電磁界安全対策調査研究

文献情報

文献番号
199700674A
報告書区分
総括
研究課題名
電磁界安全対策調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 千代次(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 牛山明(国立公衆衛生院)
  • 多氣昌生(東京都立大学大学院)
  • 伊坂勝生(徳島大学)
  • 中川正祥(山梨県大月保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
13,875,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物内における超低周波電磁界の曝露状況を把握すると共に電磁界曝露とがん増殖との関連の有無を含めて、電磁界の健康影響を追究する。
研究方法
上記目的を実施するために、研究班は3つの課題を設定して、?建築物内における50あるいは60ヘルツの商用周波数を含む超低周波電磁界の曝露状況を把握は伊坂および多氣が担当、?超低周波電磁界曝露とがん増殖との関連の有無は大久保および牛山が担当、?超低周波電磁界の健康影響に関する国際的研究動向調査は中川が担当、全体の総括は大久保が担当した。?では、居住環境における超低周波電磁界曝露評価を行うためには、電力線から生じる平等電磁界および各種電気製品から発生する不平等磁界の定量化が必要であるため、わが国および米国の送電線からの電磁界特性と各種環境下における磁界の不平等性を示し、今後開発が必要となる曝露量測定器について調査研究を実施した。?では、電磁界曝露と関連が深い乳がんに着目して、マウス由来乳腺腫細胞を細胞培養し、これをマウス背側皮膚透明窓(DSC)に移植し、その後のがん組織微小循環増殖過程を追究した。また、超低周波電磁界の慢性曝露影響の追究が可能な曝露装置の開発を実施した。?では、電磁界の生体影響に関する国際的な研究状況、主としてWHO(世界保健機関)の国際電磁界プロジェクトの活動状況を調査した。
結果と考察
?建築物内等では、電力線から生じる平等な電磁界と、各種家電製品から発生する不平等な電磁界が存在していることから、これの定量化を行った結果、身体部位によって曝露量が異なることが判明した。電磁界影響に関する疫学調査には曝露量の把握が不可欠であるが、現状でその測定に問題点があることを指摘することができた。また、居住環境の広い空間に平等な電磁界を発生させている送電線の電界および磁界に着目して、日本と異なる米国の送電線方式と日本のそれとの比較を行った結果、送電線近傍での電界および磁界とも両国間で大きな相違があることが判明した。よって、日本国民への電磁界曝露量推定には、日本独自の調査方式が必要であることが分かった。
?マウス由来の乳腺腫細胞株を培養し、DSC内へ移植したがん細胞が、がん微小循環網を構築し、経時的に増殖する過程を定量的に把握することに成功した。さらに、がん増殖作用の有無を検討できる超低周波電磁界の曝露装置の開発に成功した。最大曝露磁束密度としては3mT、収容可能なマウスの数は18匹(個飼い)から54匹(1箱3匹)、曝露密度の収容位置による変動を±5%に抑えることに成功した。
?電磁界曝露の健康影響についてはアメリカ・スウェーデンを中心に多くの報告が出され、同時に世界的な関心の広がりとともに先進諸国はこの問題に国家規模で取り組まざるを得なくなっているので、この問題に取り組んでいる各国および国際機関の主なものの紹介と、このうちWHO(世界保健機関)の進めている「国際電磁界プロジェクト(The International EMF Project)」の活動状況、およびその成果報告書の翻訳を行った。
結論
建築物内における超低周波電磁界の曝露状況として、電力線から生じる平等な電磁界と、各種家電製品から発生する不平等な電磁界が存在しており、身体部位によって曝露量が異なることが判明した。また、日本と米国とは送電方式が異なり、送電線近傍での電界および磁界とも両国間で大きな相違があることが判明した。よって、日本国民への電磁界曝露量推定には、日本独自の調査方式が必要であることが分かった。電磁界曝露との関連があると指摘される乳がん細胞の増殖過程を評価できるシステムを構築することができた。WHO(世界保健機関)の進めている「国際電磁界プロジェクト(The International EMF Project)」の活動状況、およびその成果報告書の翻訳・紹介した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)