網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200936027A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 祐一郎(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究科)
  • 坂本 泰二(鹿児島大学 大学院医学研究科)
  • 白神 史雄(香川大学 大学院医学研究科)
  • 高橋 寛二(関西医科大学 大学院医学研究科)
  • 高橋 政代(理化学研究所)
  • 寺崎 浩子(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 根木 昭(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 山本 修一(千葉大学 大学院医学研究科)
  • 湯沢 美都子(日本大学 大学院医学研究科)
  • 吉村 長久(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性・進行性で視力予後不良な疾患である加齢黄斑変性、網膜色素変性症などの網膜脈絡膜萎縮をきたす疾患群と視神経萎縮をきたす疾患群を対象としてその実態調査、病態解明、治療法開発を目的とする。
研究方法
(1)加齢黄斑変性は高齢者の失明の主要原因であり、有効な治療法の開発は高齢者の失明防止の観点から社会的意義も非常に大きい。現在、光線力学的療法(PDT)と抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が主要な治療法であるが、併用療法なども含めた治療指針の確立のために各治療効果を評価した。遺伝子解析その他の病態解明に向けた基礎研究も進めている。(2)網膜色素変性症は網膜変性疾患であり、現在の特定疾患申請時に必須とされる蛍光眼底造影検査の必要性につき検討した。遺伝子治療や神経保護治療の可能性についても検討した。 (3)視神経萎縮は緑内障を始めいろいろな病態で発症し、不可逆的障害を残す。視神経萎縮の進行阻止のための神経保護治療の開発と、失われた視機能の回復を目的とした幹細胞による網膜再生治療と人工視覚の開発を行っている。
結果と考察
(1)加齢黄斑変性:正常脈絡膜循環への影響を抑えるために低照射エネルギーPDTの有用性や抗VEGF療法併用の網膜保護効果が示された。PDTと抗VEGF療法とステロイド投与の三者併用療法が難治性の特殊型である網膜血管腫状増殖にも有効である可能性が確認された。APOE遺伝子多型の関与が新たに示された。(2)網膜色素変性症:特定疾患申請に必要な蛍光眼底造影検査を省略するなどの改訂を行う予定である。長期発現型のサル由来レンチウイルスベクターによる遺伝子導入の動物実験における長期安全性が示され臨床試験の準備中である。(3)視神経萎縮や網膜変性:幹細胞(ES細胞およびiPS細胞)から網膜の細胞への分化誘導や一定条件下での動物網膜への移植細胞の生着が可能となった。人工視覚については、埋植電極の耐久性、組織への安全性が示され今後も臨床応用に向けて開発を進める。
結論
加齢黄斑変性に対しては、PDT、抗VEGF療法を中心に一定の治療効果が得られるようになってきた。今後、さらに有効な治療法や予防法開発のための臨床研究、病態解明が進むものと思われる。網膜色素変性や視神経萎縮においては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められ、また、遺伝子導入療法も臨床応用に向けて開発中である。萎縮した網膜や視神経の再生医療や人工視覚の臨床応用は、失明患者が熱望するものであり、今後も進展を目指す必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-06-17
更新日
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