文献情報
文献番号
202321042A
報告書区分
総括
研究課題名
基本的臨床能力評価試験質向上についての研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
西崎 祐史(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 徳田 安春(群星沖縄臨床研修センター)
- 志水 太郎(獨協医科大学 総合診療医学)
- 山本 祐(自治医科大学 地域医療学センター総合診療部門)
- 鋪野 紀好(千葉大学 医学部附属病院)
- 福井 翔(杏林大学 医学部)
- 小林 裕幸(筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター 水戸協同病院 総合診療科)
- 長崎 一哉(筑波大学 水戸地域医療教育センター)
- 西口 翔(横浜市立大学 公衆衛生学教室)
- 片山 皓太(聖マリアンナ医科大学 総合診療内科学)
- 高田 俊彦(福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,409,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
臨床研修を客観的に評価するための指標が必要である。米国においては、米国医師資格試験(USMLE)により臨床研修の客観的評価が可能であるが、本邦においては確立された評価指標は存在しない。そこで、2005年9月に設立されたNPO法人日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)は、基本的臨床能力の客観的な評価指標として「基本的臨床能力評価試験(GM-ITE: General Medicine In-Training Examination)」を開発した。GM-ITEは、臨床研修医を対象とした「In-Training Exam」であり、2011年度(第1回)より導入され、2023年度(第13回)には696病院、約9,580名の研修医が参加するまでの規模に拡大した。問題は「総論(医療面接・プロフェッショナリズム)」、「症候学・臨床推論」、「身体診察法・臨床手技」、「疾病各論」の4分野で構成されており、幅広い疾患領域(内科・外科・小児科・産婦人科・救急科・精神科等)が網羅されている。本研究は、GM-ITEの質向上に必要な要素を抽出し、課題解決を通じて試験の質向上を目指す。また同時に、GM-ITEや臨床研修環境に関するアンケート結果を活用し、臨床研修医の至適な教育環境を検討する。
研究方法
GM-ITEの質向上を主な目的とし、「GM-ITE問題作成プロセスのブラッシュアップ」、「CBT導入による試験問題管理の効率化」、「実践経験の評価に即した問題作成」、「GM-ITEバリデーション(GM-ITEの国際的妥当性等の検証)」、「研修医労働時間及び研修環境と基本的臨床能力評価試験等との関連性の検討」、「新旧臨床研修プログラムの比較」の6つの研究項目を同時進行した。
結果と考察
(1)GM-ITE問題作成プロセスのブラッシュアップ:2023年度問題作成に向けて、18回のウェブ会議を行い、問題作成委員を中心にのべ108名が会議に参加した。2023年度GM-ITEには、全国696施設、9,580人の研修医が参加し、2022年度の受験者数を上回った。
(2)CBT(Computer-Based-Testing)導入による試験問題管理の効率化:2023年度もMoodleを使用し、CBTを実施したが、大きな問題は生じなかった。CBT試験の更なる質向上を目指し、昨年度に引き続き、厚労科研「ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究(河北班)」と対面での会議を行い、主に質の高い動画問題作問について意見交換を行った。
(3)実践経験の評価に即した問題作成:GM-ITE 2023(2023年2月に実施)での革新的問題に関する調査解析、2022年度に作成した革新的問題について、GM-ITE 2023(2024年2月に実施)での導入を行った。革新的問題では、医療面接や身体所見の非言語情報からの情報収集からの臨床推論を行い、そこで考えられる鑑別疾患ならびにその診断根拠を自由記載で問う方式とした。革新的問題の正解群と不正解群の比較では、GM-ITEスコアは、正解群で有意にGM-ITEスコアが高い結果となった。
(4)GM-ITEバリデーション(GM-ITEの国際的妥当性等の検証):MKSAP(Medical Knowledge Self-Assessment Program)正答率の日米比較から、血行動態が不安定な右室梗塞患者の管理や、外来セッティングにおける慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する吸入薬の選択に関する問題が、日本の研修医の苦手分野であることが分かった。
(5)研修医労働時間及び研修環境と基本的臨床能力評価試験等との関連性の検討:臨床研修環境と研修医のGM-ITEスコアやメンタルヘルスとの関連を検討した結果、メンターの存在が研修医のメンタルヘルスを改善させる可能性や、地域枠出身の研修医は非地域枠出身の研修医と比較し、基本的臨床能力に有意な差がないこと等が示された。
(6)新旧臨床研修プログラムの比較:2年連続受験した研修医の試験の正答率の変化を新プログラムの研修医と旧プログラムの研修医間で比較した結果、新プログラムは旧プログラムと比較して、劣っていなかった。しかしながら、本解析は、試験の難易度の違いが調整できていないため、あくまでも、参考値としての扱いにとどまった。
(2)CBT(Computer-Based-Testing)導入による試験問題管理の効率化:2023年度もMoodleを使用し、CBTを実施したが、大きな問題は生じなかった。CBT試験の更なる質向上を目指し、昨年度に引き続き、厚労科研「ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究(河北班)」と対面での会議を行い、主に質の高い動画問題作問について意見交換を行った。
(3)実践経験の評価に即した問題作成:GM-ITE 2023(2023年2月に実施)での革新的問題に関する調査解析、2022年度に作成した革新的問題について、GM-ITE 2023(2024年2月に実施)での導入を行った。革新的問題では、医療面接や身体所見の非言語情報からの情報収集からの臨床推論を行い、そこで考えられる鑑別疾患ならびにその診断根拠を自由記載で問う方式とした。革新的問題の正解群と不正解群の比較では、GM-ITEスコアは、正解群で有意にGM-ITEスコアが高い結果となった。
(4)GM-ITEバリデーション(GM-ITEの国際的妥当性等の検証):MKSAP(Medical Knowledge Self-Assessment Program)正答率の日米比較から、血行動態が不安定な右室梗塞患者の管理や、外来セッティングにおける慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する吸入薬の選択に関する問題が、日本の研修医の苦手分野であることが分かった。
(5)研修医労働時間及び研修環境と基本的臨床能力評価試験等との関連性の検討:臨床研修環境と研修医のGM-ITEスコアやメンタルヘルスとの関連を検討した結果、メンターの存在が研修医のメンタルヘルスを改善させる可能性や、地域枠出身の研修医は非地域枠出身の研修医と比較し、基本的臨床能力に有意な差がないこと等が示された。
(6)新旧臨床研修プログラムの比較:2年連続受験した研修医の試験の正答率の変化を新プログラムの研修医と旧プログラムの研修医間で比較した結果、新プログラムは旧プログラムと比較して、劣っていなかった。しかしながら、本解析は、試験の難易度の違いが調整できていないため、あくまでも、参考値としての扱いにとどまった。
結論
2023年度GM-ITEには、全国696施設、9,580名の研修医が参加し、2022年度の受験者数を上回った。GM-ITEの問題作成に向けた問題作成委員会等の体制強化、CBT導入による効率化、動画問題や患者再現VTR問題を中心とした実践経験の評価に即した試験問題の充実化、GM-ITEの妥当性の検証等に基づいた様々な取組みが、受験者数の増加に繋がった。
公開日・更新日
公開日
2024-12-17
更新日
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