踏まえた離島・へき地等におけるオンライン診療の体制の構築についての研究

文献情報

文献番号
202321045A
報告書区分
総括
研究課題名
海外の制度等の状況を踏まえた離島・へき地等におけるオンライン診療の体制の構築についての研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
原田 昌範(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古城 隆雄(東海大学健康学部)
  • 阿江 竜介(自治医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コロナ禍における諸外国のオンライン診療の現状を追加調査し、我が国の制度と比較し、指針の改訂等に活かす。山口県の実証や全国の有効な実例を集積・整理し、モデル事例がどうすれば全国のへき地で安全性・信頼性を担保して活用できるのかを明らかにする。また、へき地医療の確保につながるオンライン服薬指導や電子処方箋、遠隔医療健康相談の活用についても実証を行う。
研究方法
国内へき地におけるオンライン療の実態および諸外国のオンライン診療の実施状況を調査した。令和元年からの山口県のへき地における実証を継続し、異なる場所で新規実証も検討した。へき地におけるオンライン服薬指導、ネットワークやセキュリティ等に関する課題を整理した。
次の6項目(①〜⑥)に分けて調査研究する。
① 国内へき地におけるオンライン診療の実態に関する研究
② 諸外国におけるオンライン診療の実施状況の調査
③ 山口県内の離島・へき地における地域特性に合わせたオンライン診療の活用についての研究
④ へき地診療所におけるネットワーク状況の実地調査
⑤ オンライン服薬指導と電子処方箋について
⑥ 小児科医・産婦人科医・助産師による遠隔健康医療相談の実態調査

なお、オンライン診療模擬体験会の実施(古城班)、へき地医療におけるオンライン診療の有用性の高い対象の特定のための研究(阿江班)については、それぞれ分担研究報告書にて報告する。
結果と考察
① 8箇所の地域をインタビュー調査した。遠隔医療・オンラインの活用事例が直近1年でも急に増加していることが分かった。最も注目すべき促進要因は、オンライン診療の実施場所に関する規制が緩和されたことであった。公民館や郵便局等、特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設が、一定の条件下で緩和された。また、医療MaaSのようなモビリティが医療過疎地域でのオンライン診療を推進した。
② 日本と同様に諸外国においても、国により違いはあるが、オンライン診療実施のためのガイドラインや手引きが策定されるなど、「①オンライン診療の実施する医師(機関)の登録(ライセンス制など)」、「②患者、医師の所在の要件」、「③オンライン診療時に利用できるWeb会議ツールの要件(認証制等)」などの一定の条件下にてオンライン診療が提供されていた。
③ 普段から患者をよく知る看護師の補助下であれば、普段との様子の違い、バイタル測定を含めた全身状態の評価、病歴聴取など、医学的評価を正確なものとする情報を収集できると考えられ、患者も医師も安心できる。
④ オンライン会議の映像およびTeladoc HEALTHで送信される映像は多少のタイムラグがあるものの、オンライン診療には大きな影響はなかった。推奨される接続方式としては、診療所等への通信路は光ケーブル、5G回線、4G回線の順番であり、診療所等内では2.4GHzのWi-Fi以外の方法での接続が望ましい。
⑤ 2023年に運用が開始した電子処方箋をオンライン服薬指導と合わせてへき地診療所で実証し、メリットや課題が整理された。
⑥ へき地と都市部の間で、産婦人科、小児科に特化した遠隔健康医療相談に対する相談ニーズに差異はみられなかった。今後、日本における遠隔健康医療相談の普及の検討において、へき地に限らないニーズについても考慮する必要性があることが示唆された。
結論
医療資源が限られたへき地においても持続的に地域包括ケアが提供されるために、オンライン診療を安全かつ適切に組み合わせることが必要である。令和6年度に新設される診療報酬「看護師等遠隔診療補助加算」にも期待しつつ、医療機関、行政、地域住民、大学、学術団体、職能団体、企業等が同じ目的で連携し、現状と課題を共有しながら一緒に取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321045B
報告書区分
総合
研究課題名
海外の制度等の状況を踏まえた離島・へき地等におけるオンライン診療の体制の構築についての研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
原田 昌範(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古城 隆雄(東海大学健康学部)
  • 阿江 竜介(自治医科大学医学部)
  • 山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター)
  • 岡本 左和子(公立大学法人奈良県立医科大学  医学部 教育開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師が不足するへき地においても地域包括ケアを推進するために、どのようにオンライン診療を組み合わせるのか、特にコロナ禍における国内外のオンライン診療の現状を調査し、指針の改訂等に活かす。山口県の実証や全国の有効な実例を集積・整理し、モデル事例がどうすれば全国のへき地で安全性・信頼性を担保して活用できるのかを明らかにする。
研究方法
令和元年度「へき地医療の推進に向けたオンライン診療体制の構築についての研究(厚生労働行政推進調査事業費補助金:H30-医療-指定-018)」に、山口県のへき地の異なる4地域を追加し実証を継続した。他の国内へき地におけるオンライン療の実態および諸外国のオンライン診療の実施状況を毎年調査した。へき地におけるオンライン服薬指導や電子処方箋、ネットワーク環境、遠隔健康医療相談の活用等に関する課題も整理した。
都道府県やへき地診療所の詳細なニーズ分析や住民啓発は古城班(分担研究Ⅰ)、有用性の高い対象の特定については阿江班(分担研究Ⅱ)を立ち上げた。また、コロナウイルス感染症がきっかけで、オンライン診療の規制が世界的に大幅に緩和されたことで生じたセキュリティの問題は山本班(分担研究Ⅲ)、ダイエット目的に糖尿病治療薬を処方するなどの不適切な処方については岡本班(分担研究Ⅳ)で調査した。
結果と考察
山口県内では、令和元年からへき地4箇所で実証を開始し、令和3年度から非常勤体制となった離島やへき地の病院等など新たに4箇所を加えたところ、オンライン診療支援者(特に看護師:D to P with N)の存在が重要であることが共有された。新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、オンライン診療に関する規制が国内外で大幅に緩和されたが、実際には国内外ともにへき地での活用は思うほど進まず、所得や文化的背景などによるデジタルデバイドの拡大の課題も生じていた。海外ではその対策として、地方部へのブロードバンドインフラ設備の推進、農村部を支援する遠隔医療リソースセンターの設置、オンライン診療専用のブースを薬局に設置し、薬剤師がオンライン診療の支援をする仕組みを提供するなど各国の状況を踏まえた施策がなされていた。令和5年度、国内ではオンライン診療の実施場所に関する規制が緩和され、医療MaaSや郵便局での活用など、全国でも少しずつ好事例を認めるようになった。2023年に運用が開始した電子処方箋をオンライン服薬指導と合わせてへき地診療所で実証し、メリットや課題が整理された。遠隔健康医療相談は、へき地と都市部でのニーズには差がなく、住民だけなく医療機関にもニーズが認められた。
古城班の研究では、都道府県担当者とへき地診療所に勤務する医師からみたへき地におけるオンライン診療の現状や課題を明らかにし、オンライン診療模擬体験会を実施し、住民のオンライン診療に対する感想や評価、運用上の課題を整理することができた。
阿江班の研究では、離島・へき地において、オンライン診療に適した患者像、オンライン診療普及の阻害因子を調査した。職種間でのオンライン診療を有効と考える患者像の特色、共通点、差異を示すことができた。
山本班の研究では、オンライン診療の適切な実施に関する指針のセキュリティ要件に関して見直しを行った。引き続き不断の見直しを続けることが必要ではあるが、現時点ではオンライン診療に関するセキュリティに関して必要・十分な検討をなし得たと考える。
岡本班の研究では、医師の処方薬(糖尿病治療薬であることが多い)をダイエット等の美容目的で使用しようとする人へのリスク周知と注意喚起をするにあたり、考慮すべき、主に対象とする層や情報源、その行動パターンを特定することができた。この結果を元に、リスク・コミュニケーションの方策を検討する必要がある。
結論
医療資源が限られたへき地においても持続的に地域包括ケアが提供されるために、オンライン診療を安全かつ適切に組み合わせることが必要である。令和6年度に新設される診療報酬「看護師等遠隔診療補助加算」にも期待しつつ、医療機関、行政、地域住民、大学、学術団体、職能団体、企業等が同じ目的で連携し、現状と課題を共有しながら一緒に取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321045C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域医療学入門(第2版)に新たに「遠隔医療」の項目が追加され、執筆を担当した。
臨床的観点からの成果
海外の実例を日本で実証し、へき地のオンライン診療において、患者が看護師等といる場合のオンライン診療(D to P with N)の有用性を示し、看護師等遠隔診療補助加算(50点)の新設につながった。
ガイドライン等の開発
オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集(令和5年8月:厚生労働省医政局総務課ホームページ)に実証2ケースが掲載された。
オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月)(令和5年3月一部改訂)に当研究班の分担研究結果が反映された。
その他行政的観点からの成果
当研究班で作成した資料が、令和5年5月17日の「中央会保険医療協議会総会(第545回)」で使用され、看護師等遠隔診療補助加算(50点)の新設につながった。
その他のインパクト
令和6年度に新設された「看護師等遠隔診療補助加算(50点)」のための医師用のe-Learingコンテンツの作成に、携わった。
日本遠隔医療学会、日本プライマリ・ケア連合学会、へき地・地域医療学会でオンライン診療をテーマとしたシンポジウムを開催した。雑誌「月刊地域医学」で特集を組んだ。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
中央会保険医療協議会総会(第545回)1件、診療報酬改定1件、指針の改定1件
その他成果(普及・啓発活動)
15件
講演7、シンポジウム5、マスコミ1、ホームページ2

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,081,000円
(2)補助金確定額
1,081,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 90,516円
人件費・謝金 0円
旅費 416,697円
その他 332,787円
間接経費 241,000円
合計 1,081,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
-