ヘルスケアプロセス管理に関する国際標準化と個別化 Learning Health Systemアプリケーションの開発研究

文献情報

文献番号
202321038A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘルスケアプロセス管理に関する国際標準化と個別化 Learning Health Systemアプリケーションの開発研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1016
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 医療情報学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 浩一(済生会熊本病院)
  • 岡田 美保子(一般社団法人医療データ活用基盤整備機構)
  • 羽藤 慎二(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター) 消化器外科)
  • 山下 貴範(国立大学法人 九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 佐藤 直市(九州大学 九州大学病院)
  • 錦谷 まりこ(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーション研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
154,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国は、人類史上で初の超少子高齢社会に直面しており、健康寿命の延伸を図るとともに、出生率低下の対策や社会保障費の適正化は喫緊の課題である。そのために健診や医療で発生する情報と日常生活を通じて得られる健康情報を最大限に活用することが重要である。Personal Health Record(以下、PHR)はこの役割を担うことができる可能性があり、政府の医療DX政策方針にも電子カルテや介護システムとの情報連携が描かれている。個人の健康情報を俯瞰することができるため、患者主体医療の推進、頻発する災害やパンデミック対策などの核心的なツールとしても期待されている。一方で、これまで標準化活動の不足から相互運用性の課題を残してきた。 
出生時の母子健康管理に始まる個々の日々のヘルスケアプロセス管理を生涯にわたり支援するサービスやシステムは、まだほとんど見られず、新たな市場拡大領域と考えられる。国際標準が形成されていない現状においてこそ国際競争優位性を先行確保するために、日本が主導してプロセス管理モデルの国際規格化をはかる必要がある。国際規格化とともに、そのシステム基盤を先行構築することは、デジタルヘルス領域の多様なビジネスを先行的に創出することに繋がる。
そこで本研究では、個人のヘルスケアプロセス管理のための一連のモデル(概念モデル、情報モデル、プロセス管理モデル等)の国際規格を策定する。規格の開発過程において、モデルの妥当性検証、フィージビリティスタディのため、電子カルテとPHRにわたる標準モデルに準じたシステム実装を行い、主に慢性疾患や外来化学療法患者を対象として実証実験を行う。
研究方法
WG1:
・知財・標準化戦略等の検討としてヘルスケアプロセス管理に関連した「国際的な市場動向、国際的な標準化動向、適合性評価の動向、特許動向、国際競争戦略」について調査する。
・ビジネスモデル案を検討する。
WG2:
・ヘルスケアプロセスに係る基本概念の整理とヘルスケアプロセス管理モデルを開発する。
・国内標準化・社会実装のために、ePathを拡張・一般化したデータモデルを想定して、HL7 FHIRの関連リソース・プロファイルを検討する。
・ヘルスケアプロセス管理モデルの高次の情報モデルをISO TC215 WG1 において提案する。
WG3:
・電子カルテ(ePath)の外来対応として、OATユニットに基づく外来パス(糖尿病外来パス、外来化学療法パス)を作成する。
・LHSアプリの開発:電子カルテ(ePath)で設定された項目と判断値(適正値)を取込む仕組み、PHRアプリに対して結果値をリクエストしOATに反映する仕組み、PHRアプリとLHSアプリの連携について実装する。
・PHRアプリ:LHSアプリからリクエストに対応する結果値連携、電子カルテデータをHL7 FHIRで取込む仕組みを実装する。
結果と考察
本研究で提案または実装したヘルスケアプロセス管理について、知財・標準化戦略等の検討の結果、ヘルスケアプロセス管理に類似する概念や機能に関する市場は既に存在しているが、標準は存在せず、一致した特許も見られなかった。ヘルスケアプロセス管理モデルの国際標準規格化については、ISOのPWIとして承認されたため、今後対応を進める。ヘルスケアプロセス管理モデルのシステム実装としては、異なるベンダーの電子カルテやPHRからも、疾患毎の個人レベルのヘルスケアプロセス情報を高品質のデータにより効率よく収集することができる標準的な基盤を確立した。医療者の方針(電子カルテ内の電子クリニカルパス機能)と患者の日常生活(個人スマホアプリ)を双方向に同期をとってコミュニケーションするものであり、病院の実システム上での実証事業を実施できた。
結論
ヘルスケアプロセス管理モデルの知財、特許などが見当たらなかったため、本モデルを活用したサービスの国際競争優位を先行的に確保するため国際標準化を推進する。
医療機関での外来・入院診療から個人の日常生活の自己健康管理までの一貫したヘルスケアプロセス管理について、基盤となる標準モデルを整備し、仕様公開することで普及につながる。これにより患者エンゲージメントが惹起されることにより健康医療DXが促進され、ヘルスケアプロセス管理を支援する多様なビジネスが創出される。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321038C

収支報告書

文献番号
202321038Z